2013年12月5日木曜日

第63回「正しいリード歩行(後編)」

前回、散歩が犬の毎日の生活にどれだけ大切な役割を果たすかをお話ししました。しかし、その重要な散歩も犬が飼い主をぐいぐい引っ張ったり、ほかの犬に吠えかかったり、何にでも飛びついたりというようなマナーの悪さだと飼い主もおっくうになり、排泄のためだけか、全く散歩をしないというケースになることもあるでしょう。すると犬は欲求不満をため問題行動を起こす。誰にとっても満ち足りた毎日にはなりません。快適な散歩をするためには、正しいリード歩行をマスターする必要があります。今回はその方法をマスターするためのテクニックについてお話しします。

まずは道具選び

正しい道具を使用することは快適な散歩の第一歩。リードの長さは6フィートが最適です。また、大抵の地域では6フィートリード着用の法律が定められ、散歩にリードなしや長く伸びるリトラクタブルリードはNG!リードを上手に使うため、リードには何もつけずポーチに必要な物をすべて入れ歩くか、犬にバックパックを使用し持ち歩かせるという手もあります。引っ張る犬、指示を聞かない犬にハーネスの使用は絶対にNG!首輪は総合的にみてマーティンゲールカラーが一番!と私は長年愛用しています。

飼い主の姿勢と心

散歩中、何をおいても大切なのは飼い主の姿勢と心の状態です。顔を上げ、目は前方を見る。肩と手の力を抜き、リードを持つ手はアタッシュケースを持つ感じで常に下に。そして笑顔で歩ければ5重マル。また、街や自然の変化に気がつく心の余裕が持てればなおいいでしょう。散歩中大切なのは、①犬が飼い主に注意を払っていること、②飼い主と犬が共にリラックスしていること、そして③両者が楽しんでいることです。

問題行動の解決法

吠えたら即正す:散歩中に犬がけたたましく吠えているのに、放ったらかしにしている飼い主を見かけますが、それは駄々をこねる子供が道で大声で泣き叫んでいるのに何もしない親と同じです。犬も飼い主から正されないとしてはいけないことがわかりません。放っておいたり、無理やり引っ張り立ち去ったりするのではなく、その場で即座に正し、ストップさせるのが飼い主の役目です。避けた方が賢明という障害物は避け、貴重な練習台と思えば挑戦するという使い分けもしましょう。

引っ張ったら止まる:犬がリードをぐいぐい引っ張って歩く場合、引っ張れば飼い主はすぐ立ち止まります。そこで犬が振り返りこちらに注目したらおやつをあげるなどして褒めます。再び歩き始めます。引っ張ったらまた止まる。こちらを振り返ったら褒める。この繰り返しです。最初は10歩進むのに何分もかかるかもしれませんが、犬に「引っ張る限りどこにも行けない」という概念をしっかり理解させることが大切。これを繰り返しているうちに犬も「どうすれば前に進めるのか」がわかってきます。またジグザグ歩行は危険なので飼い主が決めた側のみを歩かせましょう。

マーキングやにおい嗅ぎをコントロールする:散歩は飼い主のコントロール下という概念を教えるためにもマーキングやにおい嗅ぎを操作しましょう。3ブロック自由に歩いたら、次の3ブロックは真っすぐに進むという具合にメリハリをつけます。犬は教えれば理解し学びます。大切なのは飼い主の根気と一貫性。教えたことは反復し、常に実行します。後はひたすら根気で勝負。愛犬にとって貴重な学習の場である散歩が楽しいものにもなるために、ぜひリード歩行をマスターしましょう。

次回は「犬種の由来」についてお話しします。


「犬を学ぼう!」の正しいリード歩行の練習風景



てらぐちまほ:在米25年。かつては人間の専門家を目指し文化人類学を専攻。2001年からキャリアを変え、子供の頃からの夢であった「犬の専門家」に転身。地元のアニマル・シェルターでアダプション・カウンセリングやトレーニングに関わると共に、個人ではDoggie Project (www.doggieproject.com)というビジネスを設立。犬のトレーニングや問題行動解決サービスを提供している。愛犬ジュリエットが他界した今は、ニューヨークに移転し新入り犬ノアと活躍中。ご意見・ご感想は:info@doggieproject.com

『 犬を学ぼう!』講習会をマンハッタンにて開催。詳細は www.doggieproject.com/lecture

2013年11月5日火曜日

第62回「正しいリーシ歩行(前編)」

「うちは裏庭があるので散歩はしない」「小型犬だから家の中を走り回って十分な運動をしているので外に出さない」と考える人が多いようですが、果たしてそれは犬にとってどうなのでしょう。「室内犬・座敷犬」という言葉を目にすることがありますが、それは売る側が「手間がかからず飼いやすい」と作り上げた言葉に過ぎず、犬種もサイズの大小にも関係なく、犬には毎日の散歩が必要です。散歩は犬のさまざまな欲求を満たす役目をし、また、飼い主と愛犬の関係作りに大変重要な機会なのです。今号と次号にわたり、犬にとって欠かせない散歩と、その散歩を快適に行うための正しいリード歩行についてお話しします。

散歩の重要性

散歩が単なる排せつと運動のためだと考えると大間違いで、散歩は犬のさまざまな欲求を満たす役目を果たしています。オオカミのころから「群れで移動する」という遺伝子を備えた犬にとって、パック(家族)で歩く行為はその本能を満たす上で大切です。犬にとって散歩は、飼い主と行う一日の最大のイベントであり仕事なのです。さらに、人間社会の中で、飼い主のリードで安全快適に、また他人に迷惑をかけずに散歩をこなすことで良い市民の一員となり、その過程で飼い主は愛犬の信頼と尊敬が得られます。散歩は相互関係作りの絶好の場となるのです。室内や裏庭だけで過ごしていれば、犬は社会と出会う機会がありません。好奇心旺盛で常に刺激が必要な犬にとって、新しいもの、変わったにおい、空気や音、老若男女いろいろな人間、近所の犬たちに出会う機会が必要で、それらを通し社会を学ぶのです。犬同士の汚物のにおいの嗅ぎ合いは掲示板のようなもので、ほかの犬の排せつ物で、犬はどの犬がいつどんな心境でその場を通ったかが分かります。それは彼らにとって欠かせない自己存在の宣伝と情報交換の場。散歩は脳と体の活性化の大切な手段で、その機会が与えられない犬は、慢性のストレスや外気や日光を受けることがないことから病気を引き起こす原因にもなります。

悪循環を好循環に

しかし、そんな大切な散歩も愛犬がリードをぐいぐい引っ張ったり、動くものに激しく反応する癖があったり、ほかの犬を見ると気が狂ったようになるなどマナーがなっていないと、飼い主も外に出るのがおっくうになります。すると犬はますますフラストレーションをためこみ、吠える、噛む、などの問題行動を見せ始めたり、臆病で非社交的な性格になったりという悪循環が起こります。正しいリード歩行をマスターするということは、愛犬との散歩を快適に行えるようにするということで、楽に散歩できれば自然に回数も時間も増えてきます。快適で十分な散歩で心身共に満足した犬は、家に戻るとリラックスし、今までストレス発散のためしていたいたずらをする必要がなくなります。また散歩中に愛犬との関係作りが成立してくれば、家での関係ももっと充実します。意識的な散歩を続け、悪循環を好循環にすることで愛犬との暮らしをより快適にする。ちなみに、散歩の恩恵を受けるのは犬だけではないことは言うまでもないですね。

人間の親子が横に並んで手をつなぎ、楽しい話をしながら時々顔を見合わせ道を歩いている光景を見るのが大好きです。理想の飼い主と犬の散歩姿は、そんな人間の親子がほのぼの歩く姿と同じではないかと思います。他人が見てほのぼのするような姿で散歩ができるよう、私も日々愛犬と訓練に励んでいます。

次回は「正しいリード歩行」のテクニックについてお話しします。お楽しみに!



「犬を学ぼう!」リード歩行練習に参加してくれたみなさんと愛犬たち


てらぐちまほ:在米25年。かつては人間の専門家を目指し文化人類学を専攻。2001年からキャリアを変え、子供の頃からの夢であった「犬の専門家」に転身。地元のアニマル・シェルターでアダプション・カウンセリングやトレーニングに関わると共に、個人ではDoggie Project (www.doggieproject.com)というビジネスを設立。犬のトレーニングや問題行動解決サービスを提供している。愛犬ジュリエットが他界した今は、ニューヨークに移転して新入り犬ノアと活躍中。ご意見・ご感想は:info@doggieproject.com

『 犬を学ぼう!』講習会をマンハッタンにて開催。詳細は www.doggieproject.com/lecture

2013年10月5日土曜日

第61回「みとる」とは

以前、シェルターであぜんとする出来事がありました。若い夫婦が12歳の愛犬を連れて来て飼育放棄したいと。パピーのころから育ててきた愛犬の老いを見たくないからという理由でした。連れて来られた犬は12歳には見えないくらい元気で、うれしそうにみんなに愛想を振りまいています。この夫婦は、家にもう一匹10歳になる犬がいるので、数年後、同じように連れて来るつもりであるとも話していました。長年かわいがってきた愛犬たちの変ぼうを見る勇気がないと…。この夫婦は愛犬との別れを済ませ、寂しそうに去って行きましたが、関係者全員言葉が出ませんでした。飼育放棄でやって来る犬は日常茶飯事なのでそれに驚いたのではなく、パーのころから12年間大切に育てたペットの晩年をそういう形で終える夫婦の考え方に大きなショックを受けたのでした。

老犬介護と最期

確かに愛犬の老いていく姿を見るのは何ともつらいものがあります。また老犬介護は飼い主にとって心身疲労になりかねない大仕事です。2年前の私自身の体験を思い出します。愛犬ジュリエットが14歳になるころ、老化が急速に始まり、いろんなところに支障が出始めました。毎晩のように夜中に起こされ、おしっこのために外出。日中お漏らしすることがあるのでオムツを使用。食欲はあるのに自分で食べる力が無くなり、毎食30分かけて手で食べさせるなどです。そして体重は落ちる一方。三回りほど小さくなってしまいました。また、老犬性認知症のような症状から部屋の隅の角に顔を向けぼーっと立ちすくむこと数十分。突然何を思ったのか遠吠えをしたり…。その急速な変化にジュリエット自身も戸惑っている様子。そして飼い主の私は、10年以上運命共同体として一生懸命一緒に生きてきた相棒ジュリエットの老いと向かい合い、これからどうなるのかと毎日が不安で、感情の渦の中をさまよっていました。ジュリエットの体はどんどん衰退し、そして最期の決断。これ以上苦しい思いを続けさせられないと安楽死を決断しました。飼い主として一番つらい責任を果たすことに、胸が張り裂ける思いでした。しかし、人間も犬もすべての生き物に老いは訪れ、最期はやってきます。別れは本当に悲しいことですが、自宅のリビングで愛用のベッドに横たわり、いつものラジオ局から流れるクラシックを聞きながら私の手の中で静かに息を引き取ったジュリエットも私も本当に幸せです。もっと悲しいのは、飼い主が愛犬をみとれないことだと思うのです。

飼い主なき犬たちへのつぐない

飼育放棄で飼い主に捨てられたり、野良犬としてシェルターにやって来たりする犬の多くは、最後の日々をシェルターで過ごすことになります。人間の勝手でそんな悲惨な運命を背負うことになってしまった犬たち。私とチームメンバーで、そんな犬たちの最期を一緒に過ごす係を申し出ました。最後の数時間、布団の上で日なたぼっこをさせたり、ボール遊びをしたり、公園にのんびり散歩に連れ出したり、この時とばかりおやつを惜しみなくあげたり。何も知らない罪のない犬たちに、最後のひと時は温かく楽しい気分でいてもらおうというせめてもの気持ちです。本当に切なく悲しい任務ですが、人間の手で不幸な運命を歩む羽目になったい主なき犬たちへ、同じ人間としてせめてものつぐないになればと…。

次回は、「正しいリード歩行」についてお話します。お楽しみに!



悲しいながらも愛おしい愛犬ジュリエットのおむつ姿


てらぐちまほ:在米25年。かつては人間の専門家を目指し文化人類学を専攻。2001年からキャリアを変え、子供の頃からの夢であった「犬の専門家」に転身。地元のアニマル・シェルターでアダプション・カウンセリングやトレーニングに関わると共に、個人ではDoggie Project (www.doggieproject.com)というビジネスを設立。犬のトレーニングや問題行動解決サービスを提供している。愛犬ジュリエットが他界した今は、ニューヨークに移転して新入り犬ノアと活躍中。ご意見・ご感想は:info@doggieproject.com

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2013年9月5日木曜日

第60回 「犬の生きる力」

13年のシェルター活動歴で出合った犬の数はきっと何万匹。みんないろんな思い出を残してくれるのですが、中でも特別心に残った犬のうちの一匹「ミア」。今回はさまざまな問題を抱えてやってくる、シェルターの犬のお話です。

悲しい別れ

今年6月にミアという8歳のメスのピットブルがシェルターにやって来ました。ミアは7年間老夫婦と暮らしてきましたが、おじいさんは数年前に他界し、おばあさんも老人ホームに入ることになりました。老人ホームにミアを連れていけません。周りに引き取ってくれる人もいなかったのでしょう。ミアは最後の家族だったおばあさんに連れられシェルターに捨てられました。

それから2日間、ミアはまったく同じ場所から動きませんでした。毛布の上に体を丸め背中を向けたまま、食べ物も食べず、水を飲んだ形跡もなく、トイレも行きません。あまりの落胆に遮断状態でした。3日目、やっとの思いでケージから出すことに成功。それでも最初は警戒心が強く、体はがちがち。しっぽを後ろ足の間に入れ、目を大きく開け、恐怖で一杯の心境を語っていました。それからもミアのケージに何度も足を運びました。だんだん彼女が心を開き、打ち解けていくのが分かりました。私がケージの前に行くとすっと立つのです。でも、食べ物と薬だけは絶対に食べません。見る見るうちに痩せていき、体も弱り始め病気になりました。結局「友達」と認めたのも私ともう一人のスタッフだけ。ほかの人が近づくとがちがちに警戒します。なんだかもう彼女の中で人生をあきらめたと言っているようで見ていて本当に悲しくなりました。その老夫婦も7年前にミアを飼い始めた時は、最後がこんな悲しい形になるとは思わなかったのでしょう。

愛される力

数日後、奇跡が起こりました。ミアにセカンド・チャンスがやってきたのです! 正直なところ、ミアが引き取られる確率はかなり低いと思っていたので心がずっしり重くなり、現実の酷さと難しさ、自分の無力さ、いろいろ考えさせられていました。そんな時、うれしいニュースが舞い込みました。ミアを引き取ってくれるというグループが現れたのです!

ミアが去る日、最後のデートをしようと近くの公園に出かけました。するとどうでしょう。ミアが初めてリードを引っ張りぐんぐん歩きだしました。「早く!早く!」とでも言っているかのように。その元気に驚いていると、公園に着くなり今度は芝生の上をうれしそうに走りました。あのミアが走っている。驚きでした。公園のベンチで私になでられながらミアは笑っていました。きっと自分の身に何が起こっているのかわかっていたのだと思います。ミア自身も「私はまだまだ生きたいんです」と言っているようでした。

長年一緒に過ごした家族に捨てられた直後のミアは全く何も受け付けようとせず、自分の命をすっかり見捨てているようでした。それから少しずつ心を開いてくれたミア。彼女を見ていて思いました。愛されている、大切にされているということを感じることで「もう一度」という力が湧き出すことを。ミアは家族とは離れ離れになってしまったけど、この世の中にまだ自分のことを愛し、大切にしたいと思っている人たちがいることをしっかり感じてくれたのだなと。そして、それが「生きたい」という力になったのだなと。しかし、残念ながらみんながミアのようにチャンスをつかめるわけではありません。ミアが引き取られていった日も数匹の動物たちが安楽死させられました。

次回は、「看取るということ」についてお話しします。


心を開いてくれたミア。公園にデートに連れ出したら大喜び


てらぐちまほ:在米25年。かつては人間の専門家を目指し文化人類学を専攻。2001年からキャリアを変え、子供の頃からの夢であった「犬の専門家」に転身。地元のアニマル・シェルターでアダプション・カウンセリングやトレーニングに関わると共に、個人ではDoggie Project (www.doggieproject.com)というビジネスを設立。犬のトレーニングや問題行動解決サービスを提供している。愛犬ジュリエットが他界した今は、ニューヨークに移転して新入り犬ノアと活躍中。ご意見・ご感想は:info@doggieproject.com

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2013年8月5日月曜日

第59回「散歩中のマナー」

愛犬との散歩中に犬嫌いの人からにらみつけられたり、厳しい言葉を投げられたりした人は少なくないと思います。マナーのない飼い主のおかげで、マナーを守っている飼い主が迷惑を被ることもあるでしょう。しかし、マナーある飼い主までもが「周りが適当だから私も適当でいいか」と投げやりにならず、常に周りへの配慮を持って愛犬と散歩したいもの。今回は犬の飼い主がいつも注意しておきたい散歩中のマナーについてお話しします。

①ふんの始末:自分の犬のふんを始末しない飼い主はどこにでもいます。私の場合、愛犬ノアとの散歩中にそのような飼い主に出くわすと、予備のバッグを差し出し「バッグ要りますか?」と聞いて始末してもらう方向に持っていきます。ふんの始末が当然のことなら、おしっこの場所も考えたいものです。大切に手入れされた芝生などは必ず避けるべし。また、オス犬に関してはマーキングをしたいだけさせず、飼い主が場所や頻度をコントロールすることは、エチケットのため以外に犬との関係を作る上でもとても大切です。

②犬が苦手な人:世間には犬が苦手な人がいることも十分理解し、尊重しましょう。知らない人とすれ違う際には気を配り、決して無理やり自分の犬を好いてもらおうと押し付けないように。飼い主にすれば天使のような愛犬でも、犬が苦手な人には緊張の一瞬かもしれません。

③ほかの犬とのあいさつ:散歩中にほかの犬と出会う際のマナーもあります。ハーネスにリトラクタブル・リードで飼い主のうんと先を歩いている犬や、飼い主が携帯電話を使用中の犬を見ると、基本的に私は距離を置いています。それは、その飼い主のスキルと知識を信用できないからです。自分の犬は自分で守るのは当然で、先方の犬とその飼い主に良い印象を持てない時は避けるが勝ち。また、断りもなく走り寄って来る飼い主には遠慮せずにストップをかけましょう。犬社会にも初めて会う時のあいさつの仕方というものがあり、知識のない飼い主がそれを無視して犬同士を遊ばせようとすると、悪い結果になることもあります。もちろんこちらからほかの犬に接近したい場合も、必ず相手の了承を得てから初めてあいさつさせること。

④愛犬を常に監視:路上でのおしゃべりに夢中になり、愛犬がいたずらをしているのに気がつかない飼い主を見かけることもあります。悪気はなくとも無責任な飼い主とマナーのない犬と映ってしまいます。外出中は自分の犬のことは常に監視下に置きましょう。また、リード使用の規制がある場所ではリードなしで散歩しないこと。犬がけたたましく吠えているのも迷惑な行動。散歩中の無駄吠えはすぐにストップさせ周りに迷惑をかけないように。

⑤携帯電話の使用:最近、犬の散歩中に電話やテキストをしている飼い主をよく目にするようになりました。散歩中は愛犬に100%集中する。犬にとって毎日の散歩は飼い主と絆を深める大切な機会なのです。もし一日中仕事に出ているなら、散歩こそ愛犬と過ごせる貴重な時間のはず。そんな時間も愛犬に100%になれないのでは飼い主としてちょっと恥ずかしいですね。また携帯電話を使用していると注意が散漫になり、犬にも飼い主にも大変危険ですのでご注意を。犬と飼い主にとって「一日のメインイベント」であるべき毎日の散歩。その散歩をより快適な時間にするために、飼い主一人ひとりが周りへの気配りを示し、犬の飼い主として責任ある行動をとると、犬を飼ってない人や犬が苦手な人とも穏便な関係が保てるのではと思います。

次回は、「シェルターの犬」についてお話します。お楽しみに!


地元の子供対象に行われた公募のポスターコンテストの優勝作


てらぐちまほ:在米25年。かつては人間の専門家を目指し文化人類学を専攻。2001年からキャリアを変え、子供の頃からの夢であった「犬の専門家」に転身。地元のアニマル・シェルターでアダプション・カウンセリングやトレーニングに関わると共に、個人ではDoggie Project (www.doggieproject.com)というビジネスを設立。犬のトレーニングや問題行動解決サービスを提供している。愛犬ジュリエットが他界した今は、ニューヨークに移転して新入り犬ノアと活躍中。ご意見・ご感想は:info@doggieproject.com

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2013年7月5日金曜日

第58回「グルーミング」

うちの愛犬は短毛だからグルーミングとは縁がない…と思っていませんか? 短毛・長毛、犬種に関係なく、すべての犬にグルーミングは必要です。愛犬が自分の足の裏や体を丹念になめているのを見たことのある人も多いと思いますが、あれもれっきとしたグルーミング。グルーミングと聞くと、ペットサロンに行ってシャンプーにカット、かわいいリボンをつけてもらうものと連想しがちですが、実は家庭での定期的なグルーミングは犬を清潔に保つためのみならず、愛犬と飼い主の関係作りにも非常に重要な役割を果たしているのです。

種類と必要性

グルーミングととらえられるものとして、シャンプー、カット、ブラッシング、歯磨き、耳掃除、つめ切りなどが挙げられます。これらすべてを飼い主が行えれば一番ですが、一部または全部をグルーミングサロンでプロに依託することも可能です。設備が整ったバンで出張サービスをしてくれるモービルサロンも見かけるようになりました。また、飼い主が愛犬のシャンプー・ブラッシングをするセルフウォッシュのお店も出現。家のお風呂場やキッチンを汚さなくてすみます。ペット産業の発展で選択肢も増えました。グルーミングは愛犬の衛生管理のみならず、病気やけがの発見の機会にもなるので、飼い主が行わない場合は、なるべく決まった人にやってもらうと変化がわかりよいでしょう。また、流れ作業のようなところは避け、細かいところまでケアが行き届き、飼い主と会話もするプロを見つけることが大切です。うちは愛犬をサロンに連れて行かない代わり、毎週日曜夜にグルーミングを施す時間としています。

グルーミングは定期的に行うことが大事。そうすると忘れないし、犬も慣れてきます。うちの犬はグルーミングを始めると私の手をゆっくりペロペロとなめます。これは「きれいにしてくれてありがとう」という意味と解釈していますが、グルーミングは飼い主と愛犬の絆を深める絶好の場。愛情と信頼関係を確認し、連帯感を強める大切な機会なので大いに利用したいものです。

グルーミングのこつ

お風呂やブラッシング中に眠るくらい楽しむ犬もいれば、触られることが苦手な犬もいます。また、苦手な箇所がある犬もいます。しかしグルーミングは不可欠なものであり、日ごろからタッチに慣れさせておくことはいざという時のためにも重要。体に何か刺さったり、食べてはいけない物を口にしたりした場合、飼い主などが触れることができず、命に関わるような事態になっては大変です。また、毛、つめ、歯、耳、目も普段のこまめな手入れが病気の予防になりますが、触れないということで放っておくと後々大変な思いをすることも。グルーミングはパピーのころから始め、きちんと続けていると犬も慣れて嫌がりません。パピーでなくても飼い主が気持ちを込めて、楽しくやると徐々に慣れて犬にとっても楽しい時間になってくるはず。嫌がっている犬には無理せず少しずつ始めましょう。大好きなおやつなどのご褒美を利用するのも手。また飼い主が感情的にならず、例えば音楽やアロマを利用するなどしてリラックスした環境でやること。

愛犬の衛生管理と病気予防のために大変重要なグルーミング。飼い主が「仕方ないな…」と絶対にあきらめないこと。自分自身で管理できない彼らをケアしてあげるのは飼い主の務めです。いつもはわたしの素人グルーミングを受けている愛犬ノアですが、一年に一度くらいはプロにお願いして丹念にシャンプー、マッサージ、そしてパックまでやってもらい特別な気分にさせてあげようかとも計画中です。

次回は、「散歩中のマナー」についてお話します。お楽しみに!


犬にとっても健康な歯は一生の宝物。毎日ノアの歯磨きに励みます


てらぐちまほ:在米25年。かつては人間の専門家を目指し文化人類学を専攻。2001年からキャリアを変え、子供の頃からの夢であった「犬の専門家」に転身。地元のアニマル・シェルターでアダプション・カウンセリングやトレーニングに関わると共に、個人ではDoggie Project (www.doggieproject.com)というビジネスを設立。犬のトレーニングや問題行動解決サービスを提供している。愛犬ジュリエットが他界した今は、ニューヨークに移転して新入り犬ノアと活躍中。ご意見・ご感想は:info@doggieproject.com

『 犬を学ぼう!』講習会をマンハッタンにて開催。詳細は www.doggieproject.com/lecture