仕事をください!
ハーディング・グループの犬たちほど仕事意欲に燃え、働いている時に一番生きがいを感じる犬たちはいないのではないでしょうか。先日ドッグショーに行った際、このグループの中でもダントツに仕事熱心なボーダー・コリーによるデモンストレーションがありました。デモンストレーションそのものの素晴らしさよりもっと驚いたのが彼らの仕事欲でした。ステージわきで出番を待つ犬たちの興奮度はマックスを超え、ワンワン大きな声で全員が吠えたて「早く働かせて!」と必死で叫んでいるようでした。そして、いざハンドラーが綱を放した瞬間、全身の力を集中させて、一目散に与えられた仕事をこなしていました。
このグループには上記にあげた以外にベルジアン・マリノア、ベルジアン・タビューレン、ジャーマン・シェパードなどがいます。牧畜犬としての主な仕事は、家畜を移動・誘導させる仕事と害獣からの見張り業から成り立ちますが、中には牛の群れを誘導し、害獣から守り、農場をも警備しながら荷車まで牽引するブービエ・デ・フランドールなどのように牧畜業の仕事全般を受け持つ万能犬もいます。
肉体運動と知的運動が必須
このグループの犬たちは放牧業の盛んな地域では作業犬として仕えていますが、近年牧畜犬の需要が減った地域では、家庭のペットとして飼われるケースが増えました。彼らは大変聡明で飼い主に忠実です。しかし、ペットとして飼う際には気をつけなければいけない点があります。
このグループの犬に共通する注意点は、アパートメントなど狭いスペースの住居で飼うことが適していないということです。ある程度動き回れるスペースが必要な彼らにとって、狭いスペースに閉じ込められることは大きなストレスの原因になります。
また仕事欲が非常に強く、疲れ知らずに頑張る犬たちなの、その仕事欲を心身共に満たしてあげないといけません。莫大な量の肉体運動はもちろんのこと、服従訓練や群れを動かせるような競技運動もさせてあげることが彼らを心身共に喜ばせる秘訣です。彼らをペットとして飼うには、かなりの覚悟と準備が必要で、ハイメインテナンスであることを認識せずに飼ってしまうと、彼らのニーズに合わせるのが苦になり、また犬もストレスをため、お互い幸せに暮らせない悲劇を迎えてしまいます。見知らぬ人には警戒心を抱くことがありますが、反対に飼い主には忠誠を誓い、従順で行儀のよい伴侶犬となれるハーディング・グループは、愛犬と訓練や競技を楽しみたい飼い主にはまたとない選択でしょう。
次回は「テリア・グループ」について詳しくお話します。お楽しみに!
パピーの頃からしつけをしっかり受けたジャーマン・シェパード。いつも赤ちゃんの子守役。
てらぐちまほ:在米25年。かつては人間の専門家を目指し文化人類学を専攻。2001年からキャリアを変え、子供の頃からの夢であった「犬の専門家」に転身。地元のアニマル・シェルターでアダプション・カウンセリングやトレーニングに関わると共に、個人ではDoggie Project (www.doggieproject.com)というビジネスを設立。犬のトレーニングや問題行動解決サービスを提供している。愛犬ジュリエットが他界した今は、ニューヨークに移転して新入り犬ノアと活躍中。ご意見・ご感想は:info@doggieproject.com