2017年5月3日水曜日

第103回「犬と相続」

もし今、あなたの身に何かあったら、残された愛犬の運命は? 冒頭から脅かすような話題ですが、そんな「万が一のこと」を考えたことがありますか? 飼い主が突然不幸な目に遭い、この世を去ったために、路頭に迷う運命を辿ることになった犬をたくさん見てきました。飼い主に100%生活を委ねる犬にとって、「飼い主の安否=自分の安否」なのです。今回は、もしもの場合に備えて、飼い主が愛犬のためにしておけることについてのお話です。

世界一大金持ちになった? 犬

今年の始め、医療保険の更新をする際に、Life Insuranceにも入ってみることにしました。受取人は、「息子」のノアです。さすがに、公式の書類に「受取人 愛犬ノア」とは書けませんが、この保険金は、私に万が一何かあった時、残されたノアのために残す遺産です。保険会社の担当者によると、私が特例ではないらしく、最近では、残されたペットのためにとLife Insuranceをかける人がうんと増えたということでした。
私が残すノアへの遺産など、本当に微々たるものに過ぎませんが、溺愛していた愛犬を残しこの世を去った大富豪から、数億ドルの遺産を相続したマルチーズのトラブルの話は有名です。孫にも残さなかった遺産を、溺愛していた愛犬の老後にと数億ドルを残して死んだ時、「世界一大金持ちになった犬」と世間を騒がせました。結局、溺愛してくれていた飼い主が居なくなった後は、「普通の犬」として暮らしてこの世を去ったと、後日談を読んだ記憶もありますが。

もしもの時のために

その大富豪のようなことが出来る人は稀としても、愛犬のために、凡人の私たちにも、もしもの時に備えてやっておけることはあります。①後見人を探す:家族が居れば、後を託せますが、一人の場合は、愛犬を引き取ってくれるか、次の家をきちんと見つけてくれる後見人を探し、事前に話して了承を得る。②遺書を書く:後見人を見つけ、了承を得たら、その旨も含め、残すものなどの詳細を「遺言」として記しておくといいでしょう。また、その記は、後見人にシェアしておくことを忘れずに。③愛犬のResumeを作る:愛犬のProfileを記載した「Resume」を作る。飼い主しか分からない愛犬の好き嫌いや癖、生活習慣などの詳細を、誰が読んでも分かるように書いておきます。また、内容をたまにアップデートすることも忘れずに。④社会性に富み、環境の変化に適応能力のある犬に育てておく:何と言っても大事なのは、愛犬を「暮らしやすい犬」に育てておくことだと思います。飼い主しか受け付けられない犬だと、飼い主を失った時、「次」を見つけるのに大きな壁となってしまいます。こんな時のためにも、日頃から社会性に富む犬に育てておくようにしましょう。
備えあれば憂いなし。絶対に起こって欲しくないことではありますが、万が一の事態も考え、愛犬のために、こういうところまで準備するのが、愛犬をこよなく愛するということだと思います。
次回は、「リーシの意味」と題し、飼い主と愛犬の間に繋がるリーシの深い意味のお話です。お楽しみに!

出来れば永遠に一緒にいたい。けれど…
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てらぐちまほ在米28年。かつては人間の専門家を目指し文化人類学を専攻。2001年からキャリアを変え、子供の頃からの夢であった「犬の専門家」に転身。地元のアニマル・シェルターでアダプション・カウンセリングやトレーニングに関わると共に、個人ではDoggie Project(www.doggieproject.com)というビジネスを設立。犬のトレーニングや問題行動解決サービスを提供している。現在はニューヨークからLAに拠点を移し活躍中。ご意見・ご感想は:info@doggieproject.com