2017年4月3日月曜日

第102回「犬ビジネス」

 昨秋、生まれて初めてひどい腰痛を患いました。大型犬の飼い主としては致命傷。完治するまでの間、愛犬ノアも私も苦労続きの日々を過ごすことに…。散歩はノアとの二人三脚で何とか乗り越えましたが、ノアの持病の湿疹対策のシャワーは、あの腰痛ではさすがに無理。それがきっかけで、近所のDog Self-Washのお店を見つけ、感動と感謝の気持ちで一杯になりました。ペット産業が繁栄する昨今、犬の飼い主には大変便利な世の中になったと思います。今回は、最近発見した犬(犬の飼い主)向け便利製品のお話です。

犬にも乳母車?

 東海岸にいた時、道や地下鉄、公園などで乳母車(ストローラー)に乗る犬を見かけました。中からワンワン吠える犬もいれば、中に何かいる? と確認したくなるほど静かな犬もいました。日頃、犬にとっての散歩の重要性を強調している私が、ストローラーに乗る犬を見た時にどう思ったか。答えは「悪くない」でした。物は何でも使い様一つ。マンハッタンのような混雑した街を、周りに迷惑かけずに、安全に移動したり、公共の場所を訪れたりするには便利な武器です。人混みを長いリードでうろちょろ歩かせるのは非常識。ストローラーを使えば、周りも気遣えるし、愛犬も守れます。

Azukiの新しい味方

 犬用ストローラーの活用法は他にもあります。老犬や障害で歩行困難な犬とその飼い主にとって楽に外出ができる強い味方なのです。
 カリフォルニア在住のヨーキー、Azukiは左前脚の神経が麻痺し、肩より下は使うことが出来ません。そんなAzukiに最高の味方ができました! と大喜びなのは、Azukiのママ。Baby用品でお馴染みのCombi社が開発した犬用ストローラー、Milimili(写真参照)をゲットし、生活が変わったと。「この製品は、以前使っていた物より使い勝手がうんと優れていて、小回りの利き方も非常に素晴らしく、また、座席が取り外しでき、足も簡単に折りたためるその多様性には感動。価値あり!」と絶賛で、大変重宝していることが伺えました。もちろん主役のAzukiも大のお気に入りで、座席の前方の窓部分から地面を見ては、自分で一生懸命歩いているような気になっている様子が大変健気で可愛いいそうです。
 ひと昔前までは、飼い犬と言えば用途は番犬。犬達は一日を裏庭か、玄関先で過ごし、夜は犬小屋で孤独に寝るというのが当たり前でした。しかし、「飼い犬の概念」というものがどんどん変化してきた今、飼い犬を我が子か伴侶のように考える飼い主にとっては、犬ビジネスの発達は願ってもないこと。犬に興味のない人たちに、「行き過ぎでは?」と思われても、飼い主にとっては実際非常に助かっています。ただ、物は使い様。使い方で白にも黒にも転びます。飼い主が犬を擬人化してしまい、犬用の便利なサービスや製品を「擬人化した愛犬」に提供すると、矛盾や問題が生じます。その辺りの線引き基準がきちんと分かり、現代社会で可能になったサービスや製品を上手に活用できる飼い主でありたいものです。
 次回は、「犬と相続」と題し、飼い主に万が一のことがあった時に愛犬のために備えるお話です。お楽しみに!


                  Milimiliに乗って得意気なAzuki
                   Photo by Emiko Mizumoto
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てらぐちまほ在米28年。かつては人間の専門家を目指し文化人類学を専攻。2001年からキャリアを変え、子供の頃からの夢であった「犬の専門家」に転身。地元のアニマル・シェルターでアダプション・カウンセリングやトレーニングに関わると共に、個人ではDoggie Project(www.doggieproject.com)というビジネスを設立。犬のトレーニングや問題行動解決サービスを提供している。現在はニューヨークからLAに拠点を移し活躍中。ご意見・ご感想は:info@doggieproject.com