ラベル トレーニング の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル トレーニング の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2018年1月5日金曜日

第111回「おしっこ・うんち」

愛犬のおしっこやうんち、日頃からきちんと観察していますか? 排泄物は、犬の健康状態を示す大切な信号です。飼い主は、普段から愛犬の排泄状況や出た物の状態をチェックし、何か変化があれば、すぐに気がつけるようにしていることが大事。今回は、飼い主として知っておきたいおしっことうんちのお話です。

健康のバロメーター

体の調子が悪くても、言葉で説明できない愛犬の健康状態を知るために、排泄する時の行動や排泄物は指標になります。普段から、愛犬の排泄の回数、仕方、量、色、臭いなどに着眼しておきましょう。異常を発見するために覚えておきたいのは、急に排泄の回数が上下するなどの変化を見つけることです。また、出したいのに出せないで困ったり、苦しそうにしたり、悲痛な声を上げたりしたら要注意。
しっかりとしたうんちがたっぷり出たから良い! というわけでもなく、たくさん出ているということは食べ過ぎのサインでもあり、また、食べたものにいらないものが多く含まれていたという意味になります。体に良いものを食べていると、うんちの量が大量になることはありません。食べ物の質を見直して、うんちの量の変化を見てみるといいでしょう。同じ食べ物を食べさせていると、おしっこやうんちの色も臭いも一定のはずですが、もし色や臭いに変化があったり、異常を感じたりしたら、現物を持参して専門家に診てもらうのが良いでしょう。
愛犬ノアがまだパピーだった頃、ちょっと目を離したすきに、容器に一杯入ったワセリンをほぼ全部舐めてしまったことがありました。すると大変な便秘に……。とにかくうんちが出せない。しゃがんではいきむのですが、何も出てこない。ノアも私も焦って困り果てました。色んな人の意見を参考に、ヨーグルト、繊維の多い果物や野菜を一杯食べさせ、とにかく体を動かしました。すると、やっとのことで変な色のうんちが出て、一件落着。今では笑い話ですが、異物を食べて命を落とす犬もいるので、愛犬が食べてはいけないものを口にしてしまわないよう十分気をつけましょう。

犬の連絡網

散歩中の犬の排泄方法を見ていたら、犬のおっしこやうんちが「体に不必要なものを排泄する行為」だけではないことが分かります。犬は、くんくんと地面や木や電柱などの臭いを嗅ぎ、排泄する場所選びに多いに時間を費やします。また排泄の回数ややり方(オスの場合、足の上げ方)など排泄にこだわりも示します。それは、犬たちが自分の排泄物を使って仲間たちとコミュニケーションを取っているからなのです。犬は、他の犬の排泄物の臭いで「いつ」「だれが」「何を食べ」「どんな健康状態で」「どんな精神状態であるか」などが判断できます。また、人間にとってはどうでもいいような排泄の場所や位置選びは、犬の間ではとても重要な意味をなします。そのため犬たちは一生懸命地面などの臭いを嗅ぎ、情報収集します。自分たちの排泄物の臭いが見えない相手との「会話」なのです。排泄した後に土を蹴る行為も同じような意味があります。地面を蹴ることで足の裏から分泌物を出し、それをまき散らして自分の領域表示をします。また、メス犬は発情期には、自分の排泄物で周りのオス犬たちに発情していることを連絡します。ただし、臭い嗅ぎが犬にとって大切な行動だからと、散歩中、終始犬に主導権を渡し、したいようにさせていいというわけではないので誤解のないように。
深い意味がいっぱい詰まった犬のおしっことうんち。これからの散歩で愛犬の排泄を観察し、学んでみると愛犬との生活が一層楽しくなると思います。
次回は「犬の毛色」と題し、細かく分けられている犬の被毛の色についてのお話です。お楽しみに!

“ピーメール”でご近所の仲間に連絡中の著者の愛犬ノア
Photo © Maho Teraguchi

**********

てらぐちまほ:在米29年。かつては人間の専門家を目指し文化人類学を専攻。2001年からキャリアを変え、子供の頃からの夢であった「犬の専門家」に転身。地元のアニマル・シェルターでアダプション・カウンセリングやトレーニングに関わると共に、個人ではDoggie Project(www.doggieproject.com)というビジネスを設立。犬のトレーニングや問題行動解決サービスを提供している。現在はニューヨークからLAに拠点を移し活躍中。ご意見・ご感想は:info@doggieproject.com

2017年7月4日火曜日

第105回「対犬タイプ」

散歩中に、前方から初対面の犬と飼い主が全速力で走り寄って来て、どきどきした飼い主もいるでしょう。誰もが一度は出くわす経験だと思います。愛犬が他の犬に対し社交的ならまだしも、犬が苦手であれば、大変迷惑な行為です。巷には、犬は犬が好きで当たり前と思い込んでいる人が多くいるようですが、それは大きな勘違い。人間にも、社交的な人がいれば、孤独を好んだり、人と関わったりするのが苦手な人がいるように、犬の中にも、同類の犬と遊ぶのが大好きな犬もいれば、他の犬と関わるのが苦手な犬もいます。 今回は、同類の犬に対して犬がどういう行動をとるかについてのお話です。

4つのタイプ

同類の犬に対する行動は、基本的に以下の4つのタイプに分かれます。
•対犬社交的(Dog Social):他の犬との交流を大いに楽しみ、許容範囲が大変広い。相手の犬が少々乱暴・無作法でものんきに構えられる。しかし、対犬と対人の反応は常に同じというわけではなく、犬には大変社交的なのに人間は大の苦手という犬も多い。このタイプの犬で、人が苦手な犬に人慣れさせるには、人間にも犬にも社交的な犬から、人との交流の仕方と信頼することを学ばせるという方法もある。
•対犬寛容的(Dog Tolerant):同類の犬が特別大好きというわけでもないが、平和に共存できる。気を許した友達の犬たちとの交流は楽しみ、知らない犬と初対面でも、大抵、リラックスした態度を保てる。知らない犬が無作法に接してきても我慢できる。
•対犬選択的(Dog Selective):同類の犬の友達はいるが、自分の嫌いな犬のタイプがあったり、無作法な犬に対してすぐにきれてしまったりする。対犬と交流する際、自分のルールで仕切りたがることが多いので(許容範囲が狭い)人間による監視とガイドが必要。繰り返し、犬との正しい交流の仕方をリマインドされる必要もある。家族犬との共存は上手くいく場合が多い。
•対犬攻撃的(Dog Aggressive):同類の犬の友達の数はほんのわずかか、もしくはゼロ。異性なら反応が比較的ましという犬もいる。他の犬には大変短気で我慢がない。リーシ歩行中に対犬に悪い反応を見せる場合は、単にトレーニング不足という理由や、リーシを持つ人間のリーダーシップの弱さが原因のことも。ここでも、犬に対してと、人間への反応は同じというわけではなく、同類の犬は非常に苦手でも、人間は大好きという犬も多い。

タイプは変動する

パピーの頃に対犬社交的だったからと言って、その犬が一生対犬に社交的とは限りません。思春期から成犬期の性格形成の段階で、対犬選択的や対犬攻撃的になる犬もいます。また、対犬との交流で、繰り返し苦い経験をしたことでタイプが変わることもあります。反対に、対犬へのリアクションに問題がある犬でも、地道にきちんとしたトレーニングを続けていけば、他の犬との交流や共存が可能になっていくと場合も多くあります。
大切なのは、飼い主が、一方的な期待や希望で愛犬の対犬タイプを決めたりせず、また、間違った分析をしてしまわないこと。自分の判断に不安があれば、専門家の分析と助けを仰ぐのも良案だと思います。愛犬の対犬タイプがどれかをきちんと認識し、他の犬と関わる際には、タイプに合った交流の仕方をさせることです。また、愛犬以外の他の犬に対しても同じように理解し、対応してあげましょう。要するに、同類の犬の友達がいようがいまいが、平和に共存できれば良いのです。
次回は、「Dementia(認知症)」と題し、犬の寿命が長くなったことで多くみられるようになった老犬にある症状のお話です。
          パピーの頃に同類と交流させて、行儀作法を学ばせることが大事
**********

てらぐちまほ:在米28年。かつては人間の専門家を目指し文化人類学を専攻。2001年からキャリアを変え、子供の頃からの夢であった「犬の専門家」に転身。地元のアニマル・シェルターでアダプション・カウンセリングやトレーニングに関わると共に、個人ではDoggie Project(www.doggieproject.com)というビジネスを設立。犬のトレーニングや問題行動解決サービスを提供している。現在はニューヨークからLAに拠点を移し活躍中。ご意見・ご感想は:info@doggieproject.com

2017年6月6日火曜日

第104回「リーシの意味」

私と愛犬ノアが住むコンドミニアムには、住人同士で情報や意見を交わし合うWeb Siteがありますが、先日そこで、「リーシを使わない飼い主に対する苦情」が投稿されていました。苦い経験談や、苦情、アドバイスなど、活発な意見交換がされ、この件への巷の関心を改めて知る機会になりました。
リーシなしで犬を散歩させ、道行く人に不快な思いをさせたり、他の犬とケンカになったり、また自分の犬の用便処理をしなかったり、変な物を拾い食いして病気になったり、あげくの果てには、愛犬が交通事故に遭い、大怪我や死亡事故に至ったり…。それでも、リーシを使わない飼い主は後を絶ちません。今回は、何度も取り上げてきた話題を再び書くことで、読者のみなさんにもう一度「リーシの意味」を考えてもらいたいと思います。

どこまでも怠慢

アメリカの多くの地方自治体には、犬の飼い主に対するリーシ法が存在します。飼い主は愛犬を公共の場に連れ出す際に、6フィート以下のリーシで犬をコントロールする義務があります。これは、飼い主が愛犬及び、周囲を守るためです。私は、公共の場でリーシを使わず、飼い犬をうろつかせる飼い主は、どこまでも怠慢だからなのだろうと思います。こういう法律が存在することを知ろうとしない怠慢さ。法律を知っていたとしても、その意味をきちんと理解せず、守ろうとしない怠慢さ。世の中には犬が苦手で、怖いと思っている人が一杯いることを気に留めず、他人の気持ちを察さない怠慢さ。また、本当はリーシを使いたいとは思いつつ、トレーニングをするのが面倒で、もういいかと諦める怠慢さ。

恰好良い!

リーシなしで外に連れ出せることを「恰好良い」と考えている飼い主もいるでしょう。確かに、一見恰好良く見えないこともありません。しかし、愛犬と周囲を守るという根本の責任を考えたら、その恰好良さも「愚か」に映ります。私は、飼い主と愛犬がリーシで結ばれ、息ピッタリで歩いている姿ほど格好良いものはないと思います。「うちの犬はばっちりトレーニングされているからリーシなし」という言い訳を使うくらいなら、リーシ歩行が完璧に出来るようトレーニングすべきです。また、「うちの犬は誰にも超フレンドリー」と言って、自分の犬を断りもなしに人に近づける飼い主は、犬が怖くて心臓発作を起こしそうな人の気持ちを考えるべきです。他の犬が苦手な犬に、リーシなしの犬が駆け寄って行ったことで、その犬にまた嫌な経験をさせトラウマを与える。大迷惑です。「愛犬に自由をあげたいから」という飼い主は、この世の中は人間のルールで回っていて、犬には危険が一杯。そこで愛犬を守るのは飼い主ということを理解すべきです。
リーシは、飼い主と愛犬のコミュニケーションが図れる大切な道具です。また、リーシは、外に出た際、飼い主が愛犬を守れる一番大事な道具です。それを「命綱」と言っても過言ではないでしょう。どうしてその大切さが理解できないのか? やはり、私には疑問で仕方がありません。
次回は、「対犬タイプ」と題し、犬が同類の犬と接する際の、心理と行動のタイプについてお話します。お楽しみに!
       このサインの真ん前で、毎日オフ・リーシで犬をうろうろさせる飼い主もいる
                   Photo © Maho Teraguchi

**********

てらぐちまほ:在米28年。かつては人間の専門家を目指し文化人類学を専攻。2001年からキャリアを変え、子供の頃からの夢であった「犬の専門家」に転身。地元のアニマル・シェルターでアダプション・カウンセリングやトレーニングに関わると共に、個人ではDoggie Project(www.doggieproject.com)というビジネスを設立。犬のトレーニングや問題行動解決サービスを提供している。現在はニューヨークからLAに拠点を移し活躍中。ご意見・ご感想は:info@doggieproject.com


2016年10月5日水曜日

第96回「タイミングは命」

「好機逸すべからず」「鉄は熱いうちに打て」などという諺が示すように、私たちの暮らしの中で、今だと思えば即座に事を起こすことが大切な場合があります。物事には、絶妙なタイミングというものがあり、それがきちんと判断出来て、取るべき行動を取るか否かで、明暗を分けてしまいかねません。犬との暮らしの中でも、飼い主が絶妙なタイミングをしっかり理解し、正しく行動が起こせているかで、関係作りが大きく左右します。今回は、犬との生活におけるタイミングの重要性についてお話しします。

物には時節

 私たち人間は、「あの時のことだけど…」と過去に起きたことに対し、相手に謝罪したり、非難したりもします。しかし、その概念が理解し合えるのは人間同士のみで、犬に「あの時の」は通用しません。犬の概念は「全てが今」なのです。過去も未来もなく、今を生きるのが犬。それゆえに、犬とのやりとりは、瞬時しか通用しないということを忘れてはいけません。例えば、留守中に愛犬が悪戯をし、帰宅した際に発見。そこで犬に説教したところで、犬にしたら「お帰りなさいと挨拶したら叱られるの…?」と思います。悪戯は現行犯で正す。でなければ効果がないばかりか、間違ったメッセージを送ってしまうことになります。
 私はレッスンの際にいつも「”スリー・セカンド・ルール”と覚えておきましょう。」と説明します。愛犬の問題行動を正す時は3秒以内に行う。もし、時間が経ちすぎていたら、次に即時に正せる機会を待ちましょう。その方が絶対に効果的です。愛犬の良い行動を褒めるのにもスリー・セカンド・ルールを適用します。と言うのも、飼い主の多くが、即時に正すことは実行出来ても、褒めることを忘れがちだからです。犬にとって飼い主から褒められるということは、大好物のおやつよりも何よりも一番のリワードです。愛犬が自分で考える時間と機会を与えてあげ、問題行動を正したり、良い行いをしたりすれば、飼い主は直ちに褒める。愛犬の行動に対し、瞬時に正して、褒めて。この繰り返しで、犬は「何が間違いで、何が正しい」か、を学んでいくのです。

虫歯と同じ

 冷たい水が沁みる…。虫歯だ…と思ったら歯医者に行く。虫歯は放っておくと、治らないばかりか、どんどん悪化していきます。それと同じで、犬が問題行動を起こし始めたら、放っておいて自然に直るということはありません。しかし、愛犬の問題行動に歯止めが効かなくなったら、多くの飼い主は犬を責めるだけでなく、中には放棄してしまう人もいます。問題の原因のほとんどが飼い主にあり、気がついた時に早期に対処していれば、そこまでいかずに済みます。愛犬が問題行動を示し始めたら、まずは飼い主である自分の行動を振り返り、自分を正す。何をどうしていいか分からない場合は、迷わずに専門家の助けを得ることです。
 早期発見、早期対処。早く手を打っていれば、案外簡単に改善出来ることでも、伸ばし伸ばしにしていたために大変なことになることもあります。今を生きる犬との暮らしにおいて、飼い主も一緒に今を生きることはとても大切なポイントです。
 次回は、「The Sato Project」と題し、プエルトリコの海岸に捨てられた犬達をレスキューし、アメリカに運んで来て、新しい家族を見つける活動をする団体のお話です。お楽しみに!

「ごめんなさい」という表情より、「すごいでしょ!」という顔を引き出したいもの

  *******


てらぐちまほ:在米28年。かつては人間の専門家を目指し文化人類学を専攻。2001年からキャリアを変え、子供の頃からの夢であった「犬の専門家」に転身。地元のアニマル・シェルターでアダプション・カウンセリングやトレーニングに関わると共に、個人ではDoggie Project(www.doggieproject.com)というビジネスを設立。犬のトレーニングや問題行動解決サービスを提供している。現在はニューヨークからLAに拠点を移し活躍中。ご意見・ご感想は:info@doggieproject.com

2016年7月5日火曜日

第93回「噛む犬・噛ませる人間」

私は今まで犬に噛まれたことがありません。愛犬とだけの生活ならそんな人は珍しくないと思います。しかし、私の場合、仕事柄携わってきた犬の数は数千頭か、それ以上。それでも噛まれた経験がないのは、犬に噛ませないようにしてきたからです。今回は、噛む犬と、その裏にいる噛ませる人間についてのお話です。

「やめてください!」

 愛犬ジュリエットがまだ元気だった頃の話です。友達家族とBBQをした時、いつもジュリエットを可愛がってくれる男の子が、その夜は執拗にジュリエットを追い回し、べたべた体を触っていました。疲れていたジュリエットは必死で避けながら、私に一生懸命目配りをして助けを求めていました。しかし、大人たちは話に夢中。ついつい放っていたその時、ジュリエットが男の子の頬を鼻で突きました。びっくりした男の子は大泣き。ジュリエットはしっぽを丸め震えていました。幸い、鼻で突く程度だったので男の子が傷付くことはなかったのですが、がぶっと噛んでいたら一大事でした。ジュリエットは私に思い切り叱られましたが、ここで一番悪かったのは飼い主の私です。ジュリエットが必死でSOSを出していたのに仲介しなかったために、彼女は自分で何とかしようと、鼻で突く動作で表現したのです。私は自分の罪を深く反省し、二度と愛犬が「やめてください!」という気持ちを、噛むなどの行動に出させないようにしなければ、と心に誓いました。
 犬は不快を感じる時、色んな形で意思表示をします。しかし、それらを見逃してしまうと、犬は噛むという行動に出ることもあります。人を噛んでしまうと、「噛まれた人間」と「噛んだ犬」という二つの被害者を作り出してしまいます。なぜなら、人を噛んだ犬は「悪い犬」というレッテルを貼られてしまい、最悪のケースは殺処分に至ることもあるからです。

犬を知る・犬を読む

 シェルターで勤務していた時は、噛まれても不思議ではないほど精神的にぎりぎり状態の犬を毎日扱っていました。そんな犬達に噛まれないためには、まず、彼らの「やめてください!」という理由と表現を理解する必要がありました。そして、こちらには敵意もないが、犬のことを恐いとも思ってないことを示し、どうしたら彼らから信頼を得て、安心を与えられるかということだけを考えました。助けたいという気持ちを誠心誠意で伝え、噛ませないようにしました。
 犬は理由なく人を噛みません。その理由の多くは、恐怖やストレスや欲求不満からくるものです。触られるのが嫌い、または人間が苦手なのに、上から手を出し、頭を撫でられた犬は恐怖でストレスを感じます。スペースをくれとサインを送っても人間が無視すれば、犬はどうしていいか困惑します。庭で一日中繋がれたままや、家から外に出たことがない犬は欲求不満で一杯です。そして、それらのストレス発散法を「噛む」という形に移すことも多いのです。犬が人を噛まないためには、犬がフラストレーションを溜めたり、恐怖感やひどいストレスを感じたりするような機会を作らないことです。犬は人間に説明も弁護もできません。正当防衛で人を噛んでも、「噛む=悪い犬」になります。犬と平和に共存するには、人間が、犬の習性や本能をしっかり学ぶ。犬をもっとリスペクトする。それが、犬と人間の快適な暮らしへのカギなのです。
 次回は、「容姿の落とし穴」と題し、見た目に囚われやすい人間と、見た目は関係ない犬との間のギャップについての話です。お楽しみに!

事故のないよう、大人が責任を持って子供と犬を監督する

  *******

てらぐちまほ:在米27年。かつては人間の専門家を目指し文化人類学を専攻。2001年からキャリアを変え、子供の頃からの夢であった「犬の専門家」に転身。地元のアニマル・シェルターでアダプション・カウンセリングやトレーニングに関わると共に、個人ではDoggie Project(www.doggieproject.com)というビジネスを設立。犬のトレーニングや問題行動解決サービスを提供している。現在はニューヨークからLAに拠点を移し活躍中。ご意見・ご感想は:info@doggieproject.com

2016年3月4日金曜日

第89回「リーシ嫌い」

やっかいな犬の飼い主によく出くわします。自分の犬の糞の後始末をせず、平気な顔でその場を立ち去る飼い主はその一例。前にお話した愛犬の異常吠えを何もせず、放ったらかしにして近所に迷惑をかけている飼い主も一例。しかし、個人的にもっと迷惑でやっかいだと思うのは、散歩時にリーシを使わない飼い主です。今回は、リーシ嫌いな犬ではなく、リーシ嫌いな人間についてお話します。

法律違反


私が今までに住んできた町にはかならず「Leash Laws」がありました。Leash Lawsとは、犬の飼い主に対して、自分の犬を常にコントロールできる状態にすることを義務づけた法律です。具体的には、散歩に出かけたり、公共の場や犬の出入りが認められている私有地に入ったりする場合は、6フィート以内のリーシを用いて、自分の犬の行動を抑制しなければならないという飼い主の責任です。要するに、犬の飼い主に自分の犬も周りも守りなさいというものです。
 
犬好きが陥りがちな悪い癖は、世の中の人間全てが犬好きと思いこんでしまうこと。しかし、世の中には犬が嫌い、怖いと思う人もたくさんいます。また、同類の犬が苦手な犬も多くいるのです。リーシなしの犬に突然近寄ってこられたら、たとえそれがフレンドリーな行為だったとしても、受ける側がパニックになることも多いです。それが少々攻撃的だとしたら、犬同士の場合けんかにつながることも。リーシをしていれば引き離せても、オフの場合は引き離すのが大変困難です。また、オフの犬がジョギングやサイクリングしている人を追いかけている光景を見ることがありますが、追いかけられた方はたまったものではありません。
愛犬を守れるのは飼い主
愛犬は何が何でも自分が守るという信念を持つ私にとって、愛犬をリーシなしで外に出したり、散歩したりする飼い主の気持ちはどうしても理解できません。近所に、玄関の戸を開けて飼い犬2匹をリーシなしで放ち、自分はパジャマ姿のまま戸口で待っている人がいます。犬たちは戸が開いた途端、クモの子を散らすように去って行きます。糞の始末は誰がしているのでしょうか? 誘拐されたり、交通事故にあったりという心配が頭をよぎらないのかと不思議です。知り合いが、リーシなしにしていた愛犬が目の前で車に轢かれ即死したことを「馬鹿な犬」と言っていました。罪の意識を隠す気持ちの表現かもしれませんが、犬が馬鹿だったのでしょうか?
親子が歩く姿
犬と飼い主のリーシ歩行は「人間の親子が手をつないで道を歩いている姿」と同じようなものだと、レッスンの際いつも説明しています。親の手を振りほどいて勝手にどんどん先を歩く子供。駄々をこねて暴れ、半分引きずられるように歩く子供。または、親の手をしっかり握り、時々顔を見上げてはまた前を見て歩く子供。どれが理想の図と思いますか? 犬と飼い主をつなぐリーシは、親子が握る手と手なのです。そして、それは「命綱」でもあるのです。6フィートのリーシで、飼い主は愛犬の安全を確保し、守る。また、あのリーシを使って社会を、自分たちの位置を教え、絆を深めるのです。そんな大切な用具であるリーシをちゃんと使えるようになり、道を歩く姿に誰もが微笑ましい気持ちになる愛犬と飼い主を目指したいものです。
 
次回は、「暮らしやすい犬」と題し、うちの愛犬ノアが一番誇れる部分についての話です。お楽しみに!

親子の散歩姿。愛犬との散歩もこうでありたい

*****

てらぐちまほ:在米27年。かつては人間の専門家を目指し文化人類学を専攻。2001年からキャリアを変え、子供の頃からの夢であった「犬の専門家」に転身。地元のアニマル・シェルターでアダプション・カウンセリングやトレーニングに関わると共に、個人ではDoggie Project(www.doggieproject.com)というビジネスを設立。犬のトレーニングや問題行動解決サービスを提供している。現在はニューヨークからLAに拠点を移し活躍中。ご意見・ご感想は:info@doggieproject.com

2013年12月5日木曜日

第63回「正しいリード歩行(後編)」

前回、散歩が犬の毎日の生活にどれだけ大切な役割を果たすかをお話ししました。しかし、その重要な散歩も犬が飼い主をぐいぐい引っ張ったり、ほかの犬に吠えかかったり、何にでも飛びついたりというようなマナーの悪さだと飼い主もおっくうになり、排泄のためだけか、全く散歩をしないというケースになることもあるでしょう。すると犬は欲求不満をため問題行動を起こす。誰にとっても満ち足りた毎日にはなりません。快適な散歩をするためには、正しいリード歩行をマスターする必要があります。今回はその方法をマスターするためのテクニックについてお話しします。

まずは道具選び

正しい道具を使用することは快適な散歩の第一歩。リードの長さは6フィートが最適です。また、大抵の地域では6フィートリード着用の法律が定められ、散歩にリードなしや長く伸びるリトラクタブルリードはNG!リードを上手に使うため、リードには何もつけずポーチに必要な物をすべて入れ歩くか、犬にバックパックを使用し持ち歩かせるという手もあります。引っ張る犬、指示を聞かない犬にハーネスの使用は絶対にNG!首輪は総合的にみてマーティンゲールカラーが一番!と私は長年愛用しています。

飼い主の姿勢と心

散歩中、何をおいても大切なのは飼い主の姿勢と心の状態です。顔を上げ、目は前方を見る。肩と手の力を抜き、リードを持つ手はアタッシュケースを持つ感じで常に下に。そして笑顔で歩ければ5重マル。また、街や自然の変化に気がつく心の余裕が持てればなおいいでしょう。散歩中大切なのは、①犬が飼い主に注意を払っていること、②飼い主と犬が共にリラックスしていること、そして③両者が楽しんでいることです。

問題行動の解決法

吠えたら即正す:散歩中に犬がけたたましく吠えているのに、放ったらかしにしている飼い主を見かけますが、それは駄々をこねる子供が道で大声で泣き叫んでいるのに何もしない親と同じです。犬も飼い主から正されないとしてはいけないことがわかりません。放っておいたり、無理やり引っ張り立ち去ったりするのではなく、その場で即座に正し、ストップさせるのが飼い主の役目です。避けた方が賢明という障害物は避け、貴重な練習台と思えば挑戦するという使い分けもしましょう。

引っ張ったら止まる:犬がリードをぐいぐい引っ張って歩く場合、引っ張れば飼い主はすぐ立ち止まります。そこで犬が振り返りこちらに注目したらおやつをあげるなどして褒めます。再び歩き始めます。引っ張ったらまた止まる。こちらを振り返ったら褒める。この繰り返しです。最初は10歩進むのに何分もかかるかもしれませんが、犬に「引っ張る限りどこにも行けない」という概念をしっかり理解させることが大切。これを繰り返しているうちに犬も「どうすれば前に進めるのか」がわかってきます。またジグザグ歩行は危険なので飼い主が決めた側のみを歩かせましょう。

マーキングやにおい嗅ぎをコントロールする:散歩は飼い主のコントロール下という概念を教えるためにもマーキングやにおい嗅ぎを操作しましょう。3ブロック自由に歩いたら、次の3ブロックは真っすぐに進むという具合にメリハリをつけます。犬は教えれば理解し学びます。大切なのは飼い主の根気と一貫性。教えたことは反復し、常に実行します。後はひたすら根気で勝負。愛犬にとって貴重な学習の場である散歩が楽しいものにもなるために、ぜひリード歩行をマスターしましょう。

次回は「犬種の由来」についてお話しします。


「犬を学ぼう!」の正しいリード歩行の練習風景



てらぐちまほ:在米25年。かつては人間の専門家を目指し文化人類学を専攻。2001年からキャリアを変え、子供の頃からの夢であった「犬の専門家」に転身。地元のアニマル・シェルターでアダプション・カウンセリングやトレーニングに関わると共に、個人ではDoggie Project (www.doggieproject.com)というビジネスを設立。犬のトレーニングや問題行動解決サービスを提供している。愛犬ジュリエットが他界した今は、ニューヨークに移転し新入り犬ノアと活躍中。ご意見・ご感想は:info@doggieproject.com

『 犬を学ぼう!』講習会をマンハッタンにて開催。詳細は www.doggieproject.com/lecture

2013年11月5日火曜日

第62回「正しいリーシ歩行(前編)」

「うちは裏庭があるので散歩はしない」「小型犬だから家の中を走り回って十分な運動をしているので外に出さない」と考える人が多いようですが、果たしてそれは犬にとってどうなのでしょう。「室内犬・座敷犬」という言葉を目にすることがありますが、それは売る側が「手間がかからず飼いやすい」と作り上げた言葉に過ぎず、犬種もサイズの大小にも関係なく、犬には毎日の散歩が必要です。散歩は犬のさまざまな欲求を満たす役目をし、また、飼い主と愛犬の関係作りに大変重要な機会なのです。今号と次号にわたり、犬にとって欠かせない散歩と、その散歩を快適に行うための正しいリード歩行についてお話しします。

散歩の重要性

散歩が単なる排せつと運動のためだと考えると大間違いで、散歩は犬のさまざまな欲求を満たす役目を果たしています。オオカミのころから「群れで移動する」という遺伝子を備えた犬にとって、パック(家族)で歩く行為はその本能を満たす上で大切です。犬にとって散歩は、飼い主と行う一日の最大のイベントであり仕事なのです。さらに、人間社会の中で、飼い主のリードで安全快適に、また他人に迷惑をかけずに散歩をこなすことで良い市民の一員となり、その過程で飼い主は愛犬の信頼と尊敬が得られます。散歩は相互関係作りの絶好の場となるのです。室内や裏庭だけで過ごしていれば、犬は社会と出会う機会がありません。好奇心旺盛で常に刺激が必要な犬にとって、新しいもの、変わったにおい、空気や音、老若男女いろいろな人間、近所の犬たちに出会う機会が必要で、それらを通し社会を学ぶのです。犬同士の汚物のにおいの嗅ぎ合いは掲示板のようなもので、ほかの犬の排せつ物で、犬はどの犬がいつどんな心境でその場を通ったかが分かります。それは彼らにとって欠かせない自己存在の宣伝と情報交換の場。散歩は脳と体の活性化の大切な手段で、その機会が与えられない犬は、慢性のストレスや外気や日光を受けることがないことから病気を引き起こす原因にもなります。

悪循環を好循環に

しかし、そんな大切な散歩も愛犬がリードをぐいぐい引っ張ったり、動くものに激しく反応する癖があったり、ほかの犬を見ると気が狂ったようになるなどマナーがなっていないと、飼い主も外に出るのがおっくうになります。すると犬はますますフラストレーションをためこみ、吠える、噛む、などの問題行動を見せ始めたり、臆病で非社交的な性格になったりという悪循環が起こります。正しいリード歩行をマスターするということは、愛犬との散歩を快適に行えるようにするということで、楽に散歩できれば自然に回数も時間も増えてきます。快適で十分な散歩で心身共に満足した犬は、家に戻るとリラックスし、今までストレス発散のためしていたいたずらをする必要がなくなります。また散歩中に愛犬との関係作りが成立してくれば、家での関係ももっと充実します。意識的な散歩を続け、悪循環を好循環にすることで愛犬との暮らしをより快適にする。ちなみに、散歩の恩恵を受けるのは犬だけではないことは言うまでもないですね。

人間の親子が横に並んで手をつなぎ、楽しい話をしながら時々顔を見合わせ道を歩いている光景を見るのが大好きです。理想の飼い主と犬の散歩姿は、そんな人間の親子がほのぼの歩く姿と同じではないかと思います。他人が見てほのぼのするような姿で散歩ができるよう、私も日々愛犬と訓練に励んでいます。

次回は「正しいリード歩行」のテクニックについてお話しします。お楽しみに!



「犬を学ぼう!」リード歩行練習に参加してくれたみなさんと愛犬たち


てらぐちまほ:在米25年。かつては人間の専門家を目指し文化人類学を専攻。2001年からキャリアを変え、子供の頃からの夢であった「犬の専門家」に転身。地元のアニマル・シェルターでアダプション・カウンセリングやトレーニングに関わると共に、個人ではDoggie Project (www.doggieproject.com)というビジネスを設立。犬のトレーニングや問題行動解決サービスを提供している。愛犬ジュリエットが他界した今は、ニューヨークに移転して新入り犬ノアと活躍中。ご意見・ご感想は:info@doggieproject.com

『 犬を学ぼう!』講習会をマンハッタンにて開催。詳細は www.doggieproject.com/lecture