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2018年3月8日木曜日

最終回「闘う」

犬と人間の快適な生活のためにと7年5カ月休まず書き続けてきたこの「ドギーパラダイス!」も、今回で終止符を打つことになりました。最終回は、何か記念になることを書いて……と考えていたそんな折に不意の出来事が起こりました。愛犬ノアが、悪性リンパ腫を患っていることが発覚したのです。今回は、そんなノアと私の闘いのお話です。

間一髪

 去年の夏、ノアのあごの下に小さなシコリを見つけました。その時は大事扱いせず、様子を見ることにしました。秋に予防注射で病院に行った際、触診で獣医師がノアの鎖骨辺りの両側にもシコリがあることを発見。位置的にリンパの病気の疑いが強いと。炎症性の可能性もあるので一旦抗生物質で様子を見ましたが、まったく小さくなる兆しがなかったため、細胞診を行いました。結果、悪性リンパ腫の可能性が高いと言われました。ノア自身はいたって普通で、まったく病気らしい素振りを見せていなかったため、予防注射で訪れた専門家の触診で間一髪での大病の発見となりました。発見が少し遅れていたら、あっという間に酷い時点まで進行し、具合が悪くなって急いで病院に駆け込むという形になっていたかもしれません。

素早い行動と対処

 リンパ球は全身を循環するため、短期間で体全体を冒してしまうので素早い行動と対処が必要でした。即、がん専門医に診てもらうことに。やはり、ステージ3の悪性リンパ腫でした。犬のリンパ腫の治療法に手術という道はなく、抗がん剤を使った化学治療のみ。もし、抗がん剤治療をしないなら、ステロイドで炎症を和らげながら、ホスピス・ケアしかありません。その場合はがん細胞が急速に進行して全身の臓器に障害を起こすため、余命は1〜2カ月くらいと言われました。
 まったく自覚症状なくいつも通りに暮らす愛犬を目の前にしての余命1〜2カ月の宣告。頭が真っ白になりました。何も知らず、毎日のほほんと暮らしている愛犬です。心臓が引き裂かれる思いでした。「でも、私たちには化学治療という道がある!」。治療費は、目が飛び出る程の高額ですが、お金はどうにでもなること。すぐに抗がん剤治療を始めることにしました。ここで学んだのは、愛犬の体・体調に「うん?」と思うようなことがあれば、素早く行動を起こすこと。
 犬の一日は人間の数倍に値します。一日延ばしたために手遅れにならないように気をつけなければいけません。また、飼い主も普段から犬の病気についてある程度の知識を身につけていること。何か起こった時、知識があれば賢い判断と対応をしやすいです。そして、意見を聞き、信頼できる支えを周りに持っていることは大変な強味です。

病は気から

 今、ノアと私は毎週近くのCancer Centerに治療に通っています。幸い、リンパ腫は抗がん剤治療が大変良く反応するということ。確かに、一回目の治療の後すぐに腫瘍が小さくなり、担当医も「よし!」と結果に満足していました。また犬の場合は、抗がん剤の強い副作用が出ることは稀らしく、ノアも今のところ副作用で悩まされていません。抗がん剤治療のみならず、いろんな角度から、がんになんか負けないぞ! と親子で一生懸命闘っています。目の前に現れる課題を冷静に一つひとつ対処し、常に前向きな姿勢でこの恐ろしい病気とがっつりぶつかる。そして、毎日を笑い一杯、愛一杯で楽しく過ごすことがノアへの「最強の薬」になると信じています。

長い間ご愛読ありがとうございました!
Photo © Maho Teraguchi

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てらぐちまほ:在米29年。かつては人間の専門家を目指し文化人類学を専攻。2001年からキャリアを変え、子供の頃からの夢であった「犬の専門家」に転身。地元のアニマル・シェルターでアダプション・カウンセリングやトレーニングに関わると共に、個人ではDoggie Project(www.doggieproject.com)というビジネスを設立。犬のトレーニングや問題行動解決サービスを提供している。現在はニューヨークからLAに拠点を移し活躍中。ご意見・ご感想は:info@doggieproject.com


2017年12月4日月曜日

第110回「犬とホリデーシーズン」

町中がキラキラときれいなイルミネーションで飾られ、気持ちも躍る季節になりましたね。この時期は、きっと多くのお家でパーティが行われることでしょう。最近は、愛犬も家族の一員として、または主役と化して、パーティに同席するのが当たり前になってきました。今回は「犬とホリデーシーズン」と題し、何かとイベントが続くこの時期に怪我・事故のない楽しい時間を過ごすために、飼い主として気を付けておきたい点のお話です。

痛っ!

実は、そういう私も、この夏自宅で行ったBBQパーティの際に、大怪我をしてしまいました。パーティのことで気もそぞろになっている私を愛犬ノアが不意に引っ張り、顔面から転倒するはめに。足も捻挫し、大変な思いをしました。「浮き立つ」という言葉が物語るように、特別なことがあると、飼い主の気持ちがそぞろになってしまい、普段はきちんと出来ている愛犬の監督もおろそかになりがちです。そうすると、計算外のことが起こってしまう時も。そして、せっかくの楽しい時間にも水を差してしまい、良いところなしという結果に……。
お客さんが気を利かせて愛犬の散歩などを買って出るかもしれませんが、自分の犬が一番分かるのは飼い主です。やめた方が良いと思えばはっきり断る。お客さんでも、変な気を遣わずに、正直に対応すると余計な事故やケガを防げます。また、パーティ中に、愛犬が賑やかな場所から隠れることの出来るスペースと時間を提供してあげることも忘れないで。声を出して気持ちの説明が出来ない犬を守ってあげられるのは飼い主です。特別なイベントの際でも愛犬のことを一番に考えてあげましょう。

今日は特別?

特別な時だからと、犬が人間の食べ物をたくさん頂戴することになるのも、このホリデーシーズンです。しかし、それは犬にとって、健康にもしつけにも良くないこと。人間には美味しいものでも、犬には毒になる食べ物も色々あります(*)。また、色んな人から次から次へとトリートなどをもらい、食べ過ぎでお腹をこわす可能性もあるので、食べる量も気を付けてあげましょう。少々の甘やかしは良いにしても、普段絶対にさせないことを「今日は特別」とさせてしまうと、犬を混乱させることになるので、普段だめなものは特別な日でもだめ。それが本当の意味で愛犬のためになっていることを忘れないように。

ギフトに犬!?

クリスマスに犬をプレゼントにすることについては、賛否両論あるでしょう。私は基本的には賛成派です。それというのも、贈り物はそれだけひとしおの心入れになるので、一生大切にするという気持ちを育む意味ではいいアイデア。しかし、サプライズギフトにするのだけは絶対に避けましょう。命ある犬は、店やオンラインショップで買って、気に入らなかったら返品出来る商品とは違います。犬に返品はありません。ギフトで贈ると決めたら、準備の段階から一緒に楽しむ贈り物にすればいいと思います。
今年のホリデーシーズン、愛犬にも可愛くおめかしさせて、お家でゲストいっぱいのパーティで盛り上がるのもよし。それとも、賑やかなイベントを避け、愛犬と車で遠出のホリデー旅行もよし。怪我や事故のない楽しい時間をお過ごしください。

Happy Holidays!
次回は、「おしっこ・うんち」と題し、犬の排泄物の裏に隠されている意味についてのお話です。お楽しみに!

ホリデーシーズン、愛犬の様子をチェックすることも忘れないように

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てらぐちまほ:在米29年。かつては人間の専門家を目指し文化人類学を専攻。2001年からキャリアを変え、子供の頃からの夢であった「犬の専門家」に転身。地元のアニマル・シェルターでアダプション・カウンセリングやトレーニングに関わると共に、個人ではDoggie Project(www.doggieproject.com)というビジネスを設立。犬のトレーニングや問題行動解決サービスを提供している。現在はニューヨークからLAに拠点を移し活躍中。ご意見・ご感想は:info@doggieproject.com


2017年11月4日土曜日

第109回「迷い犬」

ハリケーン、地震、山火事と2017年は、いつにも増して自然災害の発生が多かったように思います。世界のどこかで大災害があるといつも考えさせられるのが、混乱の中でもし愛犬とはぐれてしまったら……ということです。今回は、「迷い犬」と題し、万が一愛犬がいなくなった時、また、道端で路頭に迷う犬を見かけた時のために気をつけるべき大事なポイントのお話です。

愛犬がいない……

万が一愛犬が行方不明になってしまったことを想定して、以下の準備をしておくことをお勧めします。①マイクロチップを埋め込む:マイクロチップとは小さなガラスのシリンダーに入った電子チップで、そのチップは、注射器のようなものでペットの体に埋め込めます。チップには特定の数字が設定されていて、スキャナーを通すとその数字が読み取れます。チップ販売元に飼い主のインフォメーションを登録しておけば、万が一愛犬が迷子になり、保護された先でスキャンされたら、登録されたインフォをたどって飼い主に連絡が来るという仕組みです。ちなみに、愛犬ノアには、HomeAgainという会社製のマイクロチップが埋め込まれています。②首輪に名札を付ける:愛犬の名前と飼い主の連絡先を記載した名札を首輪につけておきましょう。その際には、書かれた情報が擦れて消えないような名札を選ぶこと。ただ、迷子になった際に首輪が外れてしまう可能性もあるので、マイクロチップは必ずしておくことをお勧めします。③Lost Dogの張り紙を作る:実際に愛犬がいなくなったら、パニック状態になる可能性が大です。普段からいざという時のために写真入りの張り紙を作っておきましょう。また、定期的に内容をアップデートすることを忘れずに。④近所のシェルターなどのリストを作る:保護される可能性のある周辺のシェルターや、警察署の所在地と電話番号やメールアドレスをリストにしておきましょう。また、ソーシャルメディアのLost Dogのサイトもブックマークしておくと良いでしょう。

この子はどこの子?

路頭に迷っている犬を保護したが、シェルターに連れて行くと安楽死させられてしまうのでは? と不安になり、自分の家で飼うか、新しい家を見つけてあげようとする人がいます。一見とても尊い行為に思えますが、実は、そうすることで本当の家族との再会のチャンスを妨げてしまっています。迷い犬を保護したら、まずは動物病院やシェルターなど、マイクロチップが埋め込まれているかを確認できる所に連れて行きましょう。また、近辺のシェルターの掲示板や、オンラインなどで、すでに飼い主がLost Dogとして探していないかも確認すること。自分の犬にしたり、新しい家を探したりするより、どこかで夜も眠れずに愛犬を探している飼い主がいるかもしれないということに焦点を当てて、飼い主探しに力を入れるべし。昨今では、ソーシャルメディア上での情報拡散によりインフォメーションが伝達されて飼い主と愛犬が無事に再会を果たすというケースも多いです。
愛犬と飼い主が離れ離れになってしまうことは悲しいことです。最悪の事態になっても、愛犬が飼い主の手元に戻るように、日頃から出来る限りのことをしておきたいですね。
次回は、「犬とホリデーシーズン」と題し、どうしてもいつもと違うルーティーンになるホリデーシーズンに、犬の飼い主として気を付けたい点についてのお話です。お楽しみに!

飼い主のもとに帰らせて……

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てらぐちまほ:在米29年。かつては人間の専門家を目指し文化人類学を専攻。2001年からキャリアを変え、子供の頃からの夢であった「犬の専門家」に転身。地元のアニマル・シェルターでアダプション・カウンセリングやトレーニングに関わると共に、個人ではDoggie Project(www.doggieproject.com)というビジネスを設立。犬のトレーニングや問題行動解決サービスを提供している。現在はニューヨークからLAに拠点を移し活躍中。ご意見・ご感想は:info@doggieproject.com


2017年8月5日土曜日

第106回「Dementia(認知症)」

 愛犬ジュリエットが13歳を超えた頃から、「おかしな行動」を見せるようになりました。部屋の隅で何にもないところをずっと見つめていたり、キャビネットの扉を開けっ放しにしていると、その中に頭を突っ込んで必死で中に入ろうとしたり…。椅子やテーブルの脚など、狭くて通れないようなところに無理矢理入り込みたがり、最後には出られなくなってあがいたり…。どれも脳の老化からくる症状でした。家庭犬の寿命が延びた昨今、多くの飼い主が、愛犬の示す様々な老化現象を経験しています。今回は、犬の老化現象の中のDementia(認知症)のお話です。

主な症状

 日本の実家で飼っていた犬、プルートも長寿だったゆえ、老後になってからはおかしな行動を良く見せていました。例えば、ご飯を食べた直後に、台所に立つ母に即座にご飯をおねだり。それも、全然食べさせてもらっていないような悲壮な声で要求していました。「今食べたところ」ということが理解出来なくなってしまっていたのだと思います。
 犬の認知症で良く見られる症状としては、①徘徊(意味もなくぐるぐる回り続ける)、②夜中の遠吠えや泣き続け、③頻尿やお漏らし、④異常な食欲、⑤理解力の低下によるおかしな行動、などがあります。
 愛犬ジュリエットが高齢になった時、幸いにも、昼夜の逆転による夜中の徘徊や、泣き続けはありませんでした。しかし、同じところを円を描いてクルクル歩き回る老犬の話はよく聞きます。止めるとフラストレーションになるので、安全に歩き回れるように工夫して、させてあげる方が無難でしょう。夜中に泣き続けるのは、近所にも飼い主にもストレスです。なるべく夜熟睡出来るように、昼の間に脳にも体にも刺激を与えてあげましょう。ジュリエットは頻尿・お漏らしがあったので、赤ちゃんのおむつを使ったり、頻繁に外に出したりしてしのぎました。しかし最後の数カ月は、毎夜中、むくっと起きるのを察したら、抱き上げて外に出していました。

予防と対策

 ただでさえ人間よりうんと速く歳を取る犬なので、認知症の症状が出始めたらどんどん加速します。原因追究や、治療法発見はまだまだこれからの段階ですが、しかし、老齢になる前から栄養管理や心身に刺激を与えることで予防につながります。いざ発病しても、飼い主の努力で進行を遅くすることも出来るので、シニア期に入ったら、信頼出来る獣医師に犬の認知症について相談してみるのも良いと思います。
 これらの犬の認知症の行動は「赤ちゃん返り」に見えますが、実は本人(本犬)はちゃんと大人の気持ちも持ったままでいます。飼い主は、それを念頭に置き、愛犬の自尊心を傷つけないように、恥をかかせないように対応するのが大切。犬も自分の心身の変化に戸惑い、困っているので、飼い主はそんな愛犬の行動を絶対に「変」扱いせずに、また異常に落ち込んで悲しがったり、まごついたりせず、極力いつも通りに接しながら、犬には必要なだけの時間をかけさせてあげること。そして、横でしっかり支えてあげることだと思います。このステージの愛犬との関係は、愛のみ。それに尽きます。そして、一心同体で老化に寄り添って乗り越える体験は、飼い主と愛犬との永遠の絆になります。
 次回は、「問題児と犬」と題し、問題行動を起こす子供たちが犬と接したり、訓練したりするうちに自らの更生につながっていくお話です。お楽しみに!
                ジュリエットの認知症が始まった頃。   
              こんな姿勢でじっとしているのを見かけるように
                  Photo © Maho Teraguchi    
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てらぐちまほ:在米28年。かつては人間の専門家を目指し文化人類学を専攻。2001年からキャリアを変え、子供の頃からの夢であった「犬の専門家」に転身。地元のアニマル・シェルターでアダプション・カウンセリングやトレーニングに関わると共に、個人ではDoggie Project(www.doggieproject.com)というビジネスを設立。犬のトレーニングや問題行動解決サービスを提供している。現在はニューヨークからLAに拠点を移し活躍中。ご意見・ご感想は:info@doggieproject.com

2017年7月4日火曜日

第105回「対犬タイプ」

散歩中に、前方から初対面の犬と飼い主が全速力で走り寄って来て、どきどきした飼い主もいるでしょう。誰もが一度は出くわす経験だと思います。愛犬が他の犬に対し社交的ならまだしも、犬が苦手であれば、大変迷惑な行為です。巷には、犬は犬が好きで当たり前と思い込んでいる人が多くいるようですが、それは大きな勘違い。人間にも、社交的な人がいれば、孤独を好んだり、人と関わったりするのが苦手な人がいるように、犬の中にも、同類の犬と遊ぶのが大好きな犬もいれば、他の犬と関わるのが苦手な犬もいます。 今回は、同類の犬に対して犬がどういう行動をとるかについてのお話です。

4つのタイプ

同類の犬に対する行動は、基本的に以下の4つのタイプに分かれます。
•対犬社交的(Dog Social):他の犬との交流を大いに楽しみ、許容範囲が大変広い。相手の犬が少々乱暴・無作法でものんきに構えられる。しかし、対犬と対人の反応は常に同じというわけではなく、犬には大変社交的なのに人間は大の苦手という犬も多い。このタイプの犬で、人が苦手な犬に人慣れさせるには、人間にも犬にも社交的な犬から、人との交流の仕方と信頼することを学ばせるという方法もある。
•対犬寛容的(Dog Tolerant):同類の犬が特別大好きというわけでもないが、平和に共存できる。気を許した友達の犬たちとの交流は楽しみ、知らない犬と初対面でも、大抵、リラックスした態度を保てる。知らない犬が無作法に接してきても我慢できる。
•対犬選択的(Dog Selective):同類の犬の友達はいるが、自分の嫌いな犬のタイプがあったり、無作法な犬に対してすぐにきれてしまったりする。対犬と交流する際、自分のルールで仕切りたがることが多いので(許容範囲が狭い)人間による監視とガイドが必要。繰り返し、犬との正しい交流の仕方をリマインドされる必要もある。家族犬との共存は上手くいく場合が多い。
•対犬攻撃的(Dog Aggressive):同類の犬の友達の数はほんのわずかか、もしくはゼロ。異性なら反応が比較的ましという犬もいる。他の犬には大変短気で我慢がない。リーシ歩行中に対犬に悪い反応を見せる場合は、単にトレーニング不足という理由や、リーシを持つ人間のリーダーシップの弱さが原因のことも。ここでも、犬に対してと、人間への反応は同じというわけではなく、同類の犬は非常に苦手でも、人間は大好きという犬も多い。

タイプは変動する

パピーの頃に対犬社交的だったからと言って、その犬が一生対犬に社交的とは限りません。思春期から成犬期の性格形成の段階で、対犬選択的や対犬攻撃的になる犬もいます。また、対犬との交流で、繰り返し苦い経験をしたことでタイプが変わることもあります。反対に、対犬へのリアクションに問題がある犬でも、地道にきちんとしたトレーニングを続けていけば、他の犬との交流や共存が可能になっていくと場合も多くあります。
大切なのは、飼い主が、一方的な期待や希望で愛犬の対犬タイプを決めたりせず、また、間違った分析をしてしまわないこと。自分の判断に不安があれば、専門家の分析と助けを仰ぐのも良案だと思います。愛犬の対犬タイプがどれかをきちんと認識し、他の犬と関わる際には、タイプに合った交流の仕方をさせることです。また、愛犬以外の他の犬に対しても同じように理解し、対応してあげましょう。要するに、同類の犬の友達がいようがいまいが、平和に共存できれば良いのです。
次回は、「Dementia(認知症)」と題し、犬の寿命が長くなったことで多くみられるようになった老犬にある症状のお話です。
          パピーの頃に同類と交流させて、行儀作法を学ばせることが大事
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てらぐちまほ:在米28年。かつては人間の専門家を目指し文化人類学を専攻。2001年からキャリアを変え、子供の頃からの夢であった「犬の専門家」に転身。地元のアニマル・シェルターでアダプション・カウンセリングやトレーニングに関わると共に、個人ではDoggie Project(www.doggieproject.com)というビジネスを設立。犬のトレーニングや問題行動解決サービスを提供している。現在はニューヨークからLAに拠点を移し活躍中。ご意見・ご感想は:info@doggieproject.com

2017年6月6日火曜日

第104回「リーシの意味」

私と愛犬ノアが住むコンドミニアムには、住人同士で情報や意見を交わし合うWeb Siteがありますが、先日そこで、「リーシを使わない飼い主に対する苦情」が投稿されていました。苦い経験談や、苦情、アドバイスなど、活発な意見交換がされ、この件への巷の関心を改めて知る機会になりました。
リーシなしで犬を散歩させ、道行く人に不快な思いをさせたり、他の犬とケンカになったり、また自分の犬の用便処理をしなかったり、変な物を拾い食いして病気になったり、あげくの果てには、愛犬が交通事故に遭い、大怪我や死亡事故に至ったり…。それでも、リーシを使わない飼い主は後を絶ちません。今回は、何度も取り上げてきた話題を再び書くことで、読者のみなさんにもう一度「リーシの意味」を考えてもらいたいと思います。

どこまでも怠慢

アメリカの多くの地方自治体には、犬の飼い主に対するリーシ法が存在します。飼い主は愛犬を公共の場に連れ出す際に、6フィート以下のリーシで犬をコントロールする義務があります。これは、飼い主が愛犬及び、周囲を守るためです。私は、公共の場でリーシを使わず、飼い犬をうろつかせる飼い主は、どこまでも怠慢だからなのだろうと思います。こういう法律が存在することを知ろうとしない怠慢さ。法律を知っていたとしても、その意味をきちんと理解せず、守ろうとしない怠慢さ。世の中には犬が苦手で、怖いと思っている人が一杯いることを気に留めず、他人の気持ちを察さない怠慢さ。また、本当はリーシを使いたいとは思いつつ、トレーニングをするのが面倒で、もういいかと諦める怠慢さ。

恰好良い!

リーシなしで外に連れ出せることを「恰好良い」と考えている飼い主もいるでしょう。確かに、一見恰好良く見えないこともありません。しかし、愛犬と周囲を守るという根本の責任を考えたら、その恰好良さも「愚か」に映ります。私は、飼い主と愛犬がリーシで結ばれ、息ピッタリで歩いている姿ほど格好良いものはないと思います。「うちの犬はばっちりトレーニングされているからリーシなし」という言い訳を使うくらいなら、リーシ歩行が完璧に出来るようトレーニングすべきです。また、「うちの犬は誰にも超フレンドリー」と言って、自分の犬を断りもなしに人に近づける飼い主は、犬が怖くて心臓発作を起こしそうな人の気持ちを考えるべきです。他の犬が苦手な犬に、リーシなしの犬が駆け寄って行ったことで、その犬にまた嫌な経験をさせトラウマを与える。大迷惑です。「愛犬に自由をあげたいから」という飼い主は、この世の中は人間のルールで回っていて、犬には危険が一杯。そこで愛犬を守るのは飼い主ということを理解すべきです。
リーシは、飼い主と愛犬のコミュニケーションが図れる大切な道具です。また、リーシは、外に出た際、飼い主が愛犬を守れる一番大事な道具です。それを「命綱」と言っても過言ではないでしょう。どうしてその大切さが理解できないのか? やはり、私には疑問で仕方がありません。
次回は、「対犬タイプ」と題し、犬が同類の犬と接する際の、心理と行動のタイプについてお話します。お楽しみに!
       このサインの真ん前で、毎日オフ・リーシで犬をうろうろさせる飼い主もいる
                   Photo © Maho Teraguchi

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てらぐちまほ:在米28年。かつては人間の専門家を目指し文化人類学を専攻。2001年からキャリアを変え、子供の頃からの夢であった「犬の専門家」に転身。地元のアニマル・シェルターでアダプション・カウンセリングやトレーニングに関わると共に、個人ではDoggie Project(www.doggieproject.com)というビジネスを設立。犬のトレーニングや問題行動解決サービスを提供している。現在はニューヨークからLAに拠点を移し活躍中。ご意見・ご感想は:info@doggieproject.com


2017年5月3日水曜日

第103回「犬と相続」

もし今、あなたの身に何かあったら、残された愛犬の運命は? 冒頭から脅かすような話題ですが、そんな「万が一のこと」を考えたことがありますか? 飼い主が突然不幸な目に遭い、この世を去ったために、路頭に迷う運命を辿ることになった犬をたくさん見てきました。飼い主に100%生活を委ねる犬にとって、「飼い主の安否=自分の安否」なのです。今回は、もしもの場合に備えて、飼い主が愛犬のためにしておけることについてのお話です。

世界一大金持ちになった? 犬

今年の始め、医療保険の更新をする際に、Life Insuranceにも入ってみることにしました。受取人は、「息子」のノアです。さすがに、公式の書類に「受取人 愛犬ノア」とは書けませんが、この保険金は、私に万が一何かあった時、残されたノアのために残す遺産です。保険会社の担当者によると、私が特例ではないらしく、最近では、残されたペットのためにとLife Insuranceをかける人がうんと増えたということでした。
私が残すノアへの遺産など、本当に微々たるものに過ぎませんが、溺愛していた愛犬を残しこの世を去った大富豪から、数億ドルの遺産を相続したマルチーズのトラブルの話は有名です。孫にも残さなかった遺産を、溺愛していた愛犬の老後にと数億ドルを残して死んだ時、「世界一大金持ちになった犬」と世間を騒がせました。結局、溺愛してくれていた飼い主が居なくなった後は、「普通の犬」として暮らしてこの世を去ったと、後日談を読んだ記憶もありますが。

もしもの時のために

その大富豪のようなことが出来る人は稀としても、愛犬のために、凡人の私たちにも、もしもの時に備えてやっておけることはあります。①後見人を探す:家族が居れば、後を託せますが、一人の場合は、愛犬を引き取ってくれるか、次の家をきちんと見つけてくれる後見人を探し、事前に話して了承を得る。②遺書を書く:後見人を見つけ、了承を得たら、その旨も含め、残すものなどの詳細を「遺言」として記しておくといいでしょう。また、その記は、後見人にシェアしておくことを忘れずに。③愛犬のResumeを作る:愛犬のProfileを記載した「Resume」を作る。飼い主しか分からない愛犬の好き嫌いや癖、生活習慣などの詳細を、誰が読んでも分かるように書いておきます。また、内容をたまにアップデートすることも忘れずに。④社会性に富み、環境の変化に適応能力のある犬に育てておく:何と言っても大事なのは、愛犬を「暮らしやすい犬」に育てておくことだと思います。飼い主しか受け付けられない犬だと、飼い主を失った時、「次」を見つけるのに大きな壁となってしまいます。こんな時のためにも、日頃から社会性に富む犬に育てておくようにしましょう。
備えあれば憂いなし。絶対に起こって欲しくないことではありますが、万が一の事態も考え、愛犬のために、こういうところまで準備するのが、愛犬をこよなく愛するということだと思います。
次回は、「リーシの意味」と題し、飼い主と愛犬の間に繋がるリーシの深い意味のお話です。お楽しみに!

出来れば永遠に一緒にいたい。けれど…
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てらぐちまほ:在米28年。かつては人間の専門家を目指し文化人類学を専攻。2001年からキャリアを変え、子供の頃からの夢であった「犬の専門家」に転身。地元のアニマル・シェルターでアダプション・カウンセリングやトレーニングに関わると共に、個人ではDoggie Project(www.doggieproject.com)というビジネスを設立。犬のトレーニングや問題行動解決サービスを提供している。現在はニューヨークからLAに拠点を移し活躍中。ご意見・ご感想は:info@doggieproject.com

2017年4月3日月曜日

第102回「犬ビジネス」

 昨秋、生まれて初めてひどい腰痛を患いました。大型犬の飼い主としては致命傷。完治するまでの間、愛犬ノアも私も苦労続きの日々を過ごすことに…。散歩はノアとの二人三脚で何とか乗り越えましたが、ノアの持病の湿疹対策のシャワーは、あの腰痛ではさすがに無理。それがきっかけで、近所のDog Self-Washのお店を見つけ、感動と感謝の気持ちで一杯になりました。ペット産業が繁栄する昨今、犬の飼い主には大変便利な世の中になったと思います。今回は、最近発見した犬(犬の飼い主)向け便利製品のお話です。

犬にも乳母車?

 東海岸にいた時、道や地下鉄、公園などで乳母車(ストローラー)に乗る犬を見かけました。中からワンワン吠える犬もいれば、中に何かいる? と確認したくなるほど静かな犬もいました。日頃、犬にとっての散歩の重要性を強調している私が、ストローラーに乗る犬を見た時にどう思ったか。答えは「悪くない」でした。物は何でも使い様一つ。マンハッタンのような混雑した街を、周りに迷惑かけずに、安全に移動したり、公共の場所を訪れたりするには便利な武器です。人混みを長いリードでうろちょろ歩かせるのは非常識。ストローラーを使えば、周りも気遣えるし、愛犬も守れます。

Azukiの新しい味方

 犬用ストローラーの活用法は他にもあります。老犬や障害で歩行困難な犬とその飼い主にとって楽に外出ができる強い味方なのです。
 カリフォルニア在住のヨーキー、Azukiは左前脚の神経が麻痺し、肩より下は使うことが出来ません。そんなAzukiに最高の味方ができました! と大喜びなのは、Azukiのママ。Baby用品でお馴染みのCombi社が開発した犬用ストローラー、Milimili(写真参照)をゲットし、生活が変わったと。「この製品は、以前使っていた物より使い勝手がうんと優れていて、小回りの利き方も非常に素晴らしく、また、座席が取り外しでき、足も簡単に折りたためるその多様性には感動。価値あり!」と絶賛で、大変重宝していることが伺えました。もちろん主役のAzukiも大のお気に入りで、座席の前方の窓部分から地面を見ては、自分で一生懸命歩いているような気になっている様子が大変健気で可愛いいそうです。
 ひと昔前までは、飼い犬と言えば用途は番犬。犬達は一日を裏庭か、玄関先で過ごし、夜は犬小屋で孤独に寝るというのが当たり前でした。しかし、「飼い犬の概念」というものがどんどん変化してきた今、飼い犬を我が子か伴侶のように考える飼い主にとっては、犬ビジネスの発達は願ってもないこと。犬に興味のない人たちに、「行き過ぎでは?」と思われても、飼い主にとっては実際非常に助かっています。ただ、物は使い様。使い方で白にも黒にも転びます。飼い主が犬を擬人化してしまい、犬用の便利なサービスや製品を「擬人化した愛犬」に提供すると、矛盾や問題が生じます。その辺りの線引き基準がきちんと分かり、現代社会で可能になったサービスや製品を上手に活用できる飼い主でありたいものです。
 次回は、「犬と相続」と題し、飼い主に万が一のことがあった時に愛犬のために備えるお話です。お楽しみに!


                  Milimiliに乗って得意気なAzuki
                   Photo by Emiko Mizumoto
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てらぐちまほ:在米28年。かつては人間の専門家を目指し文化人類学を専攻。2001年からキャリアを変え、子供の頃からの夢であった「犬の専門家」に転身。地元のアニマル・シェルターでアダプション・カウンセリングやトレーニングに関わると共に、個人ではDoggie Project(www.doggieproject.com)というビジネスを設立。犬のトレーニングや問題行動解決サービスを提供している。現在はニューヨークからLAに拠点を移し活躍中。ご意見・ご感想は:info@doggieproject.com

2017年1月5日木曜日

第99回「愛情の定義」

「愛犬を愛していますか?」という問いかけに、NOという飼い主はいないと思います。きっと誰もが「もちろん愛しています」と言うでしょう。ただ、溢れ余る愛情を存分に注いでいるから、愛犬とは最高の絆が築けている、という方程式が成立していないこともあります。愛は一杯なのに、誰もが羨むような素晴らしい関係になれないのはなぜか? 今回は、「愛情の定義」と題し、飼い主の愛犬への愛情ということを考えてみます。

可愛過ぎて

 「まるで、ぬいぐるみのようで、可愛いくて、可愛いくて、どうしても厳しくなれない…。」「いじらしい顔で見つめられたら、ついつい甘やかしてしまう…。」心当たりがある人がたくさんいるのではないでしょうか。犬を愛していればいるほど、このような気持ちになりがちです。しかし、犬は自分の行動を飼い主が、“いじらしい”とか、“あどけない”と思っていることを知りません。また、自分の見てくれが、飼い主をとろけさせているとも思っていません。飼い主が自分にぞっこんで、「何をしても許される」という概念は犬には謎です。
 愛犬が可愛過ぎるとこんなことも経験あるのではないでしょうか? 食卓の横でおこぼれをじっと待つ愛犬に人間の食べ物をいそいそ与える。自分のことを好きでいてもらうために、大好物のおやつを欲しがるだけあげる。いつも猫撫で声で赤ちゃん扱いをし、優しい飼い主でいようとする。心配で犬のやることなすことを目で、頭で、体で追い回す。何でも先回りして守ろうとする。しかし、そんな毎日では愛犬も息が詰まってしまいます。大切な愛犬の一挙一動が気になったり、何がなんでも守りたいと思ったりするのは、どの飼い主も同じはず。しかし、ルールもけじめもない、やりたい放題の生活や、行き過ぎた過保護は犬にとって本当の意味で幸せでしょうか? 飼い主の過保護で甘やかし過ぎな愛情表現は、幸せへの障害なのです。

犬が犬であることの大切さ

 人間関係でも同じですが、自分本位で気持ちをぶつける愛は、決してバランスのいい関係につながりません。「愛する」ということは、相手を知ること、相手を幸せにするために、必要な時に必要なものを与えられること。相手を理解し、相手を見守れることだと思います。だからと言って相手が欲しいというものを与えまくり、喜ぶからと好むことだけを一生懸命にして尽くすことが、相手を思う愛ではありません。時には、眉間にしわを寄せ、厳しく低い声を出すことも必要。心を鬼にして、渋い顔でぐっと我慢するのも愛情。人間社会の中で生きる犬は、人間に100%依存して生きていかねばなりません。心身の健康を維持するのも、身の安全を守るのも、社会の一員として周りと協調し共存できるようになるのも、人間の力をかりねばなりません。そして、それを叶えてあげるのは飼い主なのです。
 人それぞれ愛の尺度やその表現は違います。また、何が正しい、間違っているというのも人それぞれ違うので、愛犬への愛情を定義するのは難しいことです。しかし、犬を犬と捉えることは、犬を尊敬するということであり、それこそが犬を愛することではないかと信じます。
 次回は、ドギーパラダイス!100号記念特別記事です。お楽しみに!

犬の一生は短い。限りない愛情で育てたい。

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てらぐちまほ:在米28年。かつては人間の専門家を目指し文化人類学を専攻。2001年からキャリアを変え、子供の頃からの夢であった「犬の専門家」に転身。地元のアニマル・シェルターでアダプション・カウンセリングやトレーニングに関わると共に、個人ではDoggie Project(www.doggieproject.com)というビジネスを設立。犬のトレーニングや問題行動解決サービスを提供している。現在はニューヨークからLAに拠点を移し活躍中。ご意見・ご感想は:info@doggieproject.com

2016年12月5日月曜日

第98回「エモーショナル・サポート・ドッグ」

少し前に、朝のテレビ番組「TODAY」を観ていたら、エモーショナル・サポート・ドッグというシステムを悪用し、必要のない人が愛犬を公共の場に堂々と同伴させ、他人に迷惑をかけている事件が氾濫していると報道されていました。しかし、別の番組では、必要な人がエモーショナル・サポート・ドッグを連れて外出したら、店から「犬禁止」と追い出され、大変困ったというニュースも見ました。一方では、システムを乱用し他人に迷惑をかける人がいて、他方では、思うようにシステムを利用出来ず、困っている人がいる…。今回は、最近世間を騒がせている「エモーショナル・サポート・ドッグというシステム」の大切さと問題点を探ってみます。

犬の力

 エモーショナル・サポート・ドッグ(またはエモーショナル・サポート・アニマル)とは、精神的な病気(鬱病、パニックアタックなど)で苦しむ人を精神的に支える犬のことで、特に資格などなくても、病人の助けになるということを医師が認めたら、正式に利用できるシステムです。犬好きには、犬の存在の大きさ、また犬を撫でたりするだけで得られる心の平穏は、言うまでもなく理解できると思います。世の中には、精神的に病み、苦しむ人が数多く存在し、そんな人たちにとって「存在だけ」「撫でるだけ」で薬以上の助けになるのがエモーショナル・サポート・ドッグ。現在、多くの人がこのシステムを利用することで、感情のバランスを保ったり、心の平穏を得たりするのに役立てています。しかし、ここ最近、この便利なシステムに目をつけ、悪用している人間も増えています。オンラインで安価で簡単に非公式な認定証を入手し、「病に必要」と平気な顔で自分の愛犬を飛行機の乗客席に連れ込んだり、レストランで一緒のテーブルで食事をしたり。しかし、それらの家庭犬は、公共の場で邪魔にならない厳しい訓練を受けたサービスドッグのように平静に振る舞えないことがあり、周りに迷惑をかけるケースが多発しているようです。

人間の勝手

 愛犬ノアは私にとっての世界で唯一のエモーショナル・サポート・ドッグです。彼の存在が、どれだけ日々のストレスや不安・心配・喜怒哀楽の感情のコントロールのバランスを保つために役立っているか…。しかし、私は医師に診断された心身を病む患者ではありません。ネットで非公式の認定証を入手し、ノアを無料で飛行機の座席の横に乗せるような試みはしません。誰も彼もが、きちんとしたステップを踏まずに、安易に、自分勝手にシステムを乱用すると、不必要な問題が起こってしまいます。それに歯止めが効かなくなると、「システムすべて」が廃止になりかねません。そういう人たちのせいで、本当にエモーショナル・サポート・ドッグの力が必要な人たちや、果てには、常識ある犬の飼い主が迷惑するはめになるのです。関係機関は、本当にエモーショナル・サポート・ドッグを必要としている人たちを守るために、認可方法の再検討と、システム管理の強化をする必要があると思います。
 愛犬との暮らしは、自分と愛犬だけの世界ではなく、周りと平和に共存できてこそ、快適なのです。犬の飼い主一人ひとりが、大きな目で物事の判断をすることが、愛する犬を守るのだということを再認識したいものです。
 次回は、「愛情の定義」と題し、愛犬を愛するとは? というお話です。お楽しみに!

システムの悪用・乱用が、本物に悪影響を与えることにもなる

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てらぐちまほ:在米28年。かつては人間の専門家を目指し文化人類学を専攻。2001年からキャリアを変え、子供の頃からの夢であった「犬の専門家」に転身。地元のアニマル・シェルターでアダプション・カウンセリングやトレーニングに関わると共に、個人ではDoggie Project(www.doggieproject.com)というビジネスを設立。犬のトレーニングや問題行動解決サービスを提供している。現在はニューヨークからLAに拠点を移し活躍中。ご意見・ご感想は:info@doggieproject.com

2016年9月5日月曜日

第95回「飼い主の特典」

今年の7月23日に、全米各地で一斉に「Clear the Shelters!(シェルターを一掃しよう!)」というキャンペーンが行われ、家を失くしたペットに新しい家族を見つける運動が行われました。有力メディアの協力もあって、イベントは大成功。合計4万5000匹以上のペットに新しい家族が見つかったそうです。読者のみなさんの中にも、この夏に犬の飼い主になった人もいるのでは? 犬と暮らすと、良いことが一杯あります。今回は、私が日頃からつくづく感じている「犬の飼い主の特典」についてのお話です。

様々な発見と収穫

犬と暮らし始めると、決まったリズムに安堵を覚える犬の習性に合わせるため生活が規則正しくなります。犬と散歩することで運動量も増えます。散歩は、運動量を増やしてくれるという利点だけでなく、自然の変化から、散歩道の家やお店、建物などの移り変わりまで、今までは気にも留めなかったような様々な発見もあり、日常に新たな刺激を運んでくれます。また、犬を連れていると、色んな人から話しかけられるようになり、さらには、「犬好き」という共通点があれば、人種も、年齢も、性別も、言葉をも超えて、多くの人々と親しくなり、犬談義が弾みます。

生きる糧

犬は、飼い主に「なんとかなるさ! 大丈夫。」と思わせてくれる魔法を持っています。何か大変な問題があっても、どんなに心身が疲れていても、何も知らない愛犬の無邪気で健気な姿を見れば全てが吹き飛ばされます。そんな愛おしい愛犬を死ぬまで大事にしようという気持ちがどんどん湧き、人生に張りができ、生きる糧が生まれてきます。愛犬を守るために、一生懸命仕事をしよう。自分自身も怪我や病気をしないよう、健康に十分注意しようという責任感が生まれます。実家の父がいい例です。年老いてからパピーと暮らし始めた頃は、「この子を看取るのは無理だろう…」とそんな寂しい言葉をよく発していました。しかし、責任感の強い父は愛情一杯でパピーを育てました。そのパピーは去年16歳で大往生するまで年老いた父と母に生き甲斐を与えてくれたのでした。

犬に育てられる自分

愛犬家から「うちの犬が人間の言葉を話してくれたらどんなに嬉しいか…」と言う願いをよく耳にします。そう思うところもありますが、実は私は犬との会話が人間の言葉に頼らないところがとても好きです。犬は「犬語」で、人間は「人語」でそれぞれ自己表現するのですが、相手のことに精通していれば「共通語」を話さなくてもしっかり意志の疎通が出来ます。ただ、そこに至るためには、飼い主は、犬という動物を熟知し、愛犬から終始発せられるメッセージをきちんと理解し、お互いを分かり合わなければいけません。忍耐なくては成就できない業、これは子育てスキルと全く同じです。そして、この犬の親業の過程で得るものは、人生の色んな側面で大いに役立つわけです。
人間に生活を100%依存する犬を育てる時、自分自身が本当に大きく成長します。犬を育てながら、自分が犬に育てられる。それは、犬の飼い主の真の特典だと信じます。
次回は、「タイミングは命」と題し、犬とのコミュニケーションにおいてのタイミングの重要性のお話です。お楽しみに!

足並み揃え、愛犬と一生に成長する

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てらぐちまほ:在米28年。かつては人間の専門家を目指し文化人類学を専攻。2001年からキャリアを変え、子供の頃からの夢であった「犬の専門家」に転身。地元のアニマル・シェルターでアダプション・カウンセリングやトレーニングに関わると共に、個人ではDoggie Project(www.doggieproject.com)というビジネスを設立。犬のトレーニングや問題行動解決サービスを提供している。現在はニューヨークからLAに拠点を移し活躍中。ご意見・ご感想は:info@doggieproject.com

2016年8月5日金曜日

第94回「容姿の落とし穴」

「犬のどんなところが好きですか?」という質問に、「飼い主がどんなに不格好でも、全く見かけで判断しないところ」と答える人が多くいます。確かに犬は、容姿どころか、社会的な地位も、学歴も、財産の有無も全く関係なく、大切に育ててくれる飼い主には手放しで愛情を注ぎます。反対に人間は、犬の気質より容姿重視な人の方が多いのではないでしょうか。今回は、見た目に囚われやすい人間と、見た目は関係ない犬との間のギャップについての話です。

好みの顔

 以前非常に驚いた話を聞きました。超好みな顔の犬の写真をネットで見つけ、その顔の犬が欲しくてたまらなくなり、その犬種の中でも「その顔」を扱うブリーダーが外国にいるのを発見。自ら飛行機で現地に出向き犬を購入してきた人がいた、と。ぬいぐるみのような愛くるしいその特別な顔の犬という「容姿」が大事で、飼うと決めたわけですから、その犬の気質がどうであってもさほど関係なかったのでしょう。
 可愛い・かっこいい容姿を持つ犬への人気は今に始まったことではありませんが、最近巷では変顔や変な体形の犬が流行り、それが異質であればあるほど好まれ、大金をはたいて買い求める人がいます。「これはお金になる!」と、奇形犬の改良に勤しむブリーダーもたくさんいます。言うまでもなく、人間が不自然に作り出した奇形犬は、心身に色々な問題を併発し、一生病気と闘ったり、早死にしたりすることも珍しくありません。

好みの判断材料

 犬同士が相手を判断する際、「ぬいぐるみのようで可愛いから」とか、「リボンが似合う」とか、「ハンサム!」「かっこいい~」などの見かけを材料にしません。犬は相手のエネルギーや、社会性の有無などで合う、合わない、好き嫌いを決めます。その判断基準は人間に対しても同じで、人間の持つエネルギーや、飼い主として犬のリーダーになれる素質を持っているか、また自分を理解してくれるかなどを重要視し、好き嫌いを決めます。人間の体のサイズや性別、人種を読む犬も、美貌や高級な服装は全く関係ありません。
 小さいぬいぐるみのような犬を「か弱く、おもちゃみたい」と思うのは人間だけで、もしその犬の気質が大変激しく攻撃的であれば、犬同士では迷惑がられる存在になり、またリーダーの素質があるなら、大型犬も引っ張って行きます。しかし、人間は小さい愛玩犬に対しては、どうしてもその容姿から赤ちゃん視してしまい、問題行動を起こしていても「あらあら、どうちたの?」と赤ちゃんをなだめるように、大目に見て甘やかしがちになります。すると犬は、人間は無条件で特権をくれると誤解します。かわいい~と言っても犬自身は人間がなぜ喜んでちやほやするのか理解できず、優越感で一杯になり、手に負えない犬に育ってしまうこともあります。また、容姿重視で犬を選択すると、犬との暮らしが全く予想していなかった展開になることも少なくないので要注意。
 もちろん見かけも大事ですが、見かけばかりにこだわり、内面の美しさを見逃すのは悲しいことです。これは人間関係でも言えることですね。飼い主が犬の容姿をこえて、その犬の本質を理解し愛する時、飼い主と犬の間に「本当の関係」が成立するのです。容姿で犬の良し悪しを判断したり、流行りを作ったりするのではなく、容姿以外の犬の良さがわかる人間が増えてほしいと願うばかりです。
 次回は、「犬の飼い主の特典」と題し、犬と暮らすことで得るものについてのお話です。お楽しみに!

見た目で「可愛い~」と思うのは人間だけ

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てらぐちまほ:在米27年。かつては人間の専門家を目指し文化人類学を専攻。2001年からキャリアを変え、子供の頃からの夢であった「犬の専門家」に転身。地元のアニマル・シェルターでアダプション・カウンセリングやトレーニングに関わると共に、個人ではDoggie Project(www.doggieproject.com)というビジネスを設立。犬のトレーニングや問題行動解決サービスを提供している。現在はニューヨークからLAに拠点を移し活躍中。ご意見・ご感想は:info@doggieproject.com

2016年7月5日火曜日

第93回「噛む犬・噛ませる人間」

私は今まで犬に噛まれたことがありません。愛犬とだけの生活ならそんな人は珍しくないと思います。しかし、私の場合、仕事柄携わってきた犬の数は数千頭か、それ以上。それでも噛まれた経験がないのは、犬に噛ませないようにしてきたからです。今回は、噛む犬と、その裏にいる噛ませる人間についてのお話です。

「やめてください!」

 愛犬ジュリエットがまだ元気だった頃の話です。友達家族とBBQをした時、いつもジュリエットを可愛がってくれる男の子が、その夜は執拗にジュリエットを追い回し、べたべた体を触っていました。疲れていたジュリエットは必死で避けながら、私に一生懸命目配りをして助けを求めていました。しかし、大人たちは話に夢中。ついつい放っていたその時、ジュリエットが男の子の頬を鼻で突きました。びっくりした男の子は大泣き。ジュリエットはしっぽを丸め震えていました。幸い、鼻で突く程度だったので男の子が傷付くことはなかったのですが、がぶっと噛んでいたら一大事でした。ジュリエットは私に思い切り叱られましたが、ここで一番悪かったのは飼い主の私です。ジュリエットが必死でSOSを出していたのに仲介しなかったために、彼女は自分で何とかしようと、鼻で突く動作で表現したのです。私は自分の罪を深く反省し、二度と愛犬が「やめてください!」という気持ちを、噛むなどの行動に出させないようにしなければ、と心に誓いました。
 犬は不快を感じる時、色んな形で意思表示をします。しかし、それらを見逃してしまうと、犬は噛むという行動に出ることもあります。人を噛んでしまうと、「噛まれた人間」と「噛んだ犬」という二つの被害者を作り出してしまいます。なぜなら、人を噛んだ犬は「悪い犬」というレッテルを貼られてしまい、最悪のケースは殺処分に至ることもあるからです。

犬を知る・犬を読む

 シェルターで勤務していた時は、噛まれても不思議ではないほど精神的にぎりぎり状態の犬を毎日扱っていました。そんな犬達に噛まれないためには、まず、彼らの「やめてください!」という理由と表現を理解する必要がありました。そして、こちらには敵意もないが、犬のことを恐いとも思ってないことを示し、どうしたら彼らから信頼を得て、安心を与えられるかということだけを考えました。助けたいという気持ちを誠心誠意で伝え、噛ませないようにしました。
 犬は理由なく人を噛みません。その理由の多くは、恐怖やストレスや欲求不満からくるものです。触られるのが嫌い、または人間が苦手なのに、上から手を出し、頭を撫でられた犬は恐怖でストレスを感じます。スペースをくれとサインを送っても人間が無視すれば、犬はどうしていいか困惑します。庭で一日中繋がれたままや、家から外に出たことがない犬は欲求不満で一杯です。そして、それらのストレス発散法を「噛む」という形に移すことも多いのです。犬が人を噛まないためには、犬がフラストレーションを溜めたり、恐怖感やひどいストレスを感じたりするような機会を作らないことです。犬は人間に説明も弁護もできません。正当防衛で人を噛んでも、「噛む=悪い犬」になります。犬と平和に共存するには、人間が、犬の習性や本能をしっかり学ぶ。犬をもっとリスペクトする。それが、犬と人間の快適な暮らしへのカギなのです。
 次回は、「容姿の落とし穴」と題し、見た目に囚われやすい人間と、見た目は関係ない犬との間のギャップについての話です。お楽しみに!

事故のないよう、大人が責任を持って子供と犬を監督する

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てらぐちまほ:在米27年。かつては人間の専門家を目指し文化人類学を専攻。2001年からキャリアを変え、子供の頃からの夢であった「犬の専門家」に転身。地元のアニマル・シェルターでアダプション・カウンセリングやトレーニングに関わると共に、個人ではDoggie Project(www.doggieproject.com)というビジネスを設立。犬のトレーニングや問題行動解決サービスを提供している。現在はニューヨークからLAに拠点を移し活躍中。ご意見・ご感想は:info@doggieproject.com

2016年4月1日金曜日

第90回「暮らしやすい犬」

世の中にパーフェクトな人間などいないというのは私の持論ですが、パーフェクトな犬はいると思います。しかし、いくら親ばかな私でも、我が愛犬ノアをパーフェクトな犬とは思っていませんが、ノアは大変「暮らしやすい犬」で、彼を一言で表現する時にその言葉が一番に浮かびます。今回は、愛犬ノアが一番誇れる「暮らしやすさ」についてのお話です。

番犬にならない…

 ニューヨークにいた時も、LAに越して来てからも、よくご近所さんに「ノア家にいるの?」と聞かれます。ノアがいつも静かなので不思議なようです。基本的に、私は愛犬を家の中で走り回らせたり、遊んで暴れたりさせません。体の運動は外、家は静かにくつろぐ場、または頭の体操だけの場としています。家に遊びに来る人たちが、ノアが家で静かなので面白くないと言うこともありますが、お客さんが来た時だけOKという理屈は犬に通じないし、混乱させるのが嫌で、極力基本ルールは守らせるという考えです。また、愛犬が家の中で収拾がつかないほどやんちゃでは毎日の生活が大変です。愛犬が家でリラックスしていれば、自分の生活も楽になり、相互効果になります。
 ノアが静かなのは、彼が年に1-2度しか吠えないからでもあります。そういう意味では番犬にならないのですが、それよりも、住宅が密集した都会生活をする上で、近所に迷惑をかけることがなく、大変助かっています。
 また、毎日のルーティンを把握しているので、その通りに行動してくれるのも楽です。ノアは留守番が大得意で、後追いして吠えたり泣いたりは一切せず、また留守中に家の中で悪戯もしません。トイレも絶対に外なので、一度も家を汚したことがありません。そのお陰で、一日家を空けている私は安心して外で頑張れるわけです。
 またノアは人を恐れないので、どんな人間に対しても友好的に接することができ、小さい子供でも安心してそばにいさせられるのは大利点です。

社会化・社会性

 上記からもわかるように、「暮らしやすい犬」という条件は「社会性があるか、社会化されているか」に関わってきます。私は、常日頃から「愛犬に一番養わせてほしい要素は社会性」と説いていますが、人間社会の一員であるペット犬は、社会性が有るか無いかで、一緒に暮らしやすいかどうかの差がうんと変わります。シェルターにいた時にも、社会性が有る無いで新しい家が見つかる確率の差がかなりありました。

努力が実を結ぶ

 もちろん「暮らしやすい犬」の陰で、飼い主の努力がないわけではありません。毎日の十分な運動と遊び、さらに頭の刺激を提供し、栄養が行き届いた食事を与え、健康管理を怠らず、良し悪しをきちんと教え、飼い主との上下関係をきちんと築く。また、飼い主の私が常に心身共にバランスの取れた健康状態でいることを心掛けています。愛犬が常に安心感を持てる環境を提供するのは、飼い主の器量です。しかし、これは普通の飼い主が普通にすべきことで、これらを楽しんでできないと、犬との暮らしは窮屈なはず。こういうことを「普通」と思え、楽しめたら「暮らしやすい犬」が育ち、そんな犬との楽しい生活ができるのだと思います。私の場合、ノアのDNAがよかったラッキーな飼い主ですが、愛犬との間で意思疎通がよくでき、以心伝心の関係まで持っていけたら「暮らしやすい犬」との生活に辿り着くのだと思います。
 次回は、『The Champions』というドキュメンタリー映画についてお話します。お楽しみに!
寝るのが仕事
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てらぐちまほ:在米27年。かつては人間の専門家を目指し文化人類学を専攻。2001年からキャリアを変え、子供の頃からの夢であった「犬の専門家」に転身。地元のアニマル・シェルターでアダプション・カウンセリングやトレーニングに関わると共に、個人ではDoggie Project(www.doggieproject.com)というビジネスを設立。犬のトレーニングや問題行動解決サービスを提供している。現在はニューヨークからLAに拠点を移し活躍中。ご意見・ご感想は:info@doggieproject.com

2016年3月4日金曜日

第89回「リーシ嫌い」

やっかいな犬の飼い主によく出くわします。自分の犬の糞の後始末をせず、平気な顔でその場を立ち去る飼い主はその一例。前にお話した愛犬の異常吠えを何もせず、放ったらかしにして近所に迷惑をかけている飼い主も一例。しかし、個人的にもっと迷惑でやっかいだと思うのは、散歩時にリーシを使わない飼い主です。今回は、リーシ嫌いな犬ではなく、リーシ嫌いな人間についてお話します。

法律違反


私が今までに住んできた町にはかならず「Leash Laws」がありました。Leash Lawsとは、犬の飼い主に対して、自分の犬を常にコントロールできる状態にすることを義務づけた法律です。具体的には、散歩に出かけたり、公共の場や犬の出入りが認められている私有地に入ったりする場合は、6フィート以内のリーシを用いて、自分の犬の行動を抑制しなければならないという飼い主の責任です。要するに、犬の飼い主に自分の犬も周りも守りなさいというものです。
 
犬好きが陥りがちな悪い癖は、世の中の人間全てが犬好きと思いこんでしまうこと。しかし、世の中には犬が嫌い、怖いと思う人もたくさんいます。また、同類の犬が苦手な犬も多くいるのです。リーシなしの犬に突然近寄ってこられたら、たとえそれがフレンドリーな行為だったとしても、受ける側がパニックになることも多いです。それが少々攻撃的だとしたら、犬同士の場合けんかにつながることも。リーシをしていれば引き離せても、オフの場合は引き離すのが大変困難です。また、オフの犬がジョギングやサイクリングしている人を追いかけている光景を見ることがありますが、追いかけられた方はたまったものではありません。
愛犬を守れるのは飼い主
愛犬は何が何でも自分が守るという信念を持つ私にとって、愛犬をリーシなしで外に出したり、散歩したりする飼い主の気持ちはどうしても理解できません。近所に、玄関の戸を開けて飼い犬2匹をリーシなしで放ち、自分はパジャマ姿のまま戸口で待っている人がいます。犬たちは戸が開いた途端、クモの子を散らすように去って行きます。糞の始末は誰がしているのでしょうか? 誘拐されたり、交通事故にあったりという心配が頭をよぎらないのかと不思議です。知り合いが、リーシなしにしていた愛犬が目の前で車に轢かれ即死したことを「馬鹿な犬」と言っていました。罪の意識を隠す気持ちの表現かもしれませんが、犬が馬鹿だったのでしょうか?
親子が歩く姿
犬と飼い主のリーシ歩行は「人間の親子が手をつないで道を歩いている姿」と同じようなものだと、レッスンの際いつも説明しています。親の手を振りほどいて勝手にどんどん先を歩く子供。駄々をこねて暴れ、半分引きずられるように歩く子供。または、親の手をしっかり握り、時々顔を見上げてはまた前を見て歩く子供。どれが理想の図と思いますか? 犬と飼い主をつなぐリーシは、親子が握る手と手なのです。そして、それは「命綱」でもあるのです。6フィートのリーシで、飼い主は愛犬の安全を確保し、守る。また、あのリーシを使って社会を、自分たちの位置を教え、絆を深めるのです。そんな大切な用具であるリーシをちゃんと使えるようになり、道を歩く姿に誰もが微笑ましい気持ちになる愛犬と飼い主を目指したいものです。
 
次回は、「暮らしやすい犬」と題し、うちの愛犬ノアが一番誇れる部分についての話です。お楽しみに!

親子の散歩姿。愛犬との散歩もこうでありたい

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てらぐちまほ:在米27年。かつては人間の専門家を目指し文化人類学を専攻。2001年からキャリアを変え、子供の頃からの夢であった「犬の専門家」に転身。地元のアニマル・シェルターでアダプション・カウンセリングやトレーニングに関わると共に、個人ではDoggie Project(www.doggieproject.com)というビジネスを設立。犬のトレーニングや問題行動解決サービスを提供している。現在はニューヨークからLAに拠点を移し活躍中。ご意見・ご感想は:info@doggieproject.com

2015年12月5日土曜日

第87回「嫌な犬」

迷惑ジャック 

ジャックは、斜向えに住む10歳のオスのジャック・ラッセル・テリアです。新居に引越してきた日に、何も知らずジャックの家の前を通りました。すると、窓をガッツンガッツン叩きながら窓越しに私に吠えかかる犬が。それがジャックとの初対面でした。嫌な予感がしましたが、的中。ジャックはとにかくうるさい犬で、彼の家の前を通る犬に、子供に、大人に、物音に、何にでも過敏に反応し、けたたましい声を上げ、玄関の鉄の網戸や窓をバンバン叩き吠え叫びます。前を通るものは迷惑極まりません。 また、ジャックの飼い主が外出すると、今度は「文句吠え」が始まります。戸が閉まった途端、「おい!俺を残してどこに行く!戻って来い!いい加減にしろ!」と言わんばかりの金切り声で吠え叫び続けます。 しかし、ジャックの飼い主が「No」「Stop」「Enough」などとジャックの行動を正すところを見たり聞いたりしたことがありません。

犬だから…

ジャックの飼い主は、愛想のよい優しそうな若いカップルで、近所付き合いも「上手く」やっています。ジャックのことも、可愛い洋服を着せ換え「可愛がって」います。ただ、散歩や運動はというとトイレのため程度で、敷地外で散歩をしている彼らと出くわしたことはありません。ジャック・ラッセル・テリアの気質を知っている人なら、この犬種がどれ程の体と頭の刺激を求めているかが分かると思いますが、生憎ジャックにはそれらが与えられていないようです。そうして溜まったストレスを吐き出す方法が「異常吠え」。さらには、その問題行動さえ正されないという悪循環の毎日です。

もしこれが人間の子供だとしたら…。家の前を通る犬や人に暴言を叫び続けたり、家族が出て行った後、大声で文句を叫びまくったら、大抵の親は子供を叱り、諭すのではないでしょうか?それが、犬だと「いいか…」で済むものでしょうか。ジャックに関してはなぜここまで放任なのだろう?と不思議になります。これくらいの吠えは犬だから仕方ないと思っているのか、迷惑は分かっているけど、何をしていいのか分からずここまで来てしまったのか、はたまた、「愛犬は生きたいように生かせたらいい」と言う自由尊重主義なのか。ラッキーな彼らは、近所がみんな寛大だから、今ままで大きな問題にならずに来たのでしょうが、場合によっては警察沙汰になったり、引越し要請が出たりという可能性もあり。そんないざこざが起こってしまったら、困り果てた挙句にジャックをシェルターに連れて行くのでしょうか。可愛い愛犬にはどうしても厳しくなれないと放任していることで、吠えてるジャック自身も、毎日ものすごいストレスになっているということを飼い主が理解してあげるべきです。

飼い主次第で

私は本当に犬が好きです。この世の中の何よりも好きです。ただ、社会性が養われていない、嫌な面ばかりを出している犬は、犬が大好きだからこそ苦手です。犬にいい姿を思い切り出させるか、醜い動物に豹変させるかは一緒にいる飼い主一つ。飼い主の育て方で全部変わります。犬は飼い主を選べません。ジャックも、もし他の飼い主のところで暮していれば、または、飼い主が奮起していれば、彼の良いところをふんだんに見せて、周りに好感を持たれる犬となれるでしょう。犬としてもっと幸せな日々を過ごせる可能性があるのに…と思うと不憫でなりません。いつか何かのきっかけで飼い主が奮起することを願うばかりです。

次回は、「シェルターを離れて…」と題し、14年間通い続けたシェルターでの活動から離れて一年経った今の気持ちについてのお話です。お楽しみに!


窓越しにノアと私を「攻撃する」ジャック

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てらぐちまほ:在米27年。かつては人間の専門家を目指し文化人類学を専攻。2001年からキャリアを変え、子供の頃からの夢であった「犬の専門家」に転身。地元のアニマル・シェルターでアダプション・カウンセリングやトレーニングに関わると共に、個人ではDoggie Project(www.doggieproject.com)というビジネスを設立。犬のトレーニングや問題行動解決サービスを提供している。現在はニューヨークからLAに拠点を移し活躍中。ご意見・ご感想は:info@doggieproject.com

2015年10月5日月曜日

第85回「飼い主の期待」

親なら子供が生まれた時、その子にさまざまな期待を託すでしょう。「頭のいい子になりますよう」「大物になってほしい!」「優しい子になってください」など。同様に、犬の飼い主も愛犬にさまざまな期待を抱いているのでは?今回は、「飼い主の期待」と題し、自分の懺悔的経験を基に、飼い主の期待がもたらす愛犬との関係についてをお話します。

余裕ができたら

やっと犬を飼うことを決意し迎え入れたジュリエット。そんな彼女との暮らしは、どちらかと言うと無我夢中で、彼女に対してあれこれ期待を持ったという記憶はありません。というのも、ジュリエットは私と出会う前は、人間から拷問、虐待を受ける生活で、飼い主から社会性を学ぶ機会や、十分な運動、また愛情さえも与えられたことなし。期待を抱くより、普通に楽しく暮らせればそれでいい、という気持ちが一番でした。ところが、現在の愛犬ノアをアダプトした頃は、自分に「犬と暮らす」という点で余裕があったために、その頃成長期真っ盛りの彼への期待が、それはそれはたくさんありました。

実はノアと出会う数年前に、その当時通っていたアニマル・シェルターで、「これぞ理想の犬!」という犬を見つけました。当時は高齢のジュリエットとの二人暮らし。残念ながら、どう頑張ってもジュリエットより一回り大きいエネルギー溢れる若い雄犬を迎え入れることは無理でした。しかし、それからも私の頭の中には偶像化したその犬のことが頭の片隅にありました。

何か違う

その理想犬は、なんとも自信に満ち溢れた犬でした。といって他者に恐怖感を与えるようなことはまったくなく超社交的なのですが、実に堂々としていました。だから私は、容姿の似たノアを同じような性質だと勝手に思い込んで、自信に満ちた犬になるのだろうと、大きな期待を抱いていたのです。それもそのはず。うちに来る前に付けられていた名前は「マッチョ(逞しい男)」でした。しかし、実はノアはアメリカで言うなら「チキン」そのもの。体は大きいのに、気の小さい弱心者。ビビリ光線を発しまくるので、いじめるタイプの犬たちに何度も襲われています。私の中で「何かが違う」というギャップを感じていたのは確かです。にも関わらず、勝手に自分の枠に入れようとしていました。しかし、ノアはノア。私の期待に沿えないことは沿えないと、彼なりの意思表示や反発をし、しばらくはちぐはぐな関係が続きました。そのうち、私が「本当のノア」を見ることができ、彼のそのままを受け入れ、それを彼の長所と愛し始めたら、ノアとの関係はぐっと接近しました。

ノアは、牙を剥くことも、唸ることもしません。嫌なら逃げるか観念する。そんなノアですから、赤ちゃんでも、外で初めて会う人でも安心して遊ばせることができます。臆病だけど、ひょうきんで人懐っこいノア。彼のすべてが理解できる今は、以心伝心で何でも分かり合える関係になりました。相手に色々期待を抱くのも愛情のしるし。しかし、現実とのギャップと真っ直ぐ向き合うことが、飼い主の真の愛の証明ではないでしょうか。

*今号で執筆5年になりました。いつもご愛読ありがとうございます。これからも引き続き宜しくお願いします。次回は、「CAビーチ事情」と題し、カリフォルニアのビーチと犬についての話です。お楽しみに!



お互いの長所も短所も全部把握し合った仲に

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てらぐちまほ:在米27年。かつては人間の専門家を目指し文化人類学を専攻。2001年からキャリアを変え、子供の頃からの夢であった「犬の専門家」に転身。地元のアニマル・シェルターでアダプション・カウンセリングやトレーニングに関わると共に、個人ではDoggie Project(www.doggieproject.com)というビジネスを設立。犬のトレーニングや問題行動解決サービスを提供している。現在はニューヨークからLAに拠点を移し活躍中。ご意見・ご感想は:info@doggieproject.com