2016年11月5日土曜日

第97回「The Sato Project」

The Sato Projectというアニマル・レスキュー団体で、日々情熱を注ぎ活動する、ニューヨーク在住の友人、松村けい子さんをインタビューしました。今回は、そのThe Sato Projectの紹介記事です。
麻穂:The Sato Projectの概要を教えてください。
けい子:2011年に、英国人のクリッシー・ベックルスが立ち上げた団体です。彼女のご主人が映画のスタントマンで、撮影でプエルトリコを良く訪れるようになったのですが、ビーチに捨てられ野犬になった犬達が、あちこちで群れをなし生き延びている姿を見て愕然としたのがきっかけです。プエルトリコには、「デッド・ドッグ・ビーチ(犬の死の海岸)」と呼ばれるビーチがあります。道の行き止まりにある海岸で、家もない、人も居ない「地獄」のような場所。村人はそこに犬を捨てに行くのです。ただ捨てられるだけではなく、火をつけられたり、傷つけられたり、あるいはギャングによって銃の試し撃ちに使われたりと、悲惨な目に遇わされているのです。その虐待された犬たちを救おうと、正義感の強いボクサーのクリッシーが立ち上げたのが The Sato Project* です。現地ボランティアは、毎日ビーチに行って、犬たちに餌や薬を与え、保護して治療もします。保護した犬を去勢したら、アメリカに運び、里親を探して引き渡すという活動を行っています。
麻:けい子さんがThe Sato Projectに関わることになったきっかけは?
け:Facebookを見ていた時、以前に飼っていた犬と、今飼っている犬がミックスしたような犬の写真を見つけました。その犬の一時預かり募集の投稿でした。ただ彼に会ってみたい、彼のために何か出来ればと、いう思いでクリッシーに連絡をしました。それが活動に関わったきっかけです。
麻:けい子さんは、現在どんな活動をしていますか?
け:主に、フォスター・ケアです。保護された犬に家族を見つける前に、人間との生活のハウツーを教える活動です。そして、この活動を少しでも多くの日本人家族に経験してもらえるよう、また知ってもらえるよう、広報活動もしています。
麻:活動をする中で、大変なことはなんですか?
け:ビーチから送られてくる犬の多くは、人間との家庭生活が初めて。ビーチでの生活では見たこともない、階段、エレベーター、自転車、バス、地下鉄、そしてリーシュ歩行。全てに慣れるまで24時間でクリアする犬もいれば、時間がかかる犬もいます。それぞれの犬の性格を短時間で見極めること、また苦手を克服させるのが大変です。
麻:関わってよかったと思える時はどんな時?
け:意味があって地球上に犬として命を授かったにも関わらず、人間の勝手で一度は不必要とされるわけですが、この団体の助けで命を吹き返す、更には思ってもいない幸せを得て犬の一生を全う出来る助けに携われることです。
麻:読者のみなさんに一言メッセージをお願いします。
け:次から次へと休みなく犬を預かっていると、疲れが増して「こんな犬預からなければよかった」と思うこともあります。そんな時に、私の気持ちを察して「見た目はこんなですが可愛がってください、ヨロシク」と目で訴えてくるのを見ると「ごめんなさい」と我に返ります。誰よりも空気を読んで私の気持ちを一番に察してくれるのです。家族が見つからないかもと勝手に判断をしてしまった犬に、「まさか!」の素晴らしい家族が見つかった時、神様がちゃんと見ていて、家族とこの犬を巡り会わせてくれたんだ。この家族が来るのを待っていたんだ、運命ってあるんだな、と思うことが沢山あります。
この活動を通じて、沢山の素晴らしい人に巡り会いました。沢山の幸せを見てきました。是非、この経験をみなさんとシェアしていけたらと思っています。
次回は、「Emotional Support Dog」のお話です。お楽しみに!
*団体についての詳細は、http://www.thesatoproject.org/をご覧ください。

わんぱくだったローラも、家が見つかった今は、
お行儀良い家庭犬に変身。けい子さんと愛犬のハンナと記念撮影。
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てらぐちまほ在米28年。かつては人間の専門家を目指し文化人類学を専攻。2001年からキャリアを変え、子供の頃からの夢であった「犬の専門家」に転身。地元のアニマル・シェルターでアダプション・カウンセリングやトレーニングに関わると共に、個人ではDoggie Project(www.doggieproject.com)というビジネスを設立。犬のトレーニングや問題行動解決サービスを提供している。現在はニューヨークからLAに拠点を移し活躍中。ご意見・ご感想は:info@doggieproject.com