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2018年1月5日金曜日

第111回「おしっこ・うんち」

愛犬のおしっこやうんち、日頃からきちんと観察していますか? 排泄物は、犬の健康状態を示す大切な信号です。飼い主は、普段から愛犬の排泄状況や出た物の状態をチェックし、何か変化があれば、すぐに気がつけるようにしていることが大事。今回は、飼い主として知っておきたいおしっことうんちのお話です。

健康のバロメーター

体の調子が悪くても、言葉で説明できない愛犬の健康状態を知るために、排泄する時の行動や排泄物は指標になります。普段から、愛犬の排泄の回数、仕方、量、色、臭いなどに着眼しておきましょう。異常を発見するために覚えておきたいのは、急に排泄の回数が上下するなどの変化を見つけることです。また、出したいのに出せないで困ったり、苦しそうにしたり、悲痛な声を上げたりしたら要注意。
しっかりとしたうんちがたっぷり出たから良い! というわけでもなく、たくさん出ているということは食べ過ぎのサインでもあり、また、食べたものにいらないものが多く含まれていたという意味になります。体に良いものを食べていると、うんちの量が大量になることはありません。食べ物の質を見直して、うんちの量の変化を見てみるといいでしょう。同じ食べ物を食べさせていると、おしっこやうんちの色も臭いも一定のはずですが、もし色や臭いに変化があったり、異常を感じたりしたら、現物を持参して専門家に診てもらうのが良いでしょう。
愛犬ノアがまだパピーだった頃、ちょっと目を離したすきに、容器に一杯入ったワセリンをほぼ全部舐めてしまったことがありました。すると大変な便秘に……。とにかくうんちが出せない。しゃがんではいきむのですが、何も出てこない。ノアも私も焦って困り果てました。色んな人の意見を参考に、ヨーグルト、繊維の多い果物や野菜を一杯食べさせ、とにかく体を動かしました。すると、やっとのことで変な色のうんちが出て、一件落着。今では笑い話ですが、異物を食べて命を落とす犬もいるので、愛犬が食べてはいけないものを口にしてしまわないよう十分気をつけましょう。

犬の連絡網

散歩中の犬の排泄方法を見ていたら、犬のおっしこやうんちが「体に不必要なものを排泄する行為」だけではないことが分かります。犬は、くんくんと地面や木や電柱などの臭いを嗅ぎ、排泄する場所選びに多いに時間を費やします。また排泄の回数ややり方(オスの場合、足の上げ方)など排泄にこだわりも示します。それは、犬たちが自分の排泄物を使って仲間たちとコミュニケーションを取っているからなのです。犬は、他の犬の排泄物の臭いで「いつ」「だれが」「何を食べ」「どんな健康状態で」「どんな精神状態であるか」などが判断できます。また、人間にとってはどうでもいいような排泄の場所や位置選びは、犬の間ではとても重要な意味をなします。そのため犬たちは一生懸命地面などの臭いを嗅ぎ、情報収集します。自分たちの排泄物の臭いが見えない相手との「会話」なのです。排泄した後に土を蹴る行為も同じような意味があります。地面を蹴ることで足の裏から分泌物を出し、それをまき散らして自分の領域表示をします。また、メス犬は発情期には、自分の排泄物で周りのオス犬たちに発情していることを連絡します。ただし、臭い嗅ぎが犬にとって大切な行動だからと、散歩中、終始犬に主導権を渡し、したいようにさせていいというわけではないので誤解のないように。
深い意味がいっぱい詰まった犬のおしっことうんち。これからの散歩で愛犬の排泄を観察し、学んでみると愛犬との生活が一層楽しくなると思います。
次回は「犬の毛色」と題し、細かく分けられている犬の被毛の色についてのお話です。お楽しみに!

“ピーメール”でご近所の仲間に連絡中の著者の愛犬ノア
Photo © Maho Teraguchi

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てらぐちまほ:在米29年。かつては人間の専門家を目指し文化人類学を専攻。2001年からキャリアを変え、子供の頃からの夢であった「犬の専門家」に転身。地元のアニマル・シェルターでアダプション・カウンセリングやトレーニングに関わると共に、個人ではDoggie Project(www.doggieproject.com)というビジネスを設立。犬のトレーニングや問題行動解決サービスを提供している。現在はニューヨークからLAに拠点を移し活躍中。ご意見・ご感想は:info@doggieproject.com

2017年12月4日月曜日

第110回「犬とホリデーシーズン」

町中がキラキラときれいなイルミネーションで飾られ、気持ちも躍る季節になりましたね。この時期は、きっと多くのお家でパーティが行われることでしょう。最近は、愛犬も家族の一員として、または主役と化して、パーティに同席するのが当たり前になってきました。今回は「犬とホリデーシーズン」と題し、何かとイベントが続くこの時期に怪我・事故のない楽しい時間を過ごすために、飼い主として気を付けておきたい点のお話です。

痛っ!

実は、そういう私も、この夏自宅で行ったBBQパーティの際に、大怪我をしてしまいました。パーティのことで気もそぞろになっている私を愛犬ノアが不意に引っ張り、顔面から転倒するはめに。足も捻挫し、大変な思いをしました。「浮き立つ」という言葉が物語るように、特別なことがあると、飼い主の気持ちがそぞろになってしまい、普段はきちんと出来ている愛犬の監督もおろそかになりがちです。そうすると、計算外のことが起こってしまう時も。そして、せっかくの楽しい時間にも水を差してしまい、良いところなしという結果に……。
お客さんが気を利かせて愛犬の散歩などを買って出るかもしれませんが、自分の犬が一番分かるのは飼い主です。やめた方が良いと思えばはっきり断る。お客さんでも、変な気を遣わずに、正直に対応すると余計な事故やケガを防げます。また、パーティ中に、愛犬が賑やかな場所から隠れることの出来るスペースと時間を提供してあげることも忘れないで。声を出して気持ちの説明が出来ない犬を守ってあげられるのは飼い主です。特別なイベントの際でも愛犬のことを一番に考えてあげましょう。

今日は特別?

特別な時だからと、犬が人間の食べ物をたくさん頂戴することになるのも、このホリデーシーズンです。しかし、それは犬にとって、健康にもしつけにも良くないこと。人間には美味しいものでも、犬には毒になる食べ物も色々あります(*)。また、色んな人から次から次へとトリートなどをもらい、食べ過ぎでお腹をこわす可能性もあるので、食べる量も気を付けてあげましょう。少々の甘やかしは良いにしても、普段絶対にさせないことを「今日は特別」とさせてしまうと、犬を混乱させることになるので、普段だめなものは特別な日でもだめ。それが本当の意味で愛犬のためになっていることを忘れないように。

ギフトに犬!?

クリスマスに犬をプレゼントにすることについては、賛否両論あるでしょう。私は基本的には賛成派です。それというのも、贈り物はそれだけひとしおの心入れになるので、一生大切にするという気持ちを育む意味ではいいアイデア。しかし、サプライズギフトにするのだけは絶対に避けましょう。命ある犬は、店やオンラインショップで買って、気に入らなかったら返品出来る商品とは違います。犬に返品はありません。ギフトで贈ると決めたら、準備の段階から一緒に楽しむ贈り物にすればいいと思います。
今年のホリデーシーズン、愛犬にも可愛くおめかしさせて、お家でゲストいっぱいのパーティで盛り上がるのもよし。それとも、賑やかなイベントを避け、愛犬と車で遠出のホリデー旅行もよし。怪我や事故のない楽しい時間をお過ごしください。

Happy Holidays!
次回は、「おしっこ・うんち」と題し、犬の排泄物の裏に隠されている意味についてのお話です。お楽しみに!

ホリデーシーズン、愛犬の様子をチェックすることも忘れないように

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てらぐちまほ:在米29年。かつては人間の専門家を目指し文化人類学を専攻。2001年からキャリアを変え、子供の頃からの夢であった「犬の専門家」に転身。地元のアニマル・シェルターでアダプション・カウンセリングやトレーニングに関わると共に、個人ではDoggie Project(www.doggieproject.com)というビジネスを設立。犬のトレーニングや問題行動解決サービスを提供している。現在はニューヨークからLAに拠点を移し活躍中。ご意見・ご感想は:info@doggieproject.com


2017年10月5日木曜日

第108回「犬はカガミ」

ホモ・サピエンスの人間と、カニスの犬。生態的に大きく違うこの二つの動物ですが、この二者について私が思う一番顕著な違いは、心と裏腹な行動を取れる人間に対して、犬にはそれができないというところではないかと思います。今回は、「犬はカガミ」と題し、私が日頃から、犬たちは人間の「カガミ」だと感じていることについてのお話です。

犬は飼い主の鏡(カガミ)

グループ・レッスンでも、プライベート・セッションの際でも、途中で犬がとんちんかんなことをし始めたり、集中力を欠いてしまったりすることがあります。しかし、飼い主の方はというと、至って平静。でも、実は、この犬の行動の裏には、リーシを握る飼い主の心理状態が大きく関係しています。人間がいらいらしたり、不安になったり、他の事で頭が一杯になったりしたら、リーシの反対側にいる犬は、その人間の心理状態(エネルギー)を丸写しにした行動に出ます。そういう状態を見かけると、私は、すかさず飼い主に「何かに気を取られていますね?」と問いかけます。すると飼い主の方は「どうして分かったのだろう?」というような顔を見せますが、それは自分の犬が鏡になって飼い主の心理状態を教えてくれているからです。人間がいくら平静を装っていても、犬には隠せません。特に飼い主の心理状態は直接的に愛犬の行動に反映されます。
愛犬の問題行動がうまく改善できずに困惑している人に相談を受けたら、「愛犬は飼い主の鏡なので、愛犬の行動を見て、(飼い主の)進歩具合をはかってください」と話しています。すなわち、愛犬の問題行動が直らないのは、飼い主自身の本気度が足りていないからで、飼い主次第で、愛犬の問題行動は変わるということです。
「犬は鏡! と、常に忘れず思っているので、彼の行動で私達の本気度が分かります。思ったよりもっと、もっと、なんでしょうね。意外と奥深いので、その辺を心してやっていこうと思います。犬がきちんと『まだまだだよ!』と教えてくれているんですね。犬は本当に正直でありがたいです」。トレーニングを担当した、ある飼い主さんの言葉です。

犬は生き様の鑑(カガミ)

犬は、飼い主の心を映し出す鏡であると記してきましたが、私にとっては、犬は生き方の鑑(カガミ)です。すなわち、彼らは人生のお手本。犬は、過去を引きずらず、明日に不安を抱かず、とにかく今を一生懸命に生きます。しかし、我々人間はというと、ついつい昔のことにこだわったり、先のことばかり考えたり……。そんな時は、犬の生き様をお手本にすることを心に刻みます。今をしっかり生きることがすべてにつながる! と。
犬が、信頼したり尊敬したりするものを選ぶ尺度も私にとっては人生の鑑です。お金や名誉や学歴や美貌などはまったく関係ない。彼らが信頼し、尊敬する対象は、心身共に強く逞しく、常に冷静な判断が下せる精神の持ち主なのです。そういう要素を基準に、相手を信頼し、尊敬できるかをはかる犬は私には鑑です。
犬の考え方は、すべてが白か黒。行動も白か黒。グレーゾーンのない、直球勝負で生きる犬の世界は私には鑑です。そして、生きる姿勢の鑑である犬との暮らしは、私にとっては何ものにも代えることのできない貴重な財産です。
次回は、「迷い犬」と題し、もし愛犬がいなくなったら、また、飼い主とはぐれて路頭をさまよっている犬を見つけたらどうするかについてのお話です。お楽しみに!

犬をお手本にして生きたい
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てらぐちまほ:在米29年。かつては人間の専門家を目指し文化人類学を専攻。2001年からキャリアを変え、子供の頃からの夢であった「犬の専門家」に転身。地元のアニマル・シェルターでアダプション・カウンセリングやトレーニングに関わると共に、個人ではDoggie Project(www.doggieproject.com)というビジネスを設立。犬のトレーニングや問題行動解決サービスを提供している。現在はニューヨークからLAに拠点を移し活躍中。ご意見・ご感想は:info@doggieproject.com

2017年9月5日火曜日

第107回『犬が運ぶ青少年の未来』

私が尊敬して止まない人物の一人、ティア・マリア・トレスさんは、仮釈放中の犯罪者とピットブルテリアという、いわゆる世間から風当たりの強い二つのグループを組み合わせ、アニマル・レスキュー団体を経営しています。彼女の偉業は、Animal Planetでもシリーズ番組化され(“Pit Bulls & Parolees”。現在も放映中)エミー賞にもノミネートされたほどの評判です。一体、何が偉業なのか。それは、人生のどん底をさまよってきた犯罪者に、ホームレスのピットブルテリアたちの世話をさせることで、今までとまったく違った人生観を見出していく手助けをしているからです。今を懸命に生きる犬たちの姿勢、そして、犬と築く信頼と絆から彼らは再び生きる糧を見つけていきます。
私の住むLAにも似たようなプログラムがあります。こちらは、様々な問題を抱えて暮らす高校生たちと、シェルターで暮らすホームレス犬という組み合わせ。今回は、その高校生たちとホームレス犬のプログラムのお話です。

犬の力

カリフォルニア州のサンタモニカに、K9 Connectionと呼ばれる非営利団体があります。その団体は、様々な問題を抱えて暮らす周辺地域の高校生たちに、シェルターの犬を訓練させることで更生の機会を提供しています。参加している高校生たちは、低所得家庭、またはホームレスの家庭の子供たちで、貧困、家庭内暴力、精神疾患、ドラッグなどの問題と日々向かい合っています。そんな高校生たちが数週間かけて、シェルターの犬に基本的なしつけを教えるのですが、犬にコマンドを教えることはたやすいことではありません。意思が通じ合わないと、なかなか言うことを聞いてもらえません。また、トレーニングは忍耐力を要します。しかし、正しく教えれば、必ずきちんと応えてくれるのが犬。自分が訓練した犬に新しい家族が見つかってシェルターを旅立って行くという経験は、高校生たちの心を揺さぶります。そして、彼らはその経験を通して、生きるということの本当の意味を見出していくのです。

子供の力

このプログラムを体験した子供たちのほとんどが、学校の成績が伸びたり、性格や行動の改善に成功したりしています。夢にも思っていなかった大学に受かったり、将来の道が具体的に描けたり。また、子供たちはプログラムを通して、チームワーク、友情、信頼関係、責任感を学びます。何といっても、自分のことを頼りにし、待っている犬の存在のお陰で、毎日さぼらず学校にやって来ます。もし、彼らにこんな機会が与えられていなければ、高校は中退。また、犯罪に関わる確率も高くなり、一生希望を持たずに毎日を過ごしていたかもしれません。将来彼らが、世間を困らせる存在になるか、世間で活躍する存在になるかは、こういったプログラムの有無が大きく左右するのです。これからの時代を担っていく少年少女たちに、規律と責任感を教えながら、周りと協力することによって、必要とされる気持ち、将来への希望と夢を抱かせる機会を与え、立派な青少年になってもらうことは、私たち大人が取り組むべき義務なのだと思います。
私自身は、このプログラムを見つけてから、多大な興味と関心を持っているので、そのうち必ずボランティア活動を始めたいと考えています。その時は、実体験の記事をここでご紹介します。
次回は、「犬は鏡」と題し、愛犬は様々な角度で、飼い主の鏡になっているというお話です。お楽しみに!

助けて、助けられて

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てらぐちまほ:在米29年。かつては人間の専門家を目指し文化人類学を専攻。2001年からキャリアを変え、子供の頃からの夢であった「犬の専門家」に転身。地元のアニマル・シェルターでアダプション・カウンセリングやトレーニングに関わると共に、個人ではDoggie Project(www.doggieproject.com)というビジネスを設立。犬のトレーニングや問題行動解決サービスを提供している。現在はニューヨークからLAに拠点を移し活躍中。ご意見・ご感想は:info@doggieproject.com


2017年7月4日火曜日

第105回「対犬タイプ」

散歩中に、前方から初対面の犬と飼い主が全速力で走り寄って来て、どきどきした飼い主もいるでしょう。誰もが一度は出くわす経験だと思います。愛犬が他の犬に対し社交的ならまだしも、犬が苦手であれば、大変迷惑な行為です。巷には、犬は犬が好きで当たり前と思い込んでいる人が多くいるようですが、それは大きな勘違い。人間にも、社交的な人がいれば、孤独を好んだり、人と関わったりするのが苦手な人がいるように、犬の中にも、同類の犬と遊ぶのが大好きな犬もいれば、他の犬と関わるのが苦手な犬もいます。 今回は、同類の犬に対して犬がどういう行動をとるかについてのお話です。

4つのタイプ

同類の犬に対する行動は、基本的に以下の4つのタイプに分かれます。
•対犬社交的(Dog Social):他の犬との交流を大いに楽しみ、許容範囲が大変広い。相手の犬が少々乱暴・無作法でものんきに構えられる。しかし、対犬と対人の反応は常に同じというわけではなく、犬には大変社交的なのに人間は大の苦手という犬も多い。このタイプの犬で、人が苦手な犬に人慣れさせるには、人間にも犬にも社交的な犬から、人との交流の仕方と信頼することを学ばせるという方法もある。
•対犬寛容的(Dog Tolerant):同類の犬が特別大好きというわけでもないが、平和に共存できる。気を許した友達の犬たちとの交流は楽しみ、知らない犬と初対面でも、大抵、リラックスした態度を保てる。知らない犬が無作法に接してきても我慢できる。
•対犬選択的(Dog Selective):同類の犬の友達はいるが、自分の嫌いな犬のタイプがあったり、無作法な犬に対してすぐにきれてしまったりする。対犬と交流する際、自分のルールで仕切りたがることが多いので(許容範囲が狭い)人間による監視とガイドが必要。繰り返し、犬との正しい交流の仕方をリマインドされる必要もある。家族犬との共存は上手くいく場合が多い。
•対犬攻撃的(Dog Aggressive):同類の犬の友達の数はほんのわずかか、もしくはゼロ。異性なら反応が比較的ましという犬もいる。他の犬には大変短気で我慢がない。リーシ歩行中に対犬に悪い反応を見せる場合は、単にトレーニング不足という理由や、リーシを持つ人間のリーダーシップの弱さが原因のことも。ここでも、犬に対してと、人間への反応は同じというわけではなく、同類の犬は非常に苦手でも、人間は大好きという犬も多い。

タイプは変動する

パピーの頃に対犬社交的だったからと言って、その犬が一生対犬に社交的とは限りません。思春期から成犬期の性格形成の段階で、対犬選択的や対犬攻撃的になる犬もいます。また、対犬との交流で、繰り返し苦い経験をしたことでタイプが変わることもあります。反対に、対犬へのリアクションに問題がある犬でも、地道にきちんとしたトレーニングを続けていけば、他の犬との交流や共存が可能になっていくと場合も多くあります。
大切なのは、飼い主が、一方的な期待や希望で愛犬の対犬タイプを決めたりせず、また、間違った分析をしてしまわないこと。自分の判断に不安があれば、専門家の分析と助けを仰ぐのも良案だと思います。愛犬の対犬タイプがどれかをきちんと認識し、他の犬と関わる際には、タイプに合った交流の仕方をさせることです。また、愛犬以外の他の犬に対しても同じように理解し、対応してあげましょう。要するに、同類の犬の友達がいようがいまいが、平和に共存できれば良いのです。
次回は、「Dementia(認知症)」と題し、犬の寿命が長くなったことで多くみられるようになった老犬にある症状のお話です。
          パピーの頃に同類と交流させて、行儀作法を学ばせることが大事
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てらぐちまほ:在米28年。かつては人間の専門家を目指し文化人類学を専攻。2001年からキャリアを変え、子供の頃からの夢であった「犬の専門家」に転身。地元のアニマル・シェルターでアダプション・カウンセリングやトレーニングに関わると共に、個人ではDoggie Project(www.doggieproject.com)というビジネスを設立。犬のトレーニングや問題行動解決サービスを提供している。現在はニューヨークからLAに拠点を移し活躍中。ご意見・ご感想は:info@doggieproject.com

2017年6月6日火曜日

第104回「リーシの意味」

私と愛犬ノアが住むコンドミニアムには、住人同士で情報や意見を交わし合うWeb Siteがありますが、先日そこで、「リーシを使わない飼い主に対する苦情」が投稿されていました。苦い経験談や、苦情、アドバイスなど、活発な意見交換がされ、この件への巷の関心を改めて知る機会になりました。
リーシなしで犬を散歩させ、道行く人に不快な思いをさせたり、他の犬とケンカになったり、また自分の犬の用便処理をしなかったり、変な物を拾い食いして病気になったり、あげくの果てには、愛犬が交通事故に遭い、大怪我や死亡事故に至ったり…。それでも、リーシを使わない飼い主は後を絶ちません。今回は、何度も取り上げてきた話題を再び書くことで、読者のみなさんにもう一度「リーシの意味」を考えてもらいたいと思います。

どこまでも怠慢

アメリカの多くの地方自治体には、犬の飼い主に対するリーシ法が存在します。飼い主は愛犬を公共の場に連れ出す際に、6フィート以下のリーシで犬をコントロールする義務があります。これは、飼い主が愛犬及び、周囲を守るためです。私は、公共の場でリーシを使わず、飼い犬をうろつかせる飼い主は、どこまでも怠慢だからなのだろうと思います。こういう法律が存在することを知ろうとしない怠慢さ。法律を知っていたとしても、その意味をきちんと理解せず、守ろうとしない怠慢さ。世の中には犬が苦手で、怖いと思っている人が一杯いることを気に留めず、他人の気持ちを察さない怠慢さ。また、本当はリーシを使いたいとは思いつつ、トレーニングをするのが面倒で、もういいかと諦める怠慢さ。

恰好良い!

リーシなしで外に連れ出せることを「恰好良い」と考えている飼い主もいるでしょう。確かに、一見恰好良く見えないこともありません。しかし、愛犬と周囲を守るという根本の責任を考えたら、その恰好良さも「愚か」に映ります。私は、飼い主と愛犬がリーシで結ばれ、息ピッタリで歩いている姿ほど格好良いものはないと思います。「うちの犬はばっちりトレーニングされているからリーシなし」という言い訳を使うくらいなら、リーシ歩行が完璧に出来るようトレーニングすべきです。また、「うちの犬は誰にも超フレンドリー」と言って、自分の犬を断りもなしに人に近づける飼い主は、犬が怖くて心臓発作を起こしそうな人の気持ちを考えるべきです。他の犬が苦手な犬に、リーシなしの犬が駆け寄って行ったことで、その犬にまた嫌な経験をさせトラウマを与える。大迷惑です。「愛犬に自由をあげたいから」という飼い主は、この世の中は人間のルールで回っていて、犬には危険が一杯。そこで愛犬を守るのは飼い主ということを理解すべきです。
リーシは、飼い主と愛犬のコミュニケーションが図れる大切な道具です。また、リーシは、外に出た際、飼い主が愛犬を守れる一番大事な道具です。それを「命綱」と言っても過言ではないでしょう。どうしてその大切さが理解できないのか? やはり、私には疑問で仕方がありません。
次回は、「対犬タイプ」と題し、犬が同類の犬と接する際の、心理と行動のタイプについてお話します。お楽しみに!
       このサインの真ん前で、毎日オフ・リーシで犬をうろうろさせる飼い主もいる
                   Photo © Maho Teraguchi

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てらぐちまほ:在米28年。かつては人間の専門家を目指し文化人類学を専攻。2001年からキャリアを変え、子供の頃からの夢であった「犬の専門家」に転身。地元のアニマル・シェルターでアダプション・カウンセリングやトレーニングに関わると共に、個人ではDoggie Project(www.doggieproject.com)というビジネスを設立。犬のトレーニングや問題行動解決サービスを提供している。現在はニューヨークからLAに拠点を移し活躍中。ご意見・ご感想は:info@doggieproject.com


2017年3月3日金曜日

第101回「エネルギー」

犬の飼い主さんから相談を受ける際、「飼い主のエネルギーを意識して愛犬と接していますか?」という問いかけを必ずします。なぜなら、犬との暮らしにおいて、飼い主のエネルギーは非常に大切だからです。「エネルギー」という言葉を聞くと、物理的なパワーのみを想像する人が多いですが、エネルギーは、「活力」と「気力」から成り立ち、言葉そのものの概念は「物体が仕事をなし得る能力」を意味します。今回は、飼い主の「活力」と「気力」の両方のエネルギーについてのお話です。

犬選びの鍵

毎日の生活を共にする愛犬を選ぶ時、犬と人間の両者の活力エネルギーのレベルの一致を考慮に入れることは大変重要なポイントです。読書や映画鑑賞が趣味で、もっぱら家に籠るタイプの人に、力溢れ余る犬種との暮らしはストレスです。もちろん犬にとっても同じです。愛犬との活力エネルギーがマッチしていないと、毎日がカオス状態になり、生活全体に大きな悪影響をもたらしかねません。それでも、私は「自分の人生にやってくる犬は意味があって巡り会う」と信じるので、バランスが取れてなければ、取れるようにする。その犬はライフスタイルを変えるために現れたのだ、と思うところもあります。例えば、運動嫌いで不健康な人が、活力一杯の犬と巡り会う。それは健康になるための運命であり、犬が差し出す重要な課題なのだと。しかし、チャレンジが、「エベレスト登頂」のようではハードルが高すぎて挑む気持ちになれません。犬の活力レベルは、やはり無理のない選択をする必要があります。見かけや、流行や、「可哀想だったから」という一時の感情で選んだ結果、けた違いな活力レベルの差で苦しむこともあるので、向こう10年以上の毎日の生活のことを考え、賢く選択しましょう。

気力のダイアル

犬は飼い主の「気力エネルギー」を始終観察しています。また犬は、飼い主の気力エネルギーに大きく影響されます。悲しんでいたら愛犬が慰めてくれたという経験や、そんな話を聞いた人も多いと思います。人間が興奮すると、犬も一緒に興奮します。もし飼い主が情緒不安定なら、愛犬の感情に大きな影響を与え、問題行動につながったり、病気になったりもしかねません。反対に、飼い主の気力エネルギーが常に平静で安定していれば愛犬にも自然に伝わります。一心同体と言っても過言ではないでしょう。
飼い主の気力エネルギーの巧みな使い方は、愛犬とコミュニケーションをとる上での鍵になります。気力のダイアル(飼い主の心の本気度・真剣度)を持っていると想像し、上手にその量の調節をします。いつも上げっ放しでは、いざと言う時の切り札的効果が失われてしまうので、「この時」という時のMAXを把握しておき、切り札に使います。愛犬が飼い主の気力エネルギーに全く反応しなければ、リーダーとしての役目を果たしていないという証明です。気力エネルギーの量とその効果を、試行錯誤しながら発見することで、ダイアル操作が上手に出来てくるようになります。そうして経験を積んでいけば、技ある長けた飼い主になり、愛犬との意思の疎通がうまく出来るようになっていきます。
このように、犬の飼い主として、愛犬と快適な暮らしを続けるためには、「活力」と「気力」が上手く兼ね合った巧みなエネルギーバランスが必要です。そのためには、飼い主は心身の健康を維持することに気を配り、常に上質なエネルギーを発散できるようにしていたいものです。
次回は、「犬ビジネス」と題し、昨今の犬に関するビジネスのあれこれのお話です。お楽しみに!
          「僕もヨガでエネルギーのトレーニングです」。著者の愛犬ノア
                   Photo © Maho Teraguchi
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2017年1月5日木曜日

第99回「愛情の定義」

「愛犬を愛していますか?」という問いかけに、NOという飼い主はいないと思います。きっと誰もが「もちろん愛しています」と言うでしょう。ただ、溢れ余る愛情を存分に注いでいるから、愛犬とは最高の絆が築けている、という方程式が成立していないこともあります。愛は一杯なのに、誰もが羨むような素晴らしい関係になれないのはなぜか? 今回は、「愛情の定義」と題し、飼い主の愛犬への愛情ということを考えてみます。

可愛過ぎて

 「まるで、ぬいぐるみのようで、可愛いくて、可愛いくて、どうしても厳しくなれない…。」「いじらしい顔で見つめられたら、ついつい甘やかしてしまう…。」心当たりがある人がたくさんいるのではないでしょうか。犬を愛していればいるほど、このような気持ちになりがちです。しかし、犬は自分の行動を飼い主が、“いじらしい”とか、“あどけない”と思っていることを知りません。また、自分の見てくれが、飼い主をとろけさせているとも思っていません。飼い主が自分にぞっこんで、「何をしても許される」という概念は犬には謎です。
 愛犬が可愛過ぎるとこんなことも経験あるのではないでしょうか? 食卓の横でおこぼれをじっと待つ愛犬に人間の食べ物をいそいそ与える。自分のことを好きでいてもらうために、大好物のおやつを欲しがるだけあげる。いつも猫撫で声で赤ちゃん扱いをし、優しい飼い主でいようとする。心配で犬のやることなすことを目で、頭で、体で追い回す。何でも先回りして守ろうとする。しかし、そんな毎日では愛犬も息が詰まってしまいます。大切な愛犬の一挙一動が気になったり、何がなんでも守りたいと思ったりするのは、どの飼い主も同じはず。しかし、ルールもけじめもない、やりたい放題の生活や、行き過ぎた過保護は犬にとって本当の意味で幸せでしょうか? 飼い主の過保護で甘やかし過ぎな愛情表現は、幸せへの障害なのです。

犬が犬であることの大切さ

 人間関係でも同じですが、自分本位で気持ちをぶつける愛は、決してバランスのいい関係につながりません。「愛する」ということは、相手を知ること、相手を幸せにするために、必要な時に必要なものを与えられること。相手を理解し、相手を見守れることだと思います。だからと言って相手が欲しいというものを与えまくり、喜ぶからと好むことだけを一生懸命にして尽くすことが、相手を思う愛ではありません。時には、眉間にしわを寄せ、厳しく低い声を出すことも必要。心を鬼にして、渋い顔でぐっと我慢するのも愛情。人間社会の中で生きる犬は、人間に100%依存して生きていかねばなりません。心身の健康を維持するのも、身の安全を守るのも、社会の一員として周りと協調し共存できるようになるのも、人間の力をかりねばなりません。そして、それを叶えてあげるのは飼い主なのです。
 人それぞれ愛の尺度やその表現は違います。また、何が正しい、間違っているというのも人それぞれ違うので、愛犬への愛情を定義するのは難しいことです。しかし、犬を犬と捉えることは、犬を尊敬するということであり、それこそが犬を愛することではないかと信じます。
 次回は、ドギーパラダイス!100号記念特別記事です。お楽しみに!

犬の一生は短い。限りない愛情で育てたい。

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てらぐちまほ:在米28年。かつては人間の専門家を目指し文化人類学を専攻。2001年からキャリアを変え、子供の頃からの夢であった「犬の専門家」に転身。地元のアニマル・シェルターでアダプション・カウンセリングやトレーニングに関わると共に、個人ではDoggie Project(www.doggieproject.com)というビジネスを設立。犬のトレーニングや問題行動解決サービスを提供している。現在はニューヨークからLAに拠点を移し活躍中。ご意見・ご感想は:info@doggieproject.com

2016年10月5日水曜日

第96回「タイミングは命」

「好機逸すべからず」「鉄は熱いうちに打て」などという諺が示すように、私たちの暮らしの中で、今だと思えば即座に事を起こすことが大切な場合があります。物事には、絶妙なタイミングというものがあり、それがきちんと判断出来て、取るべき行動を取るか否かで、明暗を分けてしまいかねません。犬との暮らしの中でも、飼い主が絶妙なタイミングをしっかり理解し、正しく行動が起こせているかで、関係作りが大きく左右します。今回は、犬との生活におけるタイミングの重要性についてお話しします。

物には時節

 私たち人間は、「あの時のことだけど…」と過去に起きたことに対し、相手に謝罪したり、非難したりもします。しかし、その概念が理解し合えるのは人間同士のみで、犬に「あの時の」は通用しません。犬の概念は「全てが今」なのです。過去も未来もなく、今を生きるのが犬。それゆえに、犬とのやりとりは、瞬時しか通用しないということを忘れてはいけません。例えば、留守中に愛犬が悪戯をし、帰宅した際に発見。そこで犬に説教したところで、犬にしたら「お帰りなさいと挨拶したら叱られるの…?」と思います。悪戯は現行犯で正す。でなければ効果がないばかりか、間違ったメッセージを送ってしまうことになります。
 私はレッスンの際にいつも「”スリー・セカンド・ルール”と覚えておきましょう。」と説明します。愛犬の問題行動を正す時は3秒以内に行う。もし、時間が経ちすぎていたら、次に即時に正せる機会を待ちましょう。その方が絶対に効果的です。愛犬の良い行動を褒めるのにもスリー・セカンド・ルールを適用します。と言うのも、飼い主の多くが、即時に正すことは実行出来ても、褒めることを忘れがちだからです。犬にとって飼い主から褒められるということは、大好物のおやつよりも何よりも一番のリワードです。愛犬が自分で考える時間と機会を与えてあげ、問題行動を正したり、良い行いをしたりすれば、飼い主は直ちに褒める。愛犬の行動に対し、瞬時に正して、褒めて。この繰り返しで、犬は「何が間違いで、何が正しい」か、を学んでいくのです。

虫歯と同じ

 冷たい水が沁みる…。虫歯だ…と思ったら歯医者に行く。虫歯は放っておくと、治らないばかりか、どんどん悪化していきます。それと同じで、犬が問題行動を起こし始めたら、放っておいて自然に直るということはありません。しかし、愛犬の問題行動に歯止めが効かなくなったら、多くの飼い主は犬を責めるだけでなく、中には放棄してしまう人もいます。問題の原因のほとんどが飼い主にあり、気がついた時に早期に対処していれば、そこまでいかずに済みます。愛犬が問題行動を示し始めたら、まずは飼い主である自分の行動を振り返り、自分を正す。何をどうしていいか分からない場合は、迷わずに専門家の助けを得ることです。
 早期発見、早期対処。早く手を打っていれば、案外簡単に改善出来ることでも、伸ばし伸ばしにしていたために大変なことになることもあります。今を生きる犬との暮らしにおいて、飼い主も一緒に今を生きることはとても大切なポイントです。
 次回は、「The Sato Project」と題し、プエルトリコの海岸に捨てられた犬達をレスキューし、アメリカに運んで来て、新しい家族を見つける活動をする団体のお話です。お楽しみに!

「ごめんなさい」という表情より、「すごいでしょ!」という顔を引き出したいもの

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てらぐちまほ:在米28年。かつては人間の専門家を目指し文化人類学を専攻。2001年からキャリアを変え、子供の頃からの夢であった「犬の専門家」に転身。地元のアニマル・シェルターでアダプション・カウンセリングやトレーニングに関わると共に、個人ではDoggie Project(www.doggieproject.com)というビジネスを設立。犬のトレーニングや問題行動解決サービスを提供している。現在はニューヨークからLAに拠点を移し活躍中。ご意見・ご感想は:info@doggieproject.com

2016年9月5日月曜日

第95回「飼い主の特典」

今年の7月23日に、全米各地で一斉に「Clear the Shelters!(シェルターを一掃しよう!)」というキャンペーンが行われ、家を失くしたペットに新しい家族を見つける運動が行われました。有力メディアの協力もあって、イベントは大成功。合計4万5000匹以上のペットに新しい家族が見つかったそうです。読者のみなさんの中にも、この夏に犬の飼い主になった人もいるのでは? 犬と暮らすと、良いことが一杯あります。今回は、私が日頃からつくづく感じている「犬の飼い主の特典」についてのお話です。

様々な発見と収穫

犬と暮らし始めると、決まったリズムに安堵を覚える犬の習性に合わせるため生活が規則正しくなります。犬と散歩することで運動量も増えます。散歩は、運動量を増やしてくれるという利点だけでなく、自然の変化から、散歩道の家やお店、建物などの移り変わりまで、今までは気にも留めなかったような様々な発見もあり、日常に新たな刺激を運んでくれます。また、犬を連れていると、色んな人から話しかけられるようになり、さらには、「犬好き」という共通点があれば、人種も、年齢も、性別も、言葉をも超えて、多くの人々と親しくなり、犬談義が弾みます。

生きる糧

犬は、飼い主に「なんとかなるさ! 大丈夫。」と思わせてくれる魔法を持っています。何か大変な問題があっても、どんなに心身が疲れていても、何も知らない愛犬の無邪気で健気な姿を見れば全てが吹き飛ばされます。そんな愛おしい愛犬を死ぬまで大事にしようという気持ちがどんどん湧き、人生に張りができ、生きる糧が生まれてきます。愛犬を守るために、一生懸命仕事をしよう。自分自身も怪我や病気をしないよう、健康に十分注意しようという責任感が生まれます。実家の父がいい例です。年老いてからパピーと暮らし始めた頃は、「この子を看取るのは無理だろう…」とそんな寂しい言葉をよく発していました。しかし、責任感の強い父は愛情一杯でパピーを育てました。そのパピーは去年16歳で大往生するまで年老いた父と母に生き甲斐を与えてくれたのでした。

犬に育てられる自分

愛犬家から「うちの犬が人間の言葉を話してくれたらどんなに嬉しいか…」と言う願いをよく耳にします。そう思うところもありますが、実は私は犬との会話が人間の言葉に頼らないところがとても好きです。犬は「犬語」で、人間は「人語」でそれぞれ自己表現するのですが、相手のことに精通していれば「共通語」を話さなくてもしっかり意志の疎通が出来ます。ただ、そこに至るためには、飼い主は、犬という動物を熟知し、愛犬から終始発せられるメッセージをきちんと理解し、お互いを分かり合わなければいけません。忍耐なくては成就できない業、これは子育てスキルと全く同じです。そして、この犬の親業の過程で得るものは、人生の色んな側面で大いに役立つわけです。
人間に生活を100%依存する犬を育てる時、自分自身が本当に大きく成長します。犬を育てながら、自分が犬に育てられる。それは、犬の飼い主の真の特典だと信じます。
次回は、「タイミングは命」と題し、犬とのコミュニケーションにおいてのタイミングの重要性のお話です。お楽しみに!

足並み揃え、愛犬と一生に成長する

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てらぐちまほ:在米28年。かつては人間の専門家を目指し文化人類学を専攻。2001年からキャリアを変え、子供の頃からの夢であった「犬の専門家」に転身。地元のアニマル・シェルターでアダプション・カウンセリングやトレーニングに関わると共に、個人ではDoggie Project(www.doggieproject.com)というビジネスを設立。犬のトレーニングや問題行動解決サービスを提供している。現在はニューヨークからLAに拠点を移し活躍中。ご意見・ご感想は:info@doggieproject.com

2016年8月5日金曜日

第94回「容姿の落とし穴」

「犬のどんなところが好きですか?」という質問に、「飼い主がどんなに不格好でも、全く見かけで判断しないところ」と答える人が多くいます。確かに犬は、容姿どころか、社会的な地位も、学歴も、財産の有無も全く関係なく、大切に育ててくれる飼い主には手放しで愛情を注ぎます。反対に人間は、犬の気質より容姿重視な人の方が多いのではないでしょうか。今回は、見た目に囚われやすい人間と、見た目は関係ない犬との間のギャップについての話です。

好みの顔

 以前非常に驚いた話を聞きました。超好みな顔の犬の写真をネットで見つけ、その顔の犬が欲しくてたまらなくなり、その犬種の中でも「その顔」を扱うブリーダーが外国にいるのを発見。自ら飛行機で現地に出向き犬を購入してきた人がいた、と。ぬいぐるみのような愛くるしいその特別な顔の犬という「容姿」が大事で、飼うと決めたわけですから、その犬の気質がどうであってもさほど関係なかったのでしょう。
 可愛い・かっこいい容姿を持つ犬への人気は今に始まったことではありませんが、最近巷では変顔や変な体形の犬が流行り、それが異質であればあるほど好まれ、大金をはたいて買い求める人がいます。「これはお金になる!」と、奇形犬の改良に勤しむブリーダーもたくさんいます。言うまでもなく、人間が不自然に作り出した奇形犬は、心身に色々な問題を併発し、一生病気と闘ったり、早死にしたりすることも珍しくありません。

好みの判断材料

 犬同士が相手を判断する際、「ぬいぐるみのようで可愛いから」とか、「リボンが似合う」とか、「ハンサム!」「かっこいい~」などの見かけを材料にしません。犬は相手のエネルギーや、社会性の有無などで合う、合わない、好き嫌いを決めます。その判断基準は人間に対しても同じで、人間の持つエネルギーや、飼い主として犬のリーダーになれる素質を持っているか、また自分を理解してくれるかなどを重要視し、好き嫌いを決めます。人間の体のサイズや性別、人種を読む犬も、美貌や高級な服装は全く関係ありません。
 小さいぬいぐるみのような犬を「か弱く、おもちゃみたい」と思うのは人間だけで、もしその犬の気質が大変激しく攻撃的であれば、犬同士では迷惑がられる存在になり、またリーダーの素質があるなら、大型犬も引っ張って行きます。しかし、人間は小さい愛玩犬に対しては、どうしてもその容姿から赤ちゃん視してしまい、問題行動を起こしていても「あらあら、どうちたの?」と赤ちゃんをなだめるように、大目に見て甘やかしがちになります。すると犬は、人間は無条件で特権をくれると誤解します。かわいい~と言っても犬自身は人間がなぜ喜んでちやほやするのか理解できず、優越感で一杯になり、手に負えない犬に育ってしまうこともあります。また、容姿重視で犬を選択すると、犬との暮らしが全く予想していなかった展開になることも少なくないので要注意。
 もちろん見かけも大事ですが、見かけばかりにこだわり、内面の美しさを見逃すのは悲しいことです。これは人間関係でも言えることですね。飼い主が犬の容姿をこえて、その犬の本質を理解し愛する時、飼い主と犬の間に「本当の関係」が成立するのです。容姿で犬の良し悪しを判断したり、流行りを作ったりするのではなく、容姿以外の犬の良さがわかる人間が増えてほしいと願うばかりです。
 次回は、「犬の飼い主の特典」と題し、犬と暮らすことで得るものについてのお話です。お楽しみに!

見た目で「可愛い~」と思うのは人間だけ

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てらぐちまほ:在米27年。かつては人間の専門家を目指し文化人類学を専攻。2001年からキャリアを変え、子供の頃からの夢であった「犬の専門家」に転身。地元のアニマル・シェルターでアダプション・カウンセリングやトレーニングに関わると共に、個人ではDoggie Project(www.doggieproject.com)というビジネスを設立。犬のトレーニングや問題行動解決サービスを提供している。現在はニューヨークからLAに拠点を移し活躍中。ご意見・ご感想は:info@doggieproject.com

2016年7月5日火曜日

第93回「噛む犬・噛ませる人間」

私は今まで犬に噛まれたことがありません。愛犬とだけの生活ならそんな人は珍しくないと思います。しかし、私の場合、仕事柄携わってきた犬の数は数千頭か、それ以上。それでも噛まれた経験がないのは、犬に噛ませないようにしてきたからです。今回は、噛む犬と、その裏にいる噛ませる人間についてのお話です。

「やめてください!」

 愛犬ジュリエットがまだ元気だった頃の話です。友達家族とBBQをした時、いつもジュリエットを可愛がってくれる男の子が、その夜は執拗にジュリエットを追い回し、べたべた体を触っていました。疲れていたジュリエットは必死で避けながら、私に一生懸命目配りをして助けを求めていました。しかし、大人たちは話に夢中。ついつい放っていたその時、ジュリエットが男の子の頬を鼻で突きました。びっくりした男の子は大泣き。ジュリエットはしっぽを丸め震えていました。幸い、鼻で突く程度だったので男の子が傷付くことはなかったのですが、がぶっと噛んでいたら一大事でした。ジュリエットは私に思い切り叱られましたが、ここで一番悪かったのは飼い主の私です。ジュリエットが必死でSOSを出していたのに仲介しなかったために、彼女は自分で何とかしようと、鼻で突く動作で表現したのです。私は自分の罪を深く反省し、二度と愛犬が「やめてください!」という気持ちを、噛むなどの行動に出させないようにしなければ、と心に誓いました。
 犬は不快を感じる時、色んな形で意思表示をします。しかし、それらを見逃してしまうと、犬は噛むという行動に出ることもあります。人を噛んでしまうと、「噛まれた人間」と「噛んだ犬」という二つの被害者を作り出してしまいます。なぜなら、人を噛んだ犬は「悪い犬」というレッテルを貼られてしまい、最悪のケースは殺処分に至ることもあるからです。

犬を知る・犬を読む

 シェルターで勤務していた時は、噛まれても不思議ではないほど精神的にぎりぎり状態の犬を毎日扱っていました。そんな犬達に噛まれないためには、まず、彼らの「やめてください!」という理由と表現を理解する必要がありました。そして、こちらには敵意もないが、犬のことを恐いとも思ってないことを示し、どうしたら彼らから信頼を得て、安心を与えられるかということだけを考えました。助けたいという気持ちを誠心誠意で伝え、噛ませないようにしました。
 犬は理由なく人を噛みません。その理由の多くは、恐怖やストレスや欲求不満からくるものです。触られるのが嫌い、または人間が苦手なのに、上から手を出し、頭を撫でられた犬は恐怖でストレスを感じます。スペースをくれとサインを送っても人間が無視すれば、犬はどうしていいか困惑します。庭で一日中繋がれたままや、家から外に出たことがない犬は欲求不満で一杯です。そして、それらのストレス発散法を「噛む」という形に移すことも多いのです。犬が人を噛まないためには、犬がフラストレーションを溜めたり、恐怖感やひどいストレスを感じたりするような機会を作らないことです。犬は人間に説明も弁護もできません。正当防衛で人を噛んでも、「噛む=悪い犬」になります。犬と平和に共存するには、人間が、犬の習性や本能をしっかり学ぶ。犬をもっとリスペクトする。それが、犬と人間の快適な暮らしへのカギなのです。
 次回は、「容姿の落とし穴」と題し、見た目に囚われやすい人間と、見た目は関係ない犬との間のギャップについての話です。お楽しみに!

事故のないよう、大人が責任を持って子供と犬を監督する

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てらぐちまほ:在米27年。かつては人間の専門家を目指し文化人類学を専攻。2001年からキャリアを変え、子供の頃からの夢であった「犬の専門家」に転身。地元のアニマル・シェルターでアダプション・カウンセリングやトレーニングに関わると共に、個人ではDoggie Project(www.doggieproject.com)というビジネスを設立。犬のトレーニングや問題行動解決サービスを提供している。現在はニューヨークからLAに拠点を移し活躍中。ご意見・ご感想は:info@doggieproject.com

2016年4月1日金曜日

第90回「暮らしやすい犬」

世の中にパーフェクトな人間などいないというのは私の持論ですが、パーフェクトな犬はいると思います。しかし、いくら親ばかな私でも、我が愛犬ノアをパーフェクトな犬とは思っていませんが、ノアは大変「暮らしやすい犬」で、彼を一言で表現する時にその言葉が一番に浮かびます。今回は、愛犬ノアが一番誇れる「暮らしやすさ」についてのお話です。

番犬にならない…

 ニューヨークにいた時も、LAに越して来てからも、よくご近所さんに「ノア家にいるの?」と聞かれます。ノアがいつも静かなので不思議なようです。基本的に、私は愛犬を家の中で走り回らせたり、遊んで暴れたりさせません。体の運動は外、家は静かにくつろぐ場、または頭の体操だけの場としています。家に遊びに来る人たちが、ノアが家で静かなので面白くないと言うこともありますが、お客さんが来た時だけOKという理屈は犬に通じないし、混乱させるのが嫌で、極力基本ルールは守らせるという考えです。また、愛犬が家の中で収拾がつかないほどやんちゃでは毎日の生活が大変です。愛犬が家でリラックスしていれば、自分の生活も楽になり、相互効果になります。
 ノアが静かなのは、彼が年に1-2度しか吠えないからでもあります。そういう意味では番犬にならないのですが、それよりも、住宅が密集した都会生活をする上で、近所に迷惑をかけることがなく、大変助かっています。
 また、毎日のルーティンを把握しているので、その通りに行動してくれるのも楽です。ノアは留守番が大得意で、後追いして吠えたり泣いたりは一切せず、また留守中に家の中で悪戯もしません。トイレも絶対に外なので、一度も家を汚したことがありません。そのお陰で、一日家を空けている私は安心して外で頑張れるわけです。
 またノアは人を恐れないので、どんな人間に対しても友好的に接することができ、小さい子供でも安心してそばにいさせられるのは大利点です。

社会化・社会性

 上記からもわかるように、「暮らしやすい犬」という条件は「社会性があるか、社会化されているか」に関わってきます。私は、常日頃から「愛犬に一番養わせてほしい要素は社会性」と説いていますが、人間社会の一員であるペット犬は、社会性が有るか無いかで、一緒に暮らしやすいかどうかの差がうんと変わります。シェルターにいた時にも、社会性が有る無いで新しい家が見つかる確率の差がかなりありました。

努力が実を結ぶ

 もちろん「暮らしやすい犬」の陰で、飼い主の努力がないわけではありません。毎日の十分な運動と遊び、さらに頭の刺激を提供し、栄養が行き届いた食事を与え、健康管理を怠らず、良し悪しをきちんと教え、飼い主との上下関係をきちんと築く。また、飼い主の私が常に心身共にバランスの取れた健康状態でいることを心掛けています。愛犬が常に安心感を持てる環境を提供するのは、飼い主の器量です。しかし、これは普通の飼い主が普通にすべきことで、これらを楽しんでできないと、犬との暮らしは窮屈なはず。こういうことを「普通」と思え、楽しめたら「暮らしやすい犬」が育ち、そんな犬との楽しい生活ができるのだと思います。私の場合、ノアのDNAがよかったラッキーな飼い主ですが、愛犬との間で意思疎通がよくでき、以心伝心の関係まで持っていけたら「暮らしやすい犬」との生活に辿り着くのだと思います。
 次回は、『The Champions』というドキュメンタリー映画についてお話します。お楽しみに!
寝るのが仕事
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てらぐちまほ:在米27年。かつては人間の専門家を目指し文化人類学を専攻。2001年からキャリアを変え、子供の頃からの夢であった「犬の専門家」に転身。地元のアニマル・シェルターでアダプション・カウンセリングやトレーニングに関わると共に、個人ではDoggie Project(www.doggieproject.com)というビジネスを設立。犬のトレーニングや問題行動解決サービスを提供している。現在はニューヨークからLAに拠点を移し活躍中。ご意見・ご感想は:info@doggieproject.com

2016年3月4日金曜日

第89回「リーシ嫌い」

やっかいな犬の飼い主によく出くわします。自分の犬の糞の後始末をせず、平気な顔でその場を立ち去る飼い主はその一例。前にお話した愛犬の異常吠えを何もせず、放ったらかしにして近所に迷惑をかけている飼い主も一例。しかし、個人的にもっと迷惑でやっかいだと思うのは、散歩時にリーシを使わない飼い主です。今回は、リーシ嫌いな犬ではなく、リーシ嫌いな人間についてお話します。

法律違反


私が今までに住んできた町にはかならず「Leash Laws」がありました。Leash Lawsとは、犬の飼い主に対して、自分の犬を常にコントロールできる状態にすることを義務づけた法律です。具体的には、散歩に出かけたり、公共の場や犬の出入りが認められている私有地に入ったりする場合は、6フィート以内のリーシを用いて、自分の犬の行動を抑制しなければならないという飼い主の責任です。要するに、犬の飼い主に自分の犬も周りも守りなさいというものです。
 
犬好きが陥りがちな悪い癖は、世の中の人間全てが犬好きと思いこんでしまうこと。しかし、世の中には犬が嫌い、怖いと思う人もたくさんいます。また、同類の犬が苦手な犬も多くいるのです。リーシなしの犬に突然近寄ってこられたら、たとえそれがフレンドリーな行為だったとしても、受ける側がパニックになることも多いです。それが少々攻撃的だとしたら、犬同士の場合けんかにつながることも。リーシをしていれば引き離せても、オフの場合は引き離すのが大変困難です。また、オフの犬がジョギングやサイクリングしている人を追いかけている光景を見ることがありますが、追いかけられた方はたまったものではありません。
愛犬を守れるのは飼い主
愛犬は何が何でも自分が守るという信念を持つ私にとって、愛犬をリーシなしで外に出したり、散歩したりする飼い主の気持ちはどうしても理解できません。近所に、玄関の戸を開けて飼い犬2匹をリーシなしで放ち、自分はパジャマ姿のまま戸口で待っている人がいます。犬たちは戸が開いた途端、クモの子を散らすように去って行きます。糞の始末は誰がしているのでしょうか? 誘拐されたり、交通事故にあったりという心配が頭をよぎらないのかと不思議です。知り合いが、リーシなしにしていた愛犬が目の前で車に轢かれ即死したことを「馬鹿な犬」と言っていました。罪の意識を隠す気持ちの表現かもしれませんが、犬が馬鹿だったのでしょうか?
親子が歩く姿
犬と飼い主のリーシ歩行は「人間の親子が手をつないで道を歩いている姿」と同じようなものだと、レッスンの際いつも説明しています。親の手を振りほどいて勝手にどんどん先を歩く子供。駄々をこねて暴れ、半分引きずられるように歩く子供。または、親の手をしっかり握り、時々顔を見上げてはまた前を見て歩く子供。どれが理想の図と思いますか? 犬と飼い主をつなぐリーシは、親子が握る手と手なのです。そして、それは「命綱」でもあるのです。6フィートのリーシで、飼い主は愛犬の安全を確保し、守る。また、あのリーシを使って社会を、自分たちの位置を教え、絆を深めるのです。そんな大切な用具であるリーシをちゃんと使えるようになり、道を歩く姿に誰もが微笑ましい気持ちになる愛犬と飼い主を目指したいものです。
 
次回は、「暮らしやすい犬」と題し、うちの愛犬ノアが一番誇れる部分についての話です。お楽しみに!

親子の散歩姿。愛犬との散歩もこうでありたい

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てらぐちまほ:在米27年。かつては人間の専門家を目指し文化人類学を専攻。2001年からキャリアを変え、子供の頃からの夢であった「犬の専門家」に転身。地元のアニマル・シェルターでアダプション・カウンセリングやトレーニングに関わると共に、個人ではDoggie Project(www.doggieproject.com)というビジネスを設立。犬のトレーニングや問題行動解決サービスを提供している。現在はニューヨークからLAに拠点を移し活躍中。ご意見・ご感想は:info@doggieproject.com

2015年10月5日月曜日

第85回「飼い主の期待」

親なら子供が生まれた時、その子にさまざまな期待を託すでしょう。「頭のいい子になりますよう」「大物になってほしい!」「優しい子になってください」など。同様に、犬の飼い主も愛犬にさまざまな期待を抱いているのでは?今回は、「飼い主の期待」と題し、自分の懺悔的経験を基に、飼い主の期待がもたらす愛犬との関係についてをお話します。

余裕ができたら

やっと犬を飼うことを決意し迎え入れたジュリエット。そんな彼女との暮らしは、どちらかと言うと無我夢中で、彼女に対してあれこれ期待を持ったという記憶はありません。というのも、ジュリエットは私と出会う前は、人間から拷問、虐待を受ける生活で、飼い主から社会性を学ぶ機会や、十分な運動、また愛情さえも与えられたことなし。期待を抱くより、普通に楽しく暮らせればそれでいい、という気持ちが一番でした。ところが、現在の愛犬ノアをアダプトした頃は、自分に「犬と暮らす」という点で余裕があったために、その頃成長期真っ盛りの彼への期待が、それはそれはたくさんありました。

実はノアと出会う数年前に、その当時通っていたアニマル・シェルターで、「これぞ理想の犬!」という犬を見つけました。当時は高齢のジュリエットとの二人暮らし。残念ながら、どう頑張ってもジュリエットより一回り大きいエネルギー溢れる若い雄犬を迎え入れることは無理でした。しかし、それからも私の頭の中には偶像化したその犬のことが頭の片隅にありました。

何か違う

その理想犬は、なんとも自信に満ち溢れた犬でした。といって他者に恐怖感を与えるようなことはまったくなく超社交的なのですが、実に堂々としていました。だから私は、容姿の似たノアを同じような性質だと勝手に思い込んで、自信に満ちた犬になるのだろうと、大きな期待を抱いていたのです。それもそのはず。うちに来る前に付けられていた名前は「マッチョ(逞しい男)」でした。しかし、実はノアはアメリカで言うなら「チキン」そのもの。体は大きいのに、気の小さい弱心者。ビビリ光線を発しまくるので、いじめるタイプの犬たちに何度も襲われています。私の中で「何かが違う」というギャップを感じていたのは確かです。にも関わらず、勝手に自分の枠に入れようとしていました。しかし、ノアはノア。私の期待に沿えないことは沿えないと、彼なりの意思表示や反発をし、しばらくはちぐはぐな関係が続きました。そのうち、私が「本当のノア」を見ることができ、彼のそのままを受け入れ、それを彼の長所と愛し始めたら、ノアとの関係はぐっと接近しました。

ノアは、牙を剥くことも、唸ることもしません。嫌なら逃げるか観念する。そんなノアですから、赤ちゃんでも、外で初めて会う人でも安心して遊ばせることができます。臆病だけど、ひょうきんで人懐っこいノア。彼のすべてが理解できる今は、以心伝心で何でも分かり合える関係になりました。相手に色々期待を抱くのも愛情のしるし。しかし、現実とのギャップと真っ直ぐ向き合うことが、飼い主の真の愛の証明ではないでしょうか。

*今号で執筆5年になりました。いつもご愛読ありがとうございます。これからも引き続き宜しくお願いします。次回は、「CAビーチ事情」と題し、カリフォルニアのビーチと犬についての話です。お楽しみに!



お互いの長所も短所も全部把握し合った仲に

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てらぐちまほ:在米27年。かつては人間の専門家を目指し文化人類学を専攻。2001年からキャリアを変え、子供の頃からの夢であった「犬の専門家」に転身。地元のアニマル・シェルターでアダプション・カウンセリングやトレーニングに関わると共に、個人ではDoggie Project(www.doggieproject.com)というビジネスを設立。犬のトレーニングや問題行動解決サービスを提供している。現在はニューヨークからLAに拠点を移し活躍中。ご意見・ご感想は:info@doggieproject.com

2015年8月5日水曜日

第83回「嫌われたくない飼い主」

日本の我が家は、6人家族プラス犬一匹でした。6人もいると「愛犬が誰を一番好きか」という競争になります。一番好かれていると自信たっぷりだったのは長姉。愛犬プルートは、長姉を見ると、尻尾ふりふり大喜びです。それもそのはず、彼女はプルートに対して、厳しい顔を見せたり、しつけに関わったりしたことはなし。そんな局面に立つと、誰かに「叱って〜」「なんとかして〜」と逃げの構えで、自ら立ち向かわず、常に優しい飼い主としての立場を守っていました。しかし、長姉が我が家の愛犬といい関係を築いていたか? となると疑問です。今回は、「愛犬に好かれたい」と願うばかりに取っている、飼い主の間違った行動についてお話しします。

甘やかしのディスペンサー

愛犬がそばにいてくれるだけで私は幸せだから、溢れんばかりの感謝の気持ちを込めて、贅沢三昧、やりたいようにさせている。あのまん丸でつぶらな瞳で見つめられたら、なんでもハイハイと愛犬の大好きなトリートをあげたり、自分の食事まで寛大に分け与えたりもする。犬の大好きなトリートを使って気を惹こうと必死な飼い主もいます。

「駄目!」と叱った時に見せる、あの悲しそうな顔を見るとなんとも可哀相で、どうしてもしつけられない、また、愛犬の間違った行動を正すと、犬に「嫌な人間だ」と思われるとか、やりたいようにしている行動をコントロールするのは「意地悪」と捉えてしまう人もいます。「愛犬に嫌われたくないから」と、犬のしたいようにさせていると心当たりがある人はいませんか?

犬と上手な関係を作れる人は、犬の気を惹こうと一生懸命媚びたりしません。なぜなら、犬と関係を築くために、人間が媚びる必要がないからです。異常に好かれようと努力しても、犬は信用できない人は分かります。反対に、犬が「この人!」と思えば、必ず犬の方から愛情表現を示してきます。

Tough Love

私が学校の教師をしていた時に、子供たちに「私たちが悪いことをしていたらもっと厳しく叱ってください」と言われたことがありました。正直、驚きましたが、子供たちがそこまで上からのガイダンスの必要性を感じていることに感動したものです。まさか犬が「問題行動していたら、きちんとしつけてください」と催促してくることはありませんが、即時に「正す」「褒める」の繰り返しで、きちんとしたガイダンスを提供すれば、どんどん犬が飼い主を信頼するようになり、尊敬できる存在として接してくるのです。

本当の意味の愛犬への愛情とは、いつでも、どんな時でも安心し、ついていける飼い主がそばにいてあげること。信頼され、尊敬される飼い主であること。そう思われるためには、犬に不可欠な質と量の運動を提供し、犬が立派な社会の一員となるためのしつけをし、そして、健康管理をすること。それこそが、愛犬をこよなく愛しているということではないかと思います。そうなって初めて、犬は「この人!」と感じ、飼い主は本当の意味で犬から愛されるのです。

次回は、「動物病院にて」と題し、獣医師やグルーマーなど、犬の専門家たちが困っていることについてお話しします。お楽しみに!

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てらぐちまほ:在米27年。かつては人間の専門家を目指し文化人類学を専攻。2001年からキャリアを変え、子供の頃からの夢であった「犬の専門家」に転身。地元のアニマル・シェルターでアダプション・カウンセリングやトレーニングに関わると共に、個人ではDoggie Project(www.doggieproject.com)というビジネスを設立。犬のトレーニングや問題行動解決サービスを提供している。現在はニューヨークからLAに拠点を移し活躍中。ご意見・ご感想は:info@doggieproject.com



2014年10月5日日曜日

第73回「愛犬との関係」

こんなに愛情を注いでいるのになぜか愛犬はつれない態度で関係がちぐはぐ…と困惑状態の飼い主さん数人に出会う機会が続きました。切なく淋しい話です。また近所にはあれやこれや飾り立て、べた可愛がりで自慢の愛犬のはずが、犬のマナーが悪過ぎて近所で悪評をかい、落胆している飼い主が結構います。飼い主につれない態度の犬も、行儀が悪過ぎて嫌われる犬も、犬は犬なりに自己表現をしているわけで、「愛犬が必要とするもの」と「飼い主が良かれと思って提供しているもの」の間にギャップがあるために起こる現象です。同じ時間とエネルギーを使うなら周りに好感をもってもらえる犬に育て、愛犬と相思相愛な関係を築きたいものです。今回は、愛犬と飼い主の関係についてお話します。

愛情の小出し

初めて会う犬にやたらとこびるように接する人をよく見かけます。しかし、犬の反応はいまいちで、挙げ句の果てには「この犬フレンドリーではないですね」などと失望気味のコメント。それは犬のせいではなく、犬だって人に打ち解ける・信頼する・愛情を抱く時間が必要なのです。また、犬にもそれぞれ個性があります。初対面の犬とはあまり大袈裟な表現で接近したり、注意を引こうと一生懸命にならず、自然体で冷静にしていると興味のある犬は必ず近寄って来て調査します。恋の駆け引きではありませんが、Playing hard to get(もったいをつける)のような接し方の方が犬には楽なのです。

飼い主と愛犬の間でも、やたらにかまい過ぎ、注意を引こうとし過ぎで、飼い主がこびているような態度は犬に重さを感じさせてしまい、スペースを欲しがったり、信頼感を失わせたり、また飼い主の存在への価値を落としかねません。限りない愛情を小出しにして接する方が(特に最初は)スムーズな関係作りにつながることがあります。

「幸せな犬」論

Man's best friend(人間の親友)という有名なフレーズがあるように、巷には愛犬を親友と捉え、そういう関係作りをしている人もたくさんいます。しかし、私個人は、犬と飼い主の関係は親子関係だと考えます。なぜなら、犬は生活のすべてを人間に依存し、飼い主は100%の責任をもたされているからです。私の考える「幸せな犬」論は、犬を擬人化せず、犬の習性を理解し、犬の視点にたって飼い主の責任を果たしてくれる人間と一緒に暮らしている犬。また、犬の個性を客観的に見られる飼い主と暮らす犬。この持論を周りにも、また自らにも説いています。言うは易し、行うは難しかもしれませんが、「愛するもの=犬」を勉強し理解することが真の関係作りにつながると信じます。

愛犬との関係が親友であれ、親子関係であれ、飼い主として一番大切なことは、愛犬を責任をもって飼い遂げ、最期を看取ってあげることです。愛犬の命を最初から最後まで引き受けてこそ、本当に素晴らしい関係を全うしたと言えるのではないでしょうか。当たり前のように聞こえますが、世の中にはそれを全うできない飼い主が本当に多いので、飼い主として再度心に刻みたいことです。そのためには飼い主自身がくれぐれも自分の健康管理を怠らないことが大
切です。

次回は、「周りの人との関係」というテーマで犬を飼うことで出てくる人間関係について詳しくお話します。お楽しみに!


愛犬ノアと「一心同体」の関係でいるのが日頃からの目標

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てらぐちまほ:在米26年。かつては人間の専門家を目指し文化人類学を専攻。2001年からキャリアを変え、子供の頃からの夢であった「犬の専門家」に転身。地元のアニマル・シェルターでアダプション・カウンセリングやトレーニングに関わると共に、個人ではDoggie Project (www.doggieproject.com)というビジネスを設立。犬のトレーニングや問題行動解決サービスを提供している。愛犬ジュリエットが他界した今は、ニューヨークに移転して新入り犬ノアと活躍中。ご意見・ご感想は:info@doggieproject.com