2014年10月5日日曜日

第73回「愛犬との関係」

こんなに愛情を注いでいるのになぜか愛犬はつれない態度で関係がちぐはぐ…と困惑状態の飼い主さん数人に出会う機会が続きました。切なく淋しい話です。また近所にはあれやこれや飾り立て、べた可愛がりで自慢の愛犬のはずが、犬のマナーが悪過ぎて近所で悪評をかい、落胆している飼い主が結構います。飼い主につれない態度の犬も、行儀が悪過ぎて嫌われる犬も、犬は犬なりに自己表現をしているわけで、「愛犬が必要とするもの」と「飼い主が良かれと思って提供しているもの」の間にギャップがあるために起こる現象です。同じ時間とエネルギーを使うなら周りに好感をもってもらえる犬に育て、愛犬と相思相愛な関係を築きたいものです。今回は、愛犬と飼い主の関係についてお話します。

愛情の小出し

初めて会う犬にやたらとこびるように接する人をよく見かけます。しかし、犬の反応はいまいちで、挙げ句の果てには「この犬フレンドリーではないですね」などと失望気味のコメント。それは犬のせいではなく、犬だって人に打ち解ける・信頼する・愛情を抱く時間が必要なのです。また、犬にもそれぞれ個性があります。初対面の犬とはあまり大袈裟な表現で接近したり、注意を引こうと一生懸命にならず、自然体で冷静にしていると興味のある犬は必ず近寄って来て調査します。恋の駆け引きではありませんが、Playing hard to get(もったいをつける)のような接し方の方が犬には楽なのです。

飼い主と愛犬の間でも、やたらにかまい過ぎ、注意を引こうとし過ぎで、飼い主がこびているような態度は犬に重さを感じさせてしまい、スペースを欲しがったり、信頼感を失わせたり、また飼い主の存在への価値を落としかねません。限りない愛情を小出しにして接する方が(特に最初は)スムーズな関係作りにつながることがあります。

「幸せな犬」論

Man's best friend(人間の親友)という有名なフレーズがあるように、巷には愛犬を親友と捉え、そういう関係作りをしている人もたくさんいます。しかし、私個人は、犬と飼い主の関係は親子関係だと考えます。なぜなら、犬は生活のすべてを人間に依存し、飼い主は100%の責任をもたされているからです。私の考える「幸せな犬」論は、犬を擬人化せず、犬の習性を理解し、犬の視点にたって飼い主の責任を果たしてくれる人間と一緒に暮らしている犬。また、犬の個性を客観的に見られる飼い主と暮らす犬。この持論を周りにも、また自らにも説いています。言うは易し、行うは難しかもしれませんが、「愛するもの=犬」を勉強し理解することが真の関係作りにつながると信じます。

愛犬との関係が親友であれ、親子関係であれ、飼い主として一番大切なことは、愛犬を責任をもって飼い遂げ、最期を看取ってあげることです。愛犬の命を最初から最後まで引き受けてこそ、本当に素晴らしい関係を全うしたと言えるのではないでしょうか。当たり前のように聞こえますが、世の中にはそれを全うできない飼い主が本当に多いので、飼い主として再度心に刻みたいことです。そのためには飼い主自身がくれぐれも自分の健康管理を怠らないことが大
切です。

次回は、「周りの人との関係」というテーマで犬を飼うことで出てくる人間関係について詳しくお話します。お楽しみに!


愛犬ノアと「一心同体」の関係でいるのが日頃からの目標

*****

てらぐちまほ:在米26年。かつては人間の専門家を目指し文化人類学を専攻。2001年からキャリアを変え、子供の頃からの夢であった「犬の専門家」に転身。地元のアニマル・シェルターでアダプション・カウンセリングやトレーニングに関わると共に、個人ではDoggie Project (www.doggieproject.com)というビジネスを設立。犬のトレーニングや問題行動解決サービスを提供している。愛犬ジュリエットが他界した今は、ニューヨークに移転して新入り犬ノアと活躍中。ご意見・ご感想は:info@doggieproject.com