ラベル 老犬との生活 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 老犬との生活 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2017年8月5日土曜日

第106回「Dementia(認知症)」

 愛犬ジュリエットが13歳を超えた頃から、「おかしな行動」を見せるようになりました。部屋の隅で何にもないところをずっと見つめていたり、キャビネットの扉を開けっ放しにしていると、その中に頭を突っ込んで必死で中に入ろうとしたり…。椅子やテーブルの脚など、狭くて通れないようなところに無理矢理入り込みたがり、最後には出られなくなってあがいたり…。どれも脳の老化からくる症状でした。家庭犬の寿命が延びた昨今、多くの飼い主が、愛犬の示す様々な老化現象を経験しています。今回は、犬の老化現象の中のDementia(認知症)のお話です。

主な症状

 日本の実家で飼っていた犬、プルートも長寿だったゆえ、老後になってからはおかしな行動を良く見せていました。例えば、ご飯を食べた直後に、台所に立つ母に即座にご飯をおねだり。それも、全然食べさせてもらっていないような悲壮な声で要求していました。「今食べたところ」ということが理解出来なくなってしまっていたのだと思います。
 犬の認知症で良く見られる症状としては、①徘徊(意味もなくぐるぐる回り続ける)、②夜中の遠吠えや泣き続け、③頻尿やお漏らし、④異常な食欲、⑤理解力の低下によるおかしな行動、などがあります。
 愛犬ジュリエットが高齢になった時、幸いにも、昼夜の逆転による夜中の徘徊や、泣き続けはありませんでした。しかし、同じところを円を描いてクルクル歩き回る老犬の話はよく聞きます。止めるとフラストレーションになるので、安全に歩き回れるように工夫して、させてあげる方が無難でしょう。夜中に泣き続けるのは、近所にも飼い主にもストレスです。なるべく夜熟睡出来るように、昼の間に脳にも体にも刺激を与えてあげましょう。ジュリエットは頻尿・お漏らしがあったので、赤ちゃんのおむつを使ったり、頻繁に外に出したりしてしのぎました。しかし最後の数カ月は、毎夜中、むくっと起きるのを察したら、抱き上げて外に出していました。

予防と対策

 ただでさえ人間よりうんと速く歳を取る犬なので、認知症の症状が出始めたらどんどん加速します。原因追究や、治療法発見はまだまだこれからの段階ですが、しかし、老齢になる前から栄養管理や心身に刺激を与えることで予防につながります。いざ発病しても、飼い主の努力で進行を遅くすることも出来るので、シニア期に入ったら、信頼出来る獣医師に犬の認知症について相談してみるのも良いと思います。
 これらの犬の認知症の行動は「赤ちゃん返り」に見えますが、実は本人(本犬)はちゃんと大人の気持ちも持ったままでいます。飼い主は、それを念頭に置き、愛犬の自尊心を傷つけないように、恥をかかせないように対応するのが大切。犬も自分の心身の変化に戸惑い、困っているので、飼い主はそんな愛犬の行動を絶対に「変」扱いせずに、また異常に落ち込んで悲しがったり、まごついたりせず、極力いつも通りに接しながら、犬には必要なだけの時間をかけさせてあげること。そして、横でしっかり支えてあげることだと思います。このステージの愛犬との関係は、愛のみ。それに尽きます。そして、一心同体で老化に寄り添って乗り越える体験は、飼い主と愛犬との永遠の絆になります。
 次回は、「問題児と犬」と題し、問題行動を起こす子供たちが犬と接したり、訓練したりするうちに自らの更生につながっていくお話です。お楽しみに!
                ジュリエットの認知症が始まった頃。   
              こんな姿勢でじっとしているのを見かけるように
                  Photo © Maho Teraguchi    
**********

てらぐちまほ:在米28年。かつては人間の専門家を目指し文化人類学を専攻。2001年からキャリアを変え、子供の頃からの夢であった「犬の専門家」に転身。地元のアニマル・シェルターでアダプション・カウンセリングやトレーニングに関わると共に、個人ではDoggie Project(www.doggieproject.com)というビジネスを設立。犬のトレーニングや問題行動解決サービスを提供している。現在はニューヨークからLAに拠点を移し活躍中。ご意見・ご感想は:info@doggieproject.com

2013年10月5日土曜日

第61回「みとる」とは

以前、シェルターであぜんとする出来事がありました。若い夫婦が12歳の愛犬を連れて来て飼育放棄したいと。パピーのころから育ててきた愛犬の老いを見たくないからという理由でした。連れて来られた犬は12歳には見えないくらい元気で、うれしそうにみんなに愛想を振りまいています。この夫婦は、家にもう一匹10歳になる犬がいるので、数年後、同じように連れて来るつもりであるとも話していました。長年かわいがってきた愛犬たちの変ぼうを見る勇気がないと…。この夫婦は愛犬との別れを済ませ、寂しそうに去って行きましたが、関係者全員言葉が出ませんでした。飼育放棄でやって来る犬は日常茶飯事なのでそれに驚いたのではなく、パーのころから12年間大切に育てたペットの晩年をそういう形で終える夫婦の考え方に大きなショックを受けたのでした。

老犬介護と最期

確かに愛犬の老いていく姿を見るのは何ともつらいものがあります。また老犬介護は飼い主にとって心身疲労になりかねない大仕事です。2年前の私自身の体験を思い出します。愛犬ジュリエットが14歳になるころ、老化が急速に始まり、いろんなところに支障が出始めました。毎晩のように夜中に起こされ、おしっこのために外出。日中お漏らしすることがあるのでオムツを使用。食欲はあるのに自分で食べる力が無くなり、毎食30分かけて手で食べさせるなどです。そして体重は落ちる一方。三回りほど小さくなってしまいました。また、老犬性認知症のような症状から部屋の隅の角に顔を向けぼーっと立ちすくむこと数十分。突然何を思ったのか遠吠えをしたり…。その急速な変化にジュリエット自身も戸惑っている様子。そして飼い主の私は、10年以上運命共同体として一生懸命一緒に生きてきた相棒ジュリエットの老いと向かい合い、これからどうなるのかと毎日が不安で、感情の渦の中をさまよっていました。ジュリエットの体はどんどん衰退し、そして最期の決断。これ以上苦しい思いを続けさせられないと安楽死を決断しました。飼い主として一番つらい責任を果たすことに、胸が張り裂ける思いでした。しかし、人間も犬もすべての生き物に老いは訪れ、最期はやってきます。別れは本当に悲しいことですが、自宅のリビングで愛用のベッドに横たわり、いつものラジオ局から流れるクラシックを聞きながら私の手の中で静かに息を引き取ったジュリエットも私も本当に幸せです。もっと悲しいのは、飼い主が愛犬をみとれないことだと思うのです。

飼い主なき犬たちへのつぐない

飼育放棄で飼い主に捨てられたり、野良犬としてシェルターにやって来たりする犬の多くは、最後の日々をシェルターで過ごすことになります。人間の勝手でそんな悲惨な運命を背負うことになってしまった犬たち。私とチームメンバーで、そんな犬たちの最期を一緒に過ごす係を申し出ました。最後の数時間、布団の上で日なたぼっこをさせたり、ボール遊びをしたり、公園にのんびり散歩に連れ出したり、この時とばかりおやつを惜しみなくあげたり。何も知らない罪のない犬たちに、最後のひと時は温かく楽しい気分でいてもらおうというせめてもの気持ちです。本当に切なく悲しい任務ですが、人間の手で不幸な運命を歩む羽目になったい主なき犬たちへ、同じ人間としてせめてものつぐないになればと…。

次回は、「正しいリード歩行」についてお話します。お楽しみに!



悲しいながらも愛おしい愛犬ジュリエットのおむつ姿


てらぐちまほ:在米25年。かつては人間の専門家を目指し文化人類学を専攻。2001年からキャリアを変え、子供の頃からの夢であった「犬の専門家」に転身。地元のアニマル・シェルターでアダプション・カウンセリングやトレーニングに関わると共に、個人ではDoggie Project (www.doggieproject.com)というビジネスを設立。犬のトレーニングや問題行動解決サービスを提供している。愛犬ジュリエットが他界した今は、ニューヨークに移転して新入り犬ノアと活躍中。ご意見・ご感想は:info@doggieproject.com

『 犬を学ぼう!』講習会をマンハッタンにて開催。詳細は www.doggieproject.com/lecture