2014年11月5日水曜日

第74回「周りの人との関係」

「下の住人が闘犬のトレーニングをしていて怖くて住んでいられない」と苦情が出たとアパートの管理オフィスから連絡があったのは、愛犬ジュリエットとニュージャージーで暮らしていた頃の話。実は引っ越して来たばかりの上階の男性の誘いを断り続けた挙げ句に起こった一件でした。管理オフィスもその人の話を鵜呑みにせず、長期で住んでいる私の日頃の素行や、他の近所の人たちからの評判や情報で「嫌がらせ」と判断し、公平に処理してくれました。しかし、あいにくこの手の話は珍しいことではなく、犬の飼い主と周りの人との間で起こる問題をよく耳にします。無責任な飼い主のせいである場合もありますが、嫌がらせや濡れ衣の時もあります。世の中には犬嫌い・人嫌いで、文句を生きがいのように暮らしている人もいるのは事実。しかし、飼い主のちょっとした努力で防げる、また円滑にできることがあります。今回は、犬の飼い主と周りの人との関係についてお話します。

模範生になる

愛犬との大切な生活を守る術は大きく分けて二つ。一つは、飼い主が人一倍周りにフレンドリーになること。愛犬のフレンドリーさも大切ですが、飼い主のフレンドリー度は周りの人たちとの関係を円滑に保つためにとても重要。生活範囲が密接している近所の人とは言うまでもなく、散歩中に出会う人や配達の人などにもいい印象を与えていると、いざという時に得。もし愛犬が何か問題を起こしても、飼い主の日頃の印象で周りの反応は違うものです。そのためには、人とのコミュニケーションの達人になり、近所でも愛想が良いと評判の飼い主でいるように努めましょう。

もう一つの術は、愛犬の躾。言うまでもなく、愛犬が行儀の良い犬なら周りの人たちの印象は良く、問題がもち上がる確率も少なくなるでしょう。周りと上手く付き合っていくためにも、愛犬の躾は怠らない。

アメリカ社会やアメリカ人に押されがちな人も、決して圧倒されないで、相手が犬の知識に欠けていると思えば、堂々と教える側に立つ。「語学力が…」と引け目を感じず、犬を通して周りの人との会話を楽しみましょう。あまり日本人的になり過ぎないことです。

犬の飼い主の特典

犬を飼うと外に出ることが多いため、出会いが一杯で、道端で会話も弾みます。全く知らない人が、今は亡き愛犬の写真を見せ、話し込んできたり、毎日会う人とは犬の話から転じて井戸端会議。そんな会話から、色んな情報もゲットできたりします。また犬を通じてできる縁は、愛するものが同じという共通点からか、絆の強い関係が築ける気がします。

うちの場合、ピットブルという犬種から、周りの人との付き合いには、他の犬種の飼い主より数倍の努力を要します。この犬種にまつわる偏見から、愛犬ノアの性質を全く無視し、毛嫌いしてくる人たちに腹立たしさを覚えたり、また私は「ピットブルの飼い主」という看板を背負っているので周りの目に過敏になり、より模範犬に近づけなければというプレッシャーを感じています。幸い愛犬本人は自分の受けている差別もプレッシャーも全く感じていないのが救いですが、飼い主の私は、事あるごとに精神修業と、ピットブルの伝道活動です。しかし、その難点が「人の真の顔」を見せてくれる機会になり、偏見や見かけだけで物事を判断しない人たちと仲良くなれるという利点になっています。

周りの人との関わりに感謝し、円滑な関係を築いていけば、それがまた愛犬との絆も深め、より楽しい毎日につながるのではと思います。

次回は、「犬たちからのお願い」と題し、犬たちから大好きな人間に送るメッセージをお届けします。お楽しみに!


大好きな管理人さんとの写真撮影で大喜びの筆者の愛犬ノア

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てらぐちまほ:在米26年。かつては人間の専門家を目指し文化人類学を専攻。2001年からキャリアを変え、子供の頃からの夢であった「犬の専門家」に転身。地元のアニマル・シェルターでアダプション・カウンセリングやトレーニングに関わると共に、個人ではDoggie Project (www.doggieproject.com)というビジネスを設立。犬のトレーニングや問題行動解決サービスを提供している。今は、15年住み慣れた東海岸を離れ、愛犬ノアとLAに移転して活躍中。ご意見・ご感想は:info@doggieproject.com