2018年2月5日月曜日

第112回「犬の毛色」

犬の毛色で、人間に一番人気のない色は何色か知っていますか? 答えは、黒。黒犬大好き!な人たちは、きっとびっくりしているのでは? しかしこれは事実で、犬種に関わりなく、シェルターにいる中・大型の黒犬はほかの色の犬に比べてアダプトされる確率がとても低いのです。ゆえに多くのシェルターでは、黒犬のスペシャル・アダプションデー(アダプション費用激安など)のイベントを企画することで、この現象により被害を受けている犬たちのアダプション率向上に力を入れています。今回は、人間の好む犬の毛色、また犬同士ではお互いの毛色をどう捉えているのかなど「犬の毛色」についてのお話です。

ブラックドッグ・シンドローム

人が黒犬を避けるこの現象は、“ブラックドッグ・シンドローム”といわれています。理由としては、1)怖そうに見える、2)かわいくない、3)黒のイメージ自体が悪魔など悪いイメージにつながる、4)歳を取ると顔が真っ白になる、5)写真写りが悪い、6)表情が読み取りにくい、7)平凡過ぎる、などが挙げられるそうです。この状況に困惑した全米のシェルターやレスキュー団体は、それをブラックドッグ・シンドロームと名付けて問題視し、この悲しい概念を覆そうとさまざまな努力をしています。
では、黒色以外に犬の毛色や柄にはどんなものがあるのか? 一番多様なのは茶色系の毛色で、ブラウン、チョコレート、リバー、ファウン、ライトブラウン、レッド、アプリコット、オレンジなどに細かく分かれます。似た色ではゴールドとイエロー、タンなどと呼ばれる色種もあります。グレー系の毛色はブルー、シルバーなどと呼ばれ、白系はホワイト、クリームなどがあります。また毛色以外に毛の柄の呼び名もあります。たとえばダルメシアンのような柄だと、スポット。胸の部分が白毛の犬ならタキシード。まだら模様はブリンドル。ビーグルのように毛色が3色の柄はトライカラーと呼ばれます。
黒毛の犬が人間に一番人気のない色だとすれば、一番人気の毛色は何色なのかというと、これは犬種でそれぞれ異なります。たとえばプードルなら、現在はアプリコットが一番人気。ピットブル・テリアのダントツ人気は以前はレッドでしたが、その後“レア物”のブルーが一気に一番人気となり、「これは“いい商品”になる!」と、バックヤード・ブリーダーがせっせとブルーのピットブルの繁殖に励みました。伝統や血統を大切にするブリーダーは犬種規定の色を厳守しますが、ビジネス目的で犬をつくるブリーダーはせっせと交配させてはレア色をつくり、流行を生み出します。最近では人間のように、毛染めで“お洒落させる”飼い主もいます。こう見ても分かるように、結局、犬の毛色は人間のファッション・アイテムになってしまっているのでしょう。

犬たちにとっての毛色

それでは、当の犬たちは同種の毛色や柄のことをどう捉えているのでしょうか? 犬たちの間で毛色が大切な理由は一つ。識別のためです。遠距離にほかの犬を見つけた時、彼らは色、サイズ、形、ボディランゲージなどで相手を識別します。知っている犬か? 相手がどんな態度で何を求めているか? そういうインフォメーションをゲットする要素なのです。日頃から犬に学ぶことはたくさんありますが、毛色や柄(外見や種類)における人間と犬の捉え方の違いを知る時、つくづく人間の浅はかさを教えられます。
さて、いよいよ次号は最終回。最後に相応しい記事をお届けしたいと思いますので、お楽しみに!


この黒犬をみて何を感じるか…
Photo © Maho Teraguchi


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てらぐちまほ在米29年。かつては人間の専門家を目指し文化人類学を専攻。2001年からキャリアを変え、子供の頃からの夢であった「犬の専門家」に転身。地元のアニマル・シェルターでアダプション・カウンセリングやトレーニングに関わると共に、個人ではDoggie Project(www.doggieproject.com)というビジネスを設立。犬のトレーニングや問題行動解決サービスを提供している。現在はニューヨークからLAに拠点を移し活躍中。ご意見・ご感想は:info@doggieproject.com