2015年3月5日木曜日

第78回「愛犬と家探し」

ニューヨークで条件に合った賃貸物件を探すのは至難の業。これは、犬の飼い主であるなしに関わらず言えることですが、そこに犬、それも大型犬の飼い主という条件がつけば、ほとんど不可能に近い話です。その苦労体験談は、数年前にここでも記事にし、紹介しました。それがまた、ここ新天地LAでも同じように「このまま家が見つからず、路頭に迷うかも…」と言う大変な思いをするはめに…。今回は、去年の秋に再び体験した大型犬との家探しの苦労談をお話します。

所変われば?

ここカリフォルニアでの賃貸物件探しは、所変わればシステムも違い、至るところで「For Rent」のサインを目にし、直接管理オフィスに交渉に行けます。アプリケーションが承認されたら即入居OKという例も珍しくありません。今回、もし私に大型犬の飼い主という条件がついていなければ、きっと2、3日中に気に入った物件に巡り会え、即引越しという運びになっていたかも。しかし、私にその条件削除はありえません。大事な家族である大型犬ノアと安心して住める場所を見つけなければいけない…。予想はしていましたが、その過程はとてつもない「いばらの道」でした。

まず、ペットOK の物件はここでも希少。あった!と喜んでも、猫か小型犬のみというところばかり。一度は小型犬のみというところの管理人さんと討論にもなりました。サイズではなく行儀の良さではないか?という私に、言い分は分かるが、住人は犬好きばかりではなく、管理する方としては全体のバランスを考えてルールを決めていると。また、サイズ関係なしという朗報が入り、そこのペットルールを見せてもらうと、「どういうこと?」という程の犬種の制限付き。飼える犬種と言えば、結局小型犬かディズニー映画やCMに登場するリトリバー系のみという程の犬種規制ぶりでした。

そんな悪状況の中でも、「どんな犬種、サイズもOK」な物件にも出会うのですが、治安が心配な地域であったり、家自体が「住めないかも…」という程手入れされていない物件だったりというわけです。

奇跡の物件!

そんなある日、お願いしていたエージェントの方から「きっと気に入る物件があるので見に来ますか?」と。聞けばペットOKと。早速アポを取り内覧に出かけました。するとその物件は、奇跡! というようなものでした。見た瞬間に「ここに住みたい」と切望しましたが、果たして大型犬、ピットブルという犬種は大丈夫なのだろうか…。エージェントの方が管理オフィスに確認している数時間、期待と不安が駆け巡りました。なんと奇跡的にサイズも犬種も規制なしという返答があり、肩から力がどっと抜け、足が宙に浮いて踊る程の喜びに変わりました。

いつも思うのは、犬の飼い主がどうしてこうまで大変な思いをせねばならないのかということ。でも、それは同志の飼い主が起こしている問題でもあるので、「自分は完璧な飼い主」と思っていても、どんな時でも、どんなことにも責任ある飼い主という姿勢を貫き通さねばならないと痛感しました。また、それらの規制も統計に基づいているものであり、やはり周りの同志と共に向上し、素晴らしい犬の飼い主人口を広げていけば、もっと暮しやすい世界に変わっていくのではと思います。

さて、新天地で快適な新居が決まった今、ノアと私はと言うと、カリフォルニアに求めて戻ってきた「ゆとり」を毎日ひしひしと感じながら、楽しい生活を送っています。

次回は、「犬と性別」と題し、犬の性別による違い、また犬が人間の性別に対してする反応の違いなどについてお話しします。お楽しみに!



新しいアパートの敷地内には至るところにこのような犬用ゴミ箱が

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てらぐちまほ:在米26年。かつては人間の専門家を目指し文化人類学を専攻。2001年からキャリアを変え、子供の頃からの夢であった「犬の専門家」に転身。地元のアニマル・シェルターでアダプション・カウンセリングやトレーニングに関わると共に、個人ではDoggie Project(www.doggieproject.com)というビジネスを設立。犬のトレーニングや問題行動解決サービスを提供している。現在はニューヨークからLAに拠点を移し活躍中。ご意見・ご感想は:info@doggieproject.com