2015年4月5日日曜日

第79回「犬と性別」

2000年に一大決心で「犬を飼おう!」と思った時、なぜか私の頭の中には雄犬しか浮かびませんでした。日本で長く飼っていた犬が雄だったことや、私の性格には雄の方が合うだろうと勝手に決め込んでいたようです。ところが、運命の出逢いでわが家にやって来たジュリエットは雌犬。雄犬にこだわっていたくせに、いざ生活を始めてみると、雌犬の魅力にも引き込まれていったのでした。うちの愛犬は、雄↓雌↓雄の順。個々の性格の発見と比較はもちろん、性別の比較の勉強にもなります。今回は、科学的証拠には基づかない、私個人の経験からくる「犬と性別」についてお話します。

オンナは図太い

女性は底力があり、いい意味で図太くたくましいというのが、私の女性論の一つなのですが、犬についても同じことが言える気がします。図太く、たくましく、サバイバルスキルがあるのは雄犬より雌犬というのが私の見解です。シェルターにやって来た犬の中でも、若い雄犬(去勢してないなら尚更)が一番早くシェルターでの暮らしで「だめに」なってしまいます。ストレスが溜まる度合いが遥かに速く、それによって生じる、健康面や精神面の問題でどんどん崩れていくのです。もちろん、これも犬種によるので、1日のほとんどを監禁された状態で過ごすことにどうしても適応できない犬種は、性別関係なくすぐに崩れます。そんな中でも、中年の雌犬は、比較的シェルター生活への適応性に優れていて長期で頑張れる犬が多いです。

これはうちの愛犬にも言えますが、雄犬の方が色んなことに繊細で敏感。例えば、ちょっと様子が変わったり、食べものを変えると、ノアは躊躇して食べなかったり、用便にしても、雌犬のジュリエットは必要な時は即するというのに対し、ノアの場合は、あれこれ場所選びが大変で、こちらをイライラさせる時もあります。しかし、それはやはり雄犬のDNAにある「縄張り争い」というものからくるもので、世間(犬社会)への大切な自己表現に関しては、どうしても細かく神経質になるのでしょう。それに対し、雌はあくまでも周りの雄犬たちに「私Availableですけど」と知らせるのみなのかもしれません。

「いけてる」女?

シェルター勤務で体験した「面白い現象」に、生理時の人間の女性に対する雄犬の反応というのがあります。とにかく臭いに敏感な犬なので、いつもより過剰な反応を示すのですが、ただそれだけの犬と、その上に、こちらの弱みを握ったかのように優位に立とうと挑戦的になってくる犬もいます。そういうこともあり、私も含め、女性スタッフの多くは、生理の時にはいつもより気を張っています。また、雄犬は「いけてる」女性(フェロモンを発生させている)と、そうでない女性への興味の示し方の違いも顕著です。ノアは、うちの母のことは大好きですが、「女」としては興味なし! というのをはっきり示していました。近所のおばあさんへの反応も同じ。なので、私の周りではノアにお尻をくんくん嗅がれ、興味津々でべたべたされているのは「いけてる」証拠だと笑い話になっています。

世間には、一般的な性別の特質をあまり示さない犬もいます。また、育て方によっては「中性的な行動」をする犬もいます。たとえ雄と雌の間で基本的な違いがあるにしても、結局はそれぞれの個体の特質ではないでしょうか。犬を選ぶ際、雄か雌かもポイントの一つかもしれませんが、やはり一番大切なのは、その特定の犬の気質と条件が自分のライフスタイルとどれほどマッチしているかということだと思います。

次回は、「犬を救うということ」と題し、長年動物福祉・愛護活動に携わってきた私が思う、犬を救うこととは何か、について徹底的に語ります。お楽しみに!


「女の子だから」とあれこれ飾りつけられ、まんざらでもない愛犬ジュリエット

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てらぐちまほ:在米26年。かつては人間の専門家を目指し文化人類学を専攻。2001年からキャリアを変え、子供の頃からの夢であった「犬の専門家」に転身。地元のアニマル・シェルターでアダプション・カウンセリングやトレーニングに関わると共に、個人ではDoggie Project(www.doggieproject.com)というビジネスを設立。犬のトレーニングや問題行動解決サービスを提供している。現在はニューヨークからLAに拠点を移し活躍中。ご意見・ご感想は:info@doggieproject.com